私、事務ですけど?

フルーツパフェ

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ようやく一歩

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「私ね、思ったの。自分にどんな価値があるのかって」
「というと?」
「前の会社クビになったの、凄く理不尽だと思った。次の仕事なんて、すぐに見つかるだろうと思った。でもそれではいけなかったの。自分に価値がなければ、受け入れてくれる場所はない。だから、今のままじゃダメだって思ったの」
「なるほど」
「それは寺内君にも言えることだよ?」
「俺が?」
「君、能力はあるんだから、もっと自分を前面に出すべきよ。私の時には言いたいこと、結構言ったじゃない」
「それは別に、この前も言ったように仕事が進まなくなるから」
「それだけでここまでのこと、してくれる?」
 寺内君は答えなかった。
 私だけが前に進めばいいわけじゃない。
 彼にだって、新しい世界に踏み出すチャンスがある。
 お礼と言っては何だが、私は彼にそれを気付かせたかった。
「今度さ、寺内君が実はすごいこと、社長に暴露するから」
「それは・・・・・・困ります」
「どうして?」
「仕事が、増えるから」
「私の文の仕事は肩代わりしてくれたんだから、私も協力する。それに、仲のいい会社なんだから言いたいことは言うべきよ」
 こうしてプログラム開発は完了し、玩具はスケジュール通りに待望のファン達の下へ届けられることとなった。
 動きのギミックの完成度が高いことは、しばらくSNSを騒然とさせたという。
 もちろん、その頃には私も寺内君も、晴れて正社員になるのだった。
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