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1章: 学院内権力組織
戦端
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「それと、対戦者には武器の携行が認められています」
「え? 魔法で戦うんじゃ?」
「個人によって、必ずしも直接的な威力を持たない魔法もありますから。例えば手を触れずに武器を操る魔法などの場合です。もちろん、魔法の関与なしに武器や腕力だけで相手をねじ伏せるのは不正行為と判定されるので、それだけはご注意ください」
「心得ました」
「では、武器を選んでください」
統制委員に案内されたシュロムの前には短剣から槍、打撃武器と飛び道具以外の様々な形態の得物が並べられていた。
あの傲慢で勝気なティラの顔を思い浮かべれば棍棒かトマホークを選びたい気分だったが、さすがに女子をそんな物で殴れないシュロムはとりあえず護身用に片手長剣を掴んだ。
「では、御武運をお祈りします」
統制委員に見送られる、というより逃げ場のない窮地にやり込まれたシュロムはティラと対峙する。
小さな彼女の手には不相応な両手戦斧が握られていた。
「あっ!! お前、それはずるいだろ!」
「そんなことないのです。この学院でスカートめくりをするような輩はこれで腐った脳みそをカチ割ればいいのです。それに、あなたにも同じ武器の選択肢があったはずですが?」
だから、そんなもので小柄な女子を殴れるかよ。
「双方とも、準備はいいですか?」
審判がシュロムとティラの顔を交互に見ながら真ん中に立った。
「もちろんなのです」
「ええ、始めて下さい」
「では――」
審判が手を上げた。それが下に振り下ろされる時、戦いの火ぶたが切られる。
「先手必勝なのです!」
いち早く動いたティラが斧を地面に突き立てる。それと同時に審判が宣言した。
「公式戦開始!」
「ちょっと待て・・・・・・その手は振り下ろされて開始では?」
戸惑うシュロムの前にもう炎が迫ってくる。
シュロムは何とかそれをかわした。
「お前、さっきから汚ねえぞ!!」
シュロムの抗議の声は、燃え盛る炎の爆音に掻き消された。
「逃げるな! ちょこまかと!」
シュロムめがけて突き出したティラの両手から炎の球が現れ、ある程度の大きさまで膨らむと矢のごとくシュロムめがけて飛んできた。
直線軌道しか描かない炎の球は決して避けられない速さではなかったが、目標を外れても爆発する威力は決して侮れない。
地面には大穴が開き、周囲の草木は黒く焼け焦げた。
そんな危険な火の玉を、ティラはお構いなしに何発も連発してくる。
どうやら彼女は炎系の魔法を習得しているようだ。
魔導士の、しかも学生が使う魔法のカテゴリーは通常一種類だ。
魔法を使いこなすためには魔力の操作技術をはじめ自然現象に対する理解など覚えるべき事柄は山ほどあり、一種類の魔法でも習得は難しい。だから少なくともBクラスまでは、炎の魔法を使えて同時に風や雷の魔法まで使いこなしてしまうというケースはあまりない。
つまり、炎魔法さえ何とかしてしまえばシュロムにも勝機は十分にあるのだ。
「どうしたのですか? 諦めたのですか?」
さっきまで防戦一方だったシュロムが急に回避も防御もしなくなったのを見て、ティラが聞いた。
シュロムは静かに被りを振りながら答えた。
「いや、お前の魔法は見させてもらったよ。ここからが反撃開始だ」
「何を今頃――次こそは灰にしてやるのです!」
「え? 魔法で戦うんじゃ?」
「個人によって、必ずしも直接的な威力を持たない魔法もありますから。例えば手を触れずに武器を操る魔法などの場合です。もちろん、魔法の関与なしに武器や腕力だけで相手をねじ伏せるのは不正行為と判定されるので、それだけはご注意ください」
「心得ました」
「では、武器を選んでください」
統制委員に案内されたシュロムの前には短剣から槍、打撃武器と飛び道具以外の様々な形態の得物が並べられていた。
あの傲慢で勝気なティラの顔を思い浮かべれば棍棒かトマホークを選びたい気分だったが、さすがに女子をそんな物で殴れないシュロムはとりあえず護身用に片手長剣を掴んだ。
「では、御武運をお祈りします」
統制委員に見送られる、というより逃げ場のない窮地にやり込まれたシュロムはティラと対峙する。
小さな彼女の手には不相応な両手戦斧が握られていた。
「あっ!! お前、それはずるいだろ!」
「そんなことないのです。この学院でスカートめくりをするような輩はこれで腐った脳みそをカチ割ればいいのです。それに、あなたにも同じ武器の選択肢があったはずですが?」
だから、そんなもので小柄な女子を殴れるかよ。
「双方とも、準備はいいですか?」
審判がシュロムとティラの顔を交互に見ながら真ん中に立った。
「もちろんなのです」
「ええ、始めて下さい」
「では――」
審判が手を上げた。それが下に振り下ろされる時、戦いの火ぶたが切られる。
「先手必勝なのです!」
いち早く動いたティラが斧を地面に突き立てる。それと同時に審判が宣言した。
「公式戦開始!」
「ちょっと待て・・・・・・その手は振り下ろされて開始では?」
戸惑うシュロムの前にもう炎が迫ってくる。
シュロムは何とかそれをかわした。
「お前、さっきから汚ねえぞ!!」
シュロムの抗議の声は、燃え盛る炎の爆音に掻き消された。
「逃げるな! ちょこまかと!」
シュロムめがけて突き出したティラの両手から炎の球が現れ、ある程度の大きさまで膨らむと矢のごとくシュロムめがけて飛んできた。
直線軌道しか描かない炎の球は決して避けられない速さではなかったが、目標を外れても爆発する威力は決して侮れない。
地面には大穴が開き、周囲の草木は黒く焼け焦げた。
そんな危険な火の玉を、ティラはお構いなしに何発も連発してくる。
どうやら彼女は炎系の魔法を習得しているようだ。
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魔法を使いこなすためには魔力の操作技術をはじめ自然現象に対する理解など覚えるべき事柄は山ほどあり、一種類の魔法でも習得は難しい。だから少なくともBクラスまでは、炎の魔法を使えて同時に風や雷の魔法まで使いこなしてしまうというケースはあまりない。
つまり、炎魔法さえ何とかしてしまえばシュロムにも勝機は十分にあるのだ。
「どうしたのですか? 諦めたのですか?」
さっきまで防戦一方だったシュロムが急に回避も防御もしなくなったのを見て、ティラが聞いた。
シュロムは静かに被りを振りながら答えた。
「いや、お前の魔法は見させてもらったよ。ここからが反撃開始だ」
「何を今頃――次こそは灰にしてやるのです!」
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