チート魔法の魔導書

フルーツパフェ

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6章:凱旋の先に

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 リュシアは向かってくる屈強な兵卒達に一人で立ち向かった。
「ダクライアの学生? どういうつもりだ?」
「答える必要なんかない」
「小娘が! こんな事をしてタダで済むと思うなよ! このガキを寝かしつけてやれ」
 連中の中から太鼓腹の男が一人、前に出る。身に着ける鎧は至る所に棘の装飾があり、手には金棒を携えていた。
「そんなもので女の子を殴るつもり?」
「そうだな」
 男は野太い声で答えると金棒を手放した。手放した手を拳に代えて、リュシアを威嚇する。
「しゃああ!!」
 ずんぐりした体格の男は案外、敏捷な動きでリュシアに殴りかかる。常人が見れば腰が引けるほどの威容――対するリュシアは泰然と待ち構えていた。
「遅いんだよ!」
 高々と上がったリュシアの足が男の顎を蹴り上げる。白目を剥いた男は空を見上げるような仕草のまま、やおら仰向けに倒れた。
「コイツ!」
 リュシアの虚を衝こうと、別の兵卒が背後から襲い掛かる。彼の牙が迫るより先に、リュシアの炯眼が後ろを捉える。
「ぐふえっ!!」
 リュシアは身を屈めると同時に、肘で男の鳩尾を打つ。二人の男を足元に横たわらせ、残る連中を見回した。
「アンタらなんか魔法どころか剣だって必要なしに倒せるんだ! 痛い目を見たくなければ今すぐ道を開けろ! どうせ私を止められないんだからさ!」
「まあ、随分と威勢のいい子猫ですね」
 おののく兵卒達の向こうで、知った声がした。やがてリュシアを囲む人だかりが割れてその向こうから一人の影が近づいてくる。
「まさか」
「へえ、アンタが来たんだ。イリスさん」
 イリスはまるで、知人にでも会ったかのような穏やかな表情で現れた。それでも彼女の手には既に抜き身の剣が握られていた。
「私を止めに来たの?」
「あなたがこんな事をするとは思いませんでしたよ、リュシアさん。二等騎士の中ではラスタの次に優秀なあなたが」
「私の気持ちの何を知っているというの?」
「そうですね。でも、あなたの感情などこの際どうでもいいのですよ。ダクライアの命運のためならば」
「やっぱり、アンタもラスタの専属魔法を狙っているんだね?」
「私は別に、重大な軍規違反を犯そうとする者を放っておけないだけですよ。ところでリュシアさん、軍規の第八十三条をご存知ですか?」
「軍規八十三条、査問会議中に逃亡した被告、およびそれを助ける者は死罪に処す」
 リュシアは一字一句正確に、淡々と軍規を口述する。
「イリスさん!」
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