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7章:黒幕の影
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「どうやって?」
「恐らく、【複写魔法(レプリケーション)】」
「複写・・・・・・魔法?」
「そう、相手の五感からの情報を、あたかも自分が体験したかのように記憶できる専属魔法のことだ。言うなれば、記憶の複製だね。例えばボクがその専属魔法を君に使えば、君が生まれてから見てきた全ての物を、ボクが見ることができる」
「何か、地味な魔法・・・・・・」
リュシアが思わずつぶやいた。
「そうだね。確かに世間で知られている専属魔法に比べれば、大したものじゃない。でも【複写魔法】は使い方によって、とんでもない力を発揮するんだ。考えても見て欲しい。もしもこの魔法を、《所有者》に対して使ったとすれば」
「《所有者》の記憶を自分のものにできる。それはつまり――魔導書に書かれている専属魔法も?」
「その通り。《所有者》が読んだ魔導書の記憶を、【複写魔法】を使って取り出すことが可能だ。つまり【複写魔法】を持つ者は、自分が出会った《所有者》の魔法を複製することが可能だ。同じことが今回の事件に対しても言える。ベルニア王の【水晶化魔法】は、【複写魔法】に複製されたのさ」
「誰がそんなことを」
「奇しくもハンス=リクトル暗殺の数日前、ベルニア王に謁見した人物がいる。しかもそれは、エクレナダ帝国の人間だ」
「誰です?」
「帝国枢機卿の一人、ヘンリマン=アッガサート。民衆に対して過激な政策を提言する政治家の一人だ。帝国も一枚岩でなくてね、特にヘンリマンとハンスは政敵同士だった」
「殺す理由は十分にある、ということですか?」
「しかも二人が対立する原因は帝国の対外政策にあった。外交努力で他国と穏便に付き合いたいハンスと、武力による侵略を持論とするヘンリマンは、まさに水と油の関係だったろうね。そこでヘンリマンが【水晶化魔法】を使ってハンスを殺害したとしたらどうだろう。ヘンリマンにとっては侵略の障碍が排除され、ベルニアに宣戦布告する口実が得られることになる。まさに一石二鳥さ」
「それが、この戦争のきっかけだったんですか?」
「話はまだ終わりじゃない」
キュエルは腕を組みながら言った。今の彼女は机の上のティーセットには一切の興味を示していなかった。
「ヘンリマンの筋書き通りに事が進めば、今頃ベルニアは帝国に併合されていただろう。でもそれは叶わなかった。君の専属魔法によって帝国軍が壊滅したからだ。これはヘンリマンにとって、全くの不確定因子であると同時に、奇貨でもあるんだ」
「奇貨、ですか?」
「ヘンリマンが【複写魔法】の《所有者》だとすれば、必ず君に接触してくるはずだ。あれだけの威力を持つ専属魔法を、手中に収めるためにね。ボクはそれを防ぐために、ダクライアに対して君の安全を保障するように嘆願した。ところがダクライアからの返答によると、君は消息不明という話だったんだ。だから慌ててボクは、アデリルに内情を探らせたわけさ」
「そして私はダクライアに囚われている君を見つけた、そう言うことだ」
「そう、だったんですね」
「恐らく、【複写魔法(レプリケーション)】」
「複写・・・・・・魔法?」
「そう、相手の五感からの情報を、あたかも自分が体験したかのように記憶できる専属魔法のことだ。言うなれば、記憶の複製だね。例えばボクがその専属魔法を君に使えば、君が生まれてから見てきた全ての物を、ボクが見ることができる」
「何か、地味な魔法・・・・・・」
リュシアが思わずつぶやいた。
「そうだね。確かに世間で知られている専属魔法に比べれば、大したものじゃない。でも【複写魔法】は使い方によって、とんでもない力を発揮するんだ。考えても見て欲しい。もしもこの魔法を、《所有者》に対して使ったとすれば」
「《所有者》の記憶を自分のものにできる。それはつまり――魔導書に書かれている専属魔法も?」
「その通り。《所有者》が読んだ魔導書の記憶を、【複写魔法】を使って取り出すことが可能だ。つまり【複写魔法】を持つ者は、自分が出会った《所有者》の魔法を複製することが可能だ。同じことが今回の事件に対しても言える。ベルニア王の【水晶化魔法】は、【複写魔法】に複製されたのさ」
「誰がそんなことを」
「奇しくもハンス=リクトル暗殺の数日前、ベルニア王に謁見した人物がいる。しかもそれは、エクレナダ帝国の人間だ」
「誰です?」
「帝国枢機卿の一人、ヘンリマン=アッガサート。民衆に対して過激な政策を提言する政治家の一人だ。帝国も一枚岩でなくてね、特にヘンリマンとハンスは政敵同士だった」
「殺す理由は十分にある、ということですか?」
「しかも二人が対立する原因は帝国の対外政策にあった。外交努力で他国と穏便に付き合いたいハンスと、武力による侵略を持論とするヘンリマンは、まさに水と油の関係だったろうね。そこでヘンリマンが【水晶化魔法】を使ってハンスを殺害したとしたらどうだろう。ヘンリマンにとっては侵略の障碍が排除され、ベルニアに宣戦布告する口実が得られることになる。まさに一石二鳥さ」
「それが、この戦争のきっかけだったんですか?」
「話はまだ終わりじゃない」
キュエルは腕を組みながら言った。今の彼女は机の上のティーセットには一切の興味を示していなかった。
「ヘンリマンの筋書き通りに事が進めば、今頃ベルニアは帝国に併合されていただろう。でもそれは叶わなかった。君の専属魔法によって帝国軍が壊滅したからだ。これはヘンリマンにとって、全くの不確定因子であると同時に、奇貨でもあるんだ」
「奇貨、ですか?」
「ヘンリマンが【複写魔法】の《所有者》だとすれば、必ず君に接触してくるはずだ。あれだけの威力を持つ専属魔法を、手中に収めるためにね。ボクはそれを防ぐために、ダクライアに対して君の安全を保障するように嘆願した。ところがダクライアからの返答によると、君は消息不明という話だったんだ。だから慌ててボクは、アデリルに内情を探らせたわけさ」
「そして私はダクライアに囚われている君を見つけた、そう言うことだ」
「そう、だったんですね」
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