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2章: 流れ着いた村にて
下流の村へ
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「だからって、このままでは争いの火種を残しかねません!」
「わかっている。いざとなったらやるさ」
「そんな・・・・・・」
「あ、えっと、皆さん、いいですかね?」
魔導士の少女が呼びかけた。どうやら自分が忘れられているように感じていたらしい。
「何だよ? 便所か?」
「違う! 違う! もう畑泥棒はしないからさ、この縄を解いてくれない? もちろんもう、向こうの村には戻らないからさ」
村人達は疑いの視線を向けたままだ。
「信用できるかよ」
「じゃあ、一ついいことを教えてあげるよ。アタシが戻らなかったら、あっちは総力を挙げてこの村を襲いにかかるよ。向こうはそこまで逼迫しているからね。アタシはそんな争いに巻き込まれるのは御免なんだ」
女魔導士が嘘をついているようには見えなかった。
「あなた、そうやって仲間を売って・・・・・・」
「仕方ないだろ! そうやって昔から生きてきたんだよ!」
「・・・・・・そうですか」
「それで、どうする? 争いになったら村の柵を強化しないと」
「見張りの数も増やす必要があるな」
「武器になりそうなものはどれくらい残っている?」
次第に村人達から物騒な言葉が囁かれるようになっていた。女魔導士の気持ちもわからないでもない。
セシルは畑泥棒を閉じ込めた納屋を出て、そのまま村の出口へと向かった。
「おい、アンタどこへ行くんだよ!」
不審に思ったヤルスが見とがめる。セシルは川下に沿って歩こうとしていた。
「いえ、このままでは村同士で争いが勃発するようなので、向こうの村に話を付けようかと」
「正気か?? アンタ!」
ヤルスは両手を広げてセシルの行く手を阻んだ。
「行ったところで、今度はアンタが締上げられるぞ? あの魔導士みたいに」
「大丈夫です。私はこの村の人間ではありません」
「第三者だったらなおさらだ! さっきの魔導士の女の話を聞いただろ? 部外者ではどうにもならない問題だと思わないか?」
「いえ、逆に話を聞いたことで双方の利害を把握することができました。それで解決策があれば、この諍いは止まるはずです」
「解決策って? 水がないのにどうやって争いを収めるんだよ?」
「それを見出すために、下流の村という場所の様子を見に行くんです」
「ああ、もう心配だから俺もついて行くよ。ただし下流の村の外までだ」
「ええ、大丈夫ですよ。ところで、下流の村はどこにあるのですか?」
「今、それを聞くのかよ?」
ヤルスは溜息をついた。仕方なくセシルを村の入り口まで送り届けることを申し出てくれた。
「わかっている。いざとなったらやるさ」
「そんな・・・・・・」
「あ、えっと、皆さん、いいですかね?」
魔導士の少女が呼びかけた。どうやら自分が忘れられているように感じていたらしい。
「何だよ? 便所か?」
「違う! 違う! もう畑泥棒はしないからさ、この縄を解いてくれない? もちろんもう、向こうの村には戻らないからさ」
村人達は疑いの視線を向けたままだ。
「信用できるかよ」
「じゃあ、一ついいことを教えてあげるよ。アタシが戻らなかったら、あっちは総力を挙げてこの村を襲いにかかるよ。向こうはそこまで逼迫しているからね。アタシはそんな争いに巻き込まれるのは御免なんだ」
女魔導士が嘘をついているようには見えなかった。
「あなた、そうやって仲間を売って・・・・・・」
「仕方ないだろ! そうやって昔から生きてきたんだよ!」
「・・・・・・そうですか」
「それで、どうする? 争いになったら村の柵を強化しないと」
「見張りの数も増やす必要があるな」
「武器になりそうなものはどれくらい残っている?」
次第に村人達から物騒な言葉が囁かれるようになっていた。女魔導士の気持ちもわからないでもない。
セシルは畑泥棒を閉じ込めた納屋を出て、そのまま村の出口へと向かった。
「おい、アンタどこへ行くんだよ!」
不審に思ったヤルスが見とがめる。セシルは川下に沿って歩こうとしていた。
「いえ、このままでは村同士で争いが勃発するようなので、向こうの村に話を付けようかと」
「正気か?? アンタ!」
ヤルスは両手を広げてセシルの行く手を阻んだ。
「行ったところで、今度はアンタが締上げられるぞ? あの魔導士みたいに」
「大丈夫です。私はこの村の人間ではありません」
「第三者だったらなおさらだ! さっきの魔導士の女の話を聞いただろ? 部外者ではどうにもならない問題だと思わないか?」
「いえ、逆に話を聞いたことで双方の利害を把握することができました。それで解決策があれば、この諍いは止まるはずです」
「解決策って? 水がないのにどうやって争いを収めるんだよ?」
「それを見出すために、下流の村という場所の様子を見に行くんです」
「ああ、もう心配だから俺もついて行くよ。ただし下流の村の外までだ」
「ええ、大丈夫ですよ。ところで、下流の村はどこにあるのですか?」
「今、それを聞くのかよ?」
ヤルスは溜息をついた。仕方なくセシルを村の入り口まで送り届けることを申し出てくれた。
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