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苛烈なる転職活動
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13日の金曜日、面接当日。
よく使う地元の路線で、普段ならば絶対に降りないであろう駅に足を付けた私は、簡略化された手書きの地図を頼りにその会社へ向かった。
猥雑とした商店街がどこまでも続く下町のような風景の中に、その会社は存在した。
外観を一言で言うなれば、典型的な町工場だ。
きめ細やか波型のトタン屋根が被った、プレハブ調の直方体。
同じ工場とはいっても、以前の勤め先のように電力室やクレーン設備もない。
それだけの設備で、本当に何を作っているのだろう。
シャッター横の曇りガラスの向こうからは何も見えない。
さすがに勝手に入るわけにもいかず、据え付けられたインターホンを押す。
「はい」
「すいません、面接で伺った霜月ですけど」
「お待ち下さい」
しばらくして、私とほぼ同い年位の事務の女の子が出てきた。
意外にもおしゃれな制服を着こなしている。
同類に会ったためか、なぜかほっとした。
「こちらへどうぞ」
彼女の案内を受け、私は工場の中を進む。まず目についたのは半導体基板に黙々とはんだ付けする工員。
何を作っているのか、金属筐体が外された機械が無造作に置かれている。
「お待ち下さい」
食堂と応接間を兼ねていると思しき部屋に来ると、事務員は更に奥の部屋へ引っ込む。
どうもその奥が事務所になっているようだ。
「どうも、お待たせしました」
出てきたのは六十代ほどの作業着を着た男性だった。
早速自己紹介してくれた名前は、求人応募の容姿に書かれていた社長の名前と同一だった。
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それだけの設備で、本当に何を作っているのだろう。
シャッター横の曇りガラスの向こうからは何も見えない。
さすがに勝手に入るわけにもいかず、据え付けられたインターホンを押す。
「はい」
「すいません、面接で伺った霜月ですけど」
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「お待ち下さい」
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どうもその奥が事務所になっているようだ。
「どうも、お待たせしました」
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