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2章: 流れ着いた村にて

畑泥棒

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「え?」
「あの山から川を囲んで柵を作っても、見張りを夜通し立たせても、なぜか泥棒は捕まらない。それなのに、被害は毎日のように出ているんだ。これじゃまるで、連中のために畑仕事をやっているようなものだから、この村もやる気をなくしちまってわけさ」
「そうですか・・・・・・あの、泥棒にあった畑の様子を見させてもらってもいいですか?」
「あ? ああ、この前はあのトウモロコシ畑で何本か取られたって」
 ヤルスの案内により、セシルは茂みで人目につかない所に生えていたトウモロコシを見つけた。なるほど、ここで育っていたはずの実が刃物か何かで綺麗に切り取られている。
「夜に見張りは?」
「もちろん、交代で付けたさ。でも誰も見つけられないんだよ。それなのに、まるで自分の畑みたいに落ち着いて刀を入れてやがる。一体どうすればそんなことが可能なんだろうな? ところで君は、何でさっきから地面の方を調べているんだ?」
 トウモロコシの根元で屈みこんでいるセシルを、ヤルスが不思議そうに見下ろしていた。
「温かい。土の精の息吹をこんな近くで感じ取れるなんて」
「ん? 何か言ったか?」
「いえ。それより、お陰様で泥棒の手口がわかりそうな気が・・・・・・あ」
 空がいつの間にか暗くなっていた。辺りからぽつぽつと雨が降ってきて、その日の農作業はそのまま終了となった。農夫達はまだ昼間というのに各々の家に引き返していく。
「本当にお姉ちゃんの言う通りだ!」
「言う通りって、何が?」
 図々しくも一緒の屋根で雨宿りしているヤルスが聞いた。
「さっき言っていたんだよね。今日は雨が降るって」
「この雨を言い当てたってのか? あんなに上天気だったのに?」
「わー! その話は!」
 エミリの口をセシルが慌てて塞いだ。
「何でもありません。たまたまツバメが低く飛んでいるのを見たから、そう思っただけで」
「へえ、ツバメが低く飛ぶと雨が降るのか? どこでそれを聞いたんだ?」
 聞いたのではなく、神殿の書物で得た知識だ。元はそれも誰かが見出した事実だが、この村にはそれが伝わっていないらしい。
「それは・・・・・・どこでしょうね?」
「変な奴だな、アンタ」
「それより、私達で畑泥棒探しをしませんか! 私、お世話になっているお礼がしたいので!」
「え、でも危ないよ?」
「そもそも、誰も姿を見たことがないんだ。どうやって捕まえる?」
「いえ、私に思い当たる節が」
 セシルは不自然な展開と思いつつも強引に話題を反らすことに何とか成功した。
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