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5章:禁断の専属魔法
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「いつまで逃げ切れるかな」
【火焔祓剣】で大蛇を跳ね除けるアデリルに向かって、ゲクリニカは揶揄するように呼び掛けた。
専属魔法の力が弱まってきたのは、魔力が限界に達し始めた証拠だ。
そして絶え間なく襲い掛かる牙から逃れる度に、体力も消耗していく。
そうしたアデリルの内情をゲクリニカはよく察知していた。
「私を、見くびるな!」
防戦一方のアデリルは焦燥に駆られたのか、遂に攻勢を仕掛けた。
ゲクリニカに向かって一直線に突撃し、あと何発発動できるかもわからない専属魔法を使おうというのである。
そんな捨て身のアデリルを、ゲクリニカは待ちわびていたかのように迎え撃った。
「小娘が!」
老人ながら剣を軽々と振るう力量の高さに、アデリルの剣が空を舞った。
丸腰となったアデリルの首を、ゲクリニカは豪快に鷲掴みする。
「あぐっ!」
地を離れた足がゲクリニカを突き放そうともがく。
それでも紫色の甲冑に守られたゲクリニカの身体は怯まない。
それどころか、アデリルを締め付ける握力が徐々に強められる。
このままでは窒息するより先に首をへし折られてしまうのではないかというほどの剛力だ。
「どうだ小娘、泣いて魔導書を差し出すのであれば、命だけは助けてやってもいいぞ」
「誰が貴様なんかに・・・・・・」
「ふん、貴様のような弱者に魔導書を持つ資格などないわ。とっとと消えるがよい」
既に一騎打ちの結果は半ば透けて見えていた。
ゲクリニカは片手に握る剣を使えば、それを決定的なものに変えることが出来た。
それでも彼は、半死半生のアデリルを軽蔑するかのように、苦痛を与え続けることを選んだ。
彼のこの行動には、自分の意志を邪魔する者は誰もいないという驕りがあったからに違いない。
「ラスタ!」
リュシアが叫んだ時、ラスタの片足は城壁を乗り越えようとしていた。
「アデリルさんを助ける」
「無理だって! あんな化け物!」
負けず嫌いのリュシアでさえ、あっさりと諦めてしまうほどの実力差だ。
ラスタだってそれはわかっている。
ただ、誰にだって合理性だけで行動を決められない時は必ずある。
ラスタにとってはそれが今だったというだけの話だ。
傲岸不遜な《所有者》が目の前で仲間を手に掛けようとする瞬間を、座視することは出来なかった。
「必ず戻る! アデリルさんを連れて!」
自分の主義主張がどうのこうのと、リュシアを説得している時間はない。
ラスタは既に城壁の下に飛び降りていた。
そのまま朝露に濡れる草原の大地を一気に駆ける。
ある程度の距離に迫ったところで、彼は抜刀と同時に叫んだ。
「【火球砲】!!」
霧の幕の中を、炎の玉が尾を引きながら飛翔する。
ゲクリニカはそれを避けも防ぎもしなかった。
ラスタが放った火焔魔法の弾道を計算した彼は、それが威嚇に過ぎないことを見越したのだろう。
実際、炎の玉はゲクリニカを掠りもせずに飛び去った。
【火焔祓剣】で大蛇を跳ね除けるアデリルに向かって、ゲクリニカは揶揄するように呼び掛けた。
専属魔法の力が弱まってきたのは、魔力が限界に達し始めた証拠だ。
そして絶え間なく襲い掛かる牙から逃れる度に、体力も消耗していく。
そうしたアデリルの内情をゲクリニカはよく察知していた。
「私を、見くびるな!」
防戦一方のアデリルは焦燥に駆られたのか、遂に攻勢を仕掛けた。
ゲクリニカに向かって一直線に突撃し、あと何発発動できるかもわからない専属魔法を使おうというのである。
そんな捨て身のアデリルを、ゲクリニカは待ちわびていたかのように迎え撃った。
「小娘が!」
老人ながら剣を軽々と振るう力量の高さに、アデリルの剣が空を舞った。
丸腰となったアデリルの首を、ゲクリニカは豪快に鷲掴みする。
「あぐっ!」
地を離れた足がゲクリニカを突き放そうともがく。
それでも紫色の甲冑に守られたゲクリニカの身体は怯まない。
それどころか、アデリルを締め付ける握力が徐々に強められる。
このままでは窒息するより先に首をへし折られてしまうのではないかというほどの剛力だ。
「どうだ小娘、泣いて魔導書を差し出すのであれば、命だけは助けてやってもいいぞ」
「誰が貴様なんかに・・・・・・」
「ふん、貴様のような弱者に魔導書を持つ資格などないわ。とっとと消えるがよい」
既に一騎打ちの結果は半ば透けて見えていた。
ゲクリニカは片手に握る剣を使えば、それを決定的なものに変えることが出来た。
それでも彼は、半死半生のアデリルを軽蔑するかのように、苦痛を与え続けることを選んだ。
彼のこの行動には、自分の意志を邪魔する者は誰もいないという驕りがあったからに違いない。
「ラスタ!」
リュシアが叫んだ時、ラスタの片足は城壁を乗り越えようとしていた。
「アデリルさんを助ける」
「無理だって! あんな化け物!」
負けず嫌いのリュシアでさえ、あっさりと諦めてしまうほどの実力差だ。
ラスタだってそれはわかっている。
ただ、誰にだって合理性だけで行動を決められない時は必ずある。
ラスタにとってはそれが今だったというだけの話だ。
傲岸不遜な《所有者》が目の前で仲間を手に掛けようとする瞬間を、座視することは出来なかった。
「必ず戻る! アデリルさんを連れて!」
自分の主義主張がどうのこうのと、リュシアを説得している時間はない。
ラスタは既に城壁の下に飛び降りていた。
そのまま朝露に濡れる草原の大地を一気に駆ける。
ある程度の距離に迫ったところで、彼は抜刀と同時に叫んだ。
「【火球砲】!!」
霧の幕の中を、炎の玉が尾を引きながら飛翔する。
ゲクリニカはそれを避けも防ぎもしなかった。
ラスタが放った火焔魔法の弾道を計算した彼は、それが威嚇に過ぎないことを見越したのだろう。
実際、炎の玉はゲクリニカを掠りもせずに飛び去った。
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