私、事務ですけど？

私、事務ですけど？

5

　翌日、私は社長に宣言した。
　出来ないを理由に逃げないと。アニメの世界で戦う主人公と同じく、ロボットを動かすためのソフトウェアを全力で作り出すと。
「よく言ってくれた。それじゃあ早速、企画会議を始めようか」
「え？　今からですか？」
「もう製作をスタートしないと納期が間に合わないからね」
　そういうわけで臨時の企画会議が開かれる。
　顔ぶれは社長に営業担当者、設計担当、現場の職場リーダーが揃う。
　それに加え、総務や同じ事務の部署で働く女子達までが参加している。
　はっきり言えば、会社全体のメンツが揃っているのだ。
　この会社ではよく、ほぼ全員でこういう会議を開くのだという。
「それでロボットの機能なんだけど・・・・・・」
　単純に動くだけではつまらない。何か買い手を驚かせるような新機能を搭載しようという話になった。
「はい！　LEDが青から赤に染まるのがいいです！　デストロイモード発動みたいな」
　確かに原作でもそういうシーンはあった。でもそれは古代超文明の設定の話であって、問題は玩具自体がLEDで光っているということだ。単に電流を流した時のエネルギーで光っているだけで、ソフトウェアで制御できる範囲ではない。社長に限らず、若い世代も含めてこの会社のパソコンスキルと言えばその程度なのだ。
「いいねえ」
　誰一人として技術的なアドバイスをすることなく、まるで夢のような設計コンセプトが積み上がる。
　それ、実現するのは私一人なんですけど。