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7章:黒幕の影
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話が一段落したところでラスタは深く腰を下ろした。
「ヘンリマンは、あの魔法を自分の目的のために使うつもりでしょうか」
「いわずもがな。同郷の人間さえ、ためらいなく手に掛ける人間だ。君の専属魔法を手に入れれば、彼はこの大陸どころか世界の覇者を目指すだろう」
「祖父は、何てことを・・・・・・」
「君のあの魔法は、お祖父さんの受け売りかい?」
「ええ、でももういませんけど」
「そうか。確かにあの魔法は、本来ならばこの世界で有り得ない。まさに魔法中の魔法だ」
「だけど俺にはわかりません。俺は騎士ですが、魔力が特に高いわけではありません。しかも、はじめてあの魔法を使った時には俺の魔力は限界に近かった。どうして、このチート魔法には並外れた威力が発揮できるのですか?」
「それはね、ボクも考えもつかないことなんだ。もしかすると、一つだけ思い当たる節がある。あの魔法は恐らく、魔力の連鎖反応を利用しているんじゃないかと思う」
「魔力の連鎖反応って?」
「つまり君の魔力は周囲の魔力を同化させて、それが更に周囲の魔力を同化させる。そして同化させた魔力を一気に爆発エネルギーに変換すればいいんだ。この連鎖反応が無限に続けば、帝国の一個師団を壊滅させるだけの威力を発揮できる。それがチート魔法の仕組みだ。でも一つ間違えれば、世界そのものを破壊しかねない魔法だ。理論的には魔力の連鎖反応がこの世界全ての魔力を巻き込む可能性だってあるからね」
「そんな危険な魔法を、どうして祖父は開発したんでしょう」
「恐らく、君のお祖父さんは迷っていたんじゃないかな?」
「迷った?」
「強大な力はこの上ない抑止力だ。国中の争いを止めさせるだけの力がある。だけど同時に、その扱いを間違えれば世界をも滅ぼす危険性を孕んでいる。この魔法を世に出すべきかどうかはボクにも判断できない。君のお祖父さんが昔住んでいた世界でも、その答えを見つけられなかったんじゃないかな」
「確かに同じ問題を提示されたら、誰一人として決断に自信を持てる者はいないだろう。もしこの魔法を使って戦争を止めることができるならば、数えきれないほどの命を救うことができる。まさに神の審判だ。だがその権利を誰が行使するのかが問題だ」
アデリルは深く考え込んだ。ラスタは立ち上がる。
「だけど一つだけ、はっきりしていることはあります。何があっても、この魔法をヘンリマンにだけは渡してはいけないということです」
「そうだね。少なくとも、それだけは間違っていないとボクは思うよ。でもね、ラスタ君。君を戦わせるわけにはいかない。理由はわかるね?」
「俺がヘンリマンと会えば、専属魔法を奪われてしまうからですか?」
「だから君を狙って現れたヘンリマンには、アデリルに対処してもらう」
「しかし、アデリルさんだけでは」
「残念だけど、アデリルとボク、それにベルニア王以外、この国に強力な《所有者》はいないんだよ。もちろんボクも参加する。ヘンリマンという人には、言いたいことがあってね」
「何です?」
「それは、まあ後の話にしよう」
「ラスタ君、私のことは心配しないで欲しい。たとえ私の専属魔法が奪われたとしても、私には剣技がある」
「それと、私も戦います」
リュシアが立ち上がった。
「リュシア、お前まで」
「ラスタだけに重荷は背負わせられないよ。それに、ヘンリマンを捕まえれば事件の真相が全部明るみに出るんでしょ。だったらやってやる。それでラスタがこの戦争の英雄だったことを、みんなに知らしめるんだ」
「戦力は少しでも多い方がいい。リュシアさん、頼まれてくれるかな」
リュシアは重々しく頷いた。意気軒高な彼らの中で、戦いに参加できないラスタはもどかしさを味わうことになった。
「ヘンリマンは、あの魔法を自分の目的のために使うつもりでしょうか」
「いわずもがな。同郷の人間さえ、ためらいなく手に掛ける人間だ。君の専属魔法を手に入れれば、彼はこの大陸どころか世界の覇者を目指すだろう」
「祖父は、何てことを・・・・・・」
「君のあの魔法は、お祖父さんの受け売りかい?」
「ええ、でももういませんけど」
「そうか。確かにあの魔法は、本来ならばこの世界で有り得ない。まさに魔法中の魔法だ」
「だけど俺にはわかりません。俺は騎士ですが、魔力が特に高いわけではありません。しかも、はじめてあの魔法を使った時には俺の魔力は限界に近かった。どうして、このチート魔法には並外れた威力が発揮できるのですか?」
「それはね、ボクも考えもつかないことなんだ。もしかすると、一つだけ思い当たる節がある。あの魔法は恐らく、魔力の連鎖反応を利用しているんじゃないかと思う」
「魔力の連鎖反応って?」
「つまり君の魔力は周囲の魔力を同化させて、それが更に周囲の魔力を同化させる。そして同化させた魔力を一気に爆発エネルギーに変換すればいいんだ。この連鎖反応が無限に続けば、帝国の一個師団を壊滅させるだけの威力を発揮できる。それがチート魔法の仕組みだ。でも一つ間違えれば、世界そのものを破壊しかねない魔法だ。理論的には魔力の連鎖反応がこの世界全ての魔力を巻き込む可能性だってあるからね」
「そんな危険な魔法を、どうして祖父は開発したんでしょう」
「恐らく、君のお祖父さんは迷っていたんじゃないかな?」
「迷った?」
「強大な力はこの上ない抑止力だ。国中の争いを止めさせるだけの力がある。だけど同時に、その扱いを間違えれば世界をも滅ぼす危険性を孕んでいる。この魔法を世に出すべきかどうかはボクにも判断できない。君のお祖父さんが昔住んでいた世界でも、その答えを見つけられなかったんじゃないかな」
「確かに同じ問題を提示されたら、誰一人として決断に自信を持てる者はいないだろう。もしこの魔法を使って戦争を止めることができるならば、数えきれないほどの命を救うことができる。まさに神の審判だ。だがその権利を誰が行使するのかが問題だ」
アデリルは深く考え込んだ。ラスタは立ち上がる。
「だけど一つだけ、はっきりしていることはあります。何があっても、この魔法をヘンリマンにだけは渡してはいけないということです」
「そうだね。少なくとも、それだけは間違っていないとボクは思うよ。でもね、ラスタ君。君を戦わせるわけにはいかない。理由はわかるね?」
「俺がヘンリマンと会えば、専属魔法を奪われてしまうからですか?」
「だから君を狙って現れたヘンリマンには、アデリルに対処してもらう」
「しかし、アデリルさんだけでは」
「残念だけど、アデリルとボク、それにベルニア王以外、この国に強力な《所有者》はいないんだよ。もちろんボクも参加する。ヘンリマンという人には、言いたいことがあってね」
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「戦力は少しでも多い方がいい。リュシアさん、頼まれてくれるかな」
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