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4章:ヒシュマー城の攻防
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「敵襲! 敵襲!」
馬上の兵士が采配を振り回して矢の放たれる方角を示した。
アデリルの傍らで矢を射るベルニア兵がその騎兵を見事に射落とす。
「俺達も続くぞ!」
帝国軍は矢の雨に晒されながらも、円盾を前に出して防御陣形を組む。
盾に刻印された帝国の紋章が整然と並んだ。
突然現れた盾の防壁によって矢は弾き返される。
一方、連合軍は弓兵からラスタ達二等騎士に様変わりしていた。
「砲撃開始! 【火焔球】!!」
ダクライア軍では魔法による遠距離攻撃を『砲撃』と称している。
ラスタの号令の下、二等騎士の両手から発せられる炎の玉が帝国軍に降り注いだ。
各地で砂塵を巻き上げ、木をなぎ倒すほどの爆発が生じる。
初級の汎用魔法でありながら、炎系魔法は威力が高く、爆発が敵を攪乱するので昨今の戦いにも多用されている。
円盾の防壁は魔法を散々に撃ち込まれてあっけなく崩壊した。
「突撃!」
ラスタ達が魔法で援護射撃を仕掛ける間に、アデリルを先頭とするベルニア兵達は剣を片手に山の斜面を下った。
ラスタ達もそれに続いた。
矢と灼熱の炎を何とか免れた帝国軍の兵士達は、隊列を組むことなど頭の片隅からさえも忘れているようだった。
混乱する隊列から這い出るようにして抜け出した帝国兵の何人かが、突撃したベルニア兵の餌食になった。
背水の陣を覚悟で戦うベルニア兵達は、帝国軍を押し流すかのように隊列の横腹になだれ込む。
ラスタ達が遅れて合流した時には敵味方が入り乱れて斬り合っていた。
帝国軍の重装歩兵は長槍の穂先を揃えての突撃攻撃を得意としていた。
しかしながら槍を揃える前に敵に肉迫された彼らは身を護る術がない。
それに加えて、森林での戦闘は木の枝に槍を突っ掛けるせいで動きも取れない。
長槍には最も不得意とする地勢だった。
もっとも、帝国軍も自軍の適性に関しては熟知している。
夥しい犠牲を払いながらも、長槍を持った兵士は徐々に後退を続けた。
それと入れ替わるように前線に現れたのは、ラスタ達と同じ剣を携えた短兵だ。
帝国側の短兵は三人一組となって、死にもの狂いで武器を振り回すベルニア兵達を相手取っていく。
五十年間不戦状態にあったとはいえ、エクレナダ帝国は着実に戦争の準備を重ねてきたのだ。
そんな帝国の思惑が兵士一人一人の動きからさえも見て取れる。
「怯むな! 突撃!」
それでもベルニア兵は疲労を忘れているかのように帝国兵と剣で競り合った。
だが、戦いの序盤で見せたほどの戦果は挙げられなかった。
「ほら来いよ! 小僧!」
仮面で声をくぐもらせた帝国兵の一人がラスタを挑発する。
この帝国兵とは既に何度も剣で打ち合っているが、いまだ勝負がつかずにいた。
別段、敵の剣技が優れているわけではない。
厄介なのは帝国兵の全身を覆う、あのどす黒い甲冑だ。
帝国の鍛冶職人が試行錯誤を重ねて生み出したとされるラバール鋳鉄の鎧だ。
剣の刃を弾き返す硬さを誇り、その振動でさえ減衰させてしまう合金。
そんな物を全身に隙間なく固めた帝国兵は個々の戦闘力も決して侮れない。
「こんな鎧!」
馬上の兵士が采配を振り回して矢の放たれる方角を示した。
アデリルの傍らで矢を射るベルニア兵がその騎兵を見事に射落とす。
「俺達も続くぞ!」
帝国軍は矢の雨に晒されながらも、円盾を前に出して防御陣形を組む。
盾に刻印された帝国の紋章が整然と並んだ。
突然現れた盾の防壁によって矢は弾き返される。
一方、連合軍は弓兵からラスタ達二等騎士に様変わりしていた。
「砲撃開始! 【火焔球】!!」
ダクライア軍では魔法による遠距離攻撃を『砲撃』と称している。
ラスタの号令の下、二等騎士の両手から発せられる炎の玉が帝国軍に降り注いだ。
各地で砂塵を巻き上げ、木をなぎ倒すほどの爆発が生じる。
初級の汎用魔法でありながら、炎系魔法は威力が高く、爆発が敵を攪乱するので昨今の戦いにも多用されている。
円盾の防壁は魔法を散々に撃ち込まれてあっけなく崩壊した。
「突撃!」
ラスタ達が魔法で援護射撃を仕掛ける間に、アデリルを先頭とするベルニア兵達は剣を片手に山の斜面を下った。
ラスタ達もそれに続いた。
矢と灼熱の炎を何とか免れた帝国軍の兵士達は、隊列を組むことなど頭の片隅からさえも忘れているようだった。
混乱する隊列から這い出るようにして抜け出した帝国兵の何人かが、突撃したベルニア兵の餌食になった。
背水の陣を覚悟で戦うベルニア兵達は、帝国軍を押し流すかのように隊列の横腹になだれ込む。
ラスタ達が遅れて合流した時には敵味方が入り乱れて斬り合っていた。
帝国軍の重装歩兵は長槍の穂先を揃えての突撃攻撃を得意としていた。
しかしながら槍を揃える前に敵に肉迫された彼らは身を護る術がない。
それに加えて、森林での戦闘は木の枝に槍を突っ掛けるせいで動きも取れない。
長槍には最も不得意とする地勢だった。
もっとも、帝国軍も自軍の適性に関しては熟知している。
夥しい犠牲を払いながらも、長槍を持った兵士は徐々に後退を続けた。
それと入れ替わるように前線に現れたのは、ラスタ達と同じ剣を携えた短兵だ。
帝国側の短兵は三人一組となって、死にもの狂いで武器を振り回すベルニア兵達を相手取っていく。
五十年間不戦状態にあったとはいえ、エクレナダ帝国は着実に戦争の準備を重ねてきたのだ。
そんな帝国の思惑が兵士一人一人の動きからさえも見て取れる。
「怯むな! 突撃!」
それでもベルニア兵は疲労を忘れているかのように帝国兵と剣で競り合った。
だが、戦いの序盤で見せたほどの戦果は挙げられなかった。
「ほら来いよ! 小僧!」
仮面で声をくぐもらせた帝国兵の一人がラスタを挑発する。
この帝国兵とは既に何度も剣で打ち合っているが、いまだ勝負がつかずにいた。
別段、敵の剣技が優れているわけではない。
厄介なのは帝国兵の全身を覆う、あのどす黒い甲冑だ。
帝国の鍛冶職人が試行錯誤を重ねて生み出したとされるラバール鋳鉄の鎧だ。
剣の刃を弾き返す硬さを誇り、その振動でさえ減衰させてしまう合金。
そんな物を全身に隙間なく固めた帝国兵は個々の戦闘力も決して侮れない。
「こんな鎧!」
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