私、事務ですけど?

フルーツパフェ

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苛烈なる転職活動

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 転職活動が泥沼化して、三ヶ月ほどが過ぎた。
 あと数か月以内に転職しなければ、雇用保険が支払われることになるが、これは逆に長期的な収入を削ることになる。
 早期に再就職すれば一定の条件付きで未払いの雇用保険支給額全額のうち、何割かが支払われることになる。
 それと再就職先の給料を合わせると、場合によっては一ヶ月ほどの長期休暇を得られる上に収入がほとんど削られない計算だ。
 とはいっても、再就職先がなかなか決まらないのが現状だ。
 特別な資格があるわけでもなければ、さして有名大学を出ているわけでもない、ただの理学部出身の私はいまだ、事務職を求め続けていた。
 転職サイトの求人で事務職は最多だが、給料、勤務地、その他の条件で検索フィルターを掛けると、最終的に残った候補は数十件ほどになる。
 そうした有力候補に目を付けているのは、恐らく私だけではない。
 とはいえ何もしなければ向こうからアプローチがあるわけでもなく、まず応募の旨をメールで送る。
 応募した企業のうち、三分の一ほどが未回答のままで、残る三分の一が採用拒否の通知。
 何とか面接をしてもらえた企業でも、出向けばその日のうちに不採用が連絡された。
 理由はなるべく若いうちから社風に慣れさせたいとか、日商簿記や会計管理士の資格を持った有能人材が重宝されるとか、そんな所だろう。
 28歳という中途半端な年齢で、特に準備を始めているわけでもなかったのに再就職先を探すことになった私にはとても不利なのだ。
 せっかく見つけ出した求人案件も一週間後には全部お流れとなり、こんな状況がもう何日も続いている。
 最初は私に目を付けていた企業も、次第に他の求職者に流れていった。
 だとすると、せめて雇用保険の全額を受給して急場を凌ぐしかないのか。
 私は受給資格のため、とりあえずハローワークの求人を何社か応募してみることにした。
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