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7章:黒幕の影
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ラスタ達はハウスリング郊外の屋敷に移り住むことになった。そこがヘンリマンを待ち構えての決戦の場だった。もちろん、即応部隊のアデリル、リュシア、キュエルも待機している。アデリルの部下を通して、ラスタがその場所にいるという噂はそれとなく流してある。あとはヘンリマンが罠に掛かるのを待つだけだった。
「来ないね」
剣を肩にかけ、窓際に座り込んでいたリュシアが呟いた。
「俺としてはあまり来て欲しくないけど」
ラスタもまた、万が一のために武装はしている。必要があれば、遠距離ででもリュシア達を支援するつもりだった。
「でも、この戦いが終わればやっとダクライアに帰れるね」
「どうかな。この魔法を背負ってしまった以上、俺は今まで通りの生活は送れない。危険すぎる」
リュシアはラスタの方を向いた。
「そんな、じゃあ私は何のために?」
「・・・・・・ごめん。俺が考えも無しに動いたせいで」
「そんなこと言わないでよ!」
リュシアがラスタの胸に飛び込んできた。ラスタの服を握りしめて訴える。
「ラスタは、私や皆の命を救ってくれたんだよ! 危険を冒してまで、アデリルさんを助けるために帝国軍と戦ったんだよ! そんなラスタがどうして一人で苦しまなければならないの? 私、ラスタを放ってなんかおけないよ」
「リュシア・・・・・・」
「女の子を泣かすのは感心できないぞ。ラスタ君」
アデリルが見計らったように部屋に入ってきた。どうやら会話の始終を聞いていたらしい。
「すいません。でも俺は、この魔法を一生を掛けて守らないと」
「隠遁生活よりも、君にはまだやることが残っているはずだ。私との約束もまだ果たしていない。それに、君の人生はまだやり直せるぞ」
「どういうことですか?」
「クラマハート家を見くびってもらっては困る。君一人の経歴くらい、書き換えることも出来るのさ。この戦いが終われば、君はチート魔法の呪縛とは無関係の他人にだってなれる」
「それは、ありがとうございます」
「これ位の礼は、させてもらって当然だ」
「アデリルのためにもね」
アデリルの背後からキュエルが顔を覗かせた。
「キュエル様!? いつの間に!」
「そうか、十八歳のアデリルにもようやくその時が来たかぁ」
「その時?」
「な、何でもないぞ! ラスタ君!」
「隠さなくてもいいじゃない。アデリルは前に言ったよね。お城でドレスを着て、王子様と踊りたいって」
それを暴露された途端、アデリルは一気に紅潮した。
「アデリルさん、本当はやりたいことを見つけていたんですか?」
「いや、違うのだ! ラスタ君、それはな、物心つかない私の戯言であり、今の私の願望では・・・・・・」
「物心? 確かボクがそれを聞いたのは、確か十二歳の時だったと思ったけど」
「かはぁ・・・・・・」
アデリルは完全に思考停止した。
「俺でよければ、今度ご一緒させて頂いてもいいですか?」
「・・・・・・も、もちろんだ」
「一度きりなら、まあいいか」
リュシアは無理に納得しようとしていた。
「いずれにしても、この戦いが終われば皆やりたいことができるんだな。本当に、自分のやりたいことが」
ラスタ達の前に初めて、一条の光が射しこんだ。心の中だけでなく、実際の彼らの視界の中においても。
「今の光は!」
アデリルが窓の外を覗き込んだ。正門の辺りで一瞬、青白い光が灯った気がしたのだ。それは付近を警備する他の兵士達にも見えたらしく、正門に続々と人が集まり始めている。
「来たようだね」
キュエルが身の丈に合わせた杖を携えながら言った。
「来ないね」
剣を肩にかけ、窓際に座り込んでいたリュシアが呟いた。
「俺としてはあまり来て欲しくないけど」
ラスタもまた、万が一のために武装はしている。必要があれば、遠距離ででもリュシア達を支援するつもりだった。
「でも、この戦いが終わればやっとダクライアに帰れるね」
「どうかな。この魔法を背負ってしまった以上、俺は今まで通りの生活は送れない。危険すぎる」
リュシアはラスタの方を向いた。
「そんな、じゃあ私は何のために?」
「・・・・・・ごめん。俺が考えも無しに動いたせいで」
「そんなこと言わないでよ!」
リュシアがラスタの胸に飛び込んできた。ラスタの服を握りしめて訴える。
「ラスタは、私や皆の命を救ってくれたんだよ! 危険を冒してまで、アデリルさんを助けるために帝国軍と戦ったんだよ! そんなラスタがどうして一人で苦しまなければならないの? 私、ラスタを放ってなんかおけないよ」
「リュシア・・・・・・」
「女の子を泣かすのは感心できないぞ。ラスタ君」
アデリルが見計らったように部屋に入ってきた。どうやら会話の始終を聞いていたらしい。
「すいません。でも俺は、この魔法を一生を掛けて守らないと」
「隠遁生活よりも、君にはまだやることが残っているはずだ。私との約束もまだ果たしていない。それに、君の人生はまだやり直せるぞ」
「どういうことですか?」
「クラマハート家を見くびってもらっては困る。君一人の経歴くらい、書き換えることも出来るのさ。この戦いが終われば、君はチート魔法の呪縛とは無関係の他人にだってなれる」
「それは、ありがとうございます」
「これ位の礼は、させてもらって当然だ」
「アデリルのためにもね」
アデリルの背後からキュエルが顔を覗かせた。
「キュエル様!? いつの間に!」
「そうか、十八歳のアデリルにもようやくその時が来たかぁ」
「その時?」
「な、何でもないぞ! ラスタ君!」
「隠さなくてもいいじゃない。アデリルは前に言ったよね。お城でドレスを着て、王子様と踊りたいって」
それを暴露された途端、アデリルは一気に紅潮した。
「アデリルさん、本当はやりたいことを見つけていたんですか?」
「いや、違うのだ! ラスタ君、それはな、物心つかない私の戯言であり、今の私の願望では・・・・・・」
「物心? 確かボクがそれを聞いたのは、確か十二歳の時だったと思ったけど」
「かはぁ・・・・・・」
アデリルは完全に思考停止した。
「俺でよければ、今度ご一緒させて頂いてもいいですか?」
「・・・・・・も、もちろんだ」
「一度きりなら、まあいいか」
リュシアは無理に納得しようとしていた。
「いずれにしても、この戦いが終われば皆やりたいことができるんだな。本当に、自分のやりたいことが」
ラスタ達の前に初めて、一条の光が射しこんだ。心の中だけでなく、実際の彼らの視界の中においても。
「今の光は!」
アデリルが窓の外を覗き込んだ。正門の辺りで一瞬、青白い光が灯った気がしたのだ。それは付近を警備する他の兵士達にも見えたらしく、正門に続々と人が集まり始めている。
「来たようだね」
キュエルが身の丈に合わせた杖を携えながら言った。
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