万能知識チートの軍師は無血連勝してきましたが無能として解任されました

フルーツパフェ

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3章: 威厳なき名家

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 ガウリゼンはレンガの試作品を持ち上げたり触ったり、挙句はかじりつきまでした。
「これが・・・・・・レンガだと?」
「どうです? とても質が良いでしょう。この土地全部がその原料ですよ。ガウリゼン男爵は親切にも、こんな土地をわずか金貨五百枚で売ってくれたのです」
「し、信じられん。こんな土地に・・・・・・こんな儲け話があるなど」
「では、善良なガウリゼン男爵にしかるべき対価をお支払いするとしよう」
 テセントラの部下が木箱を抱えて愕然とするガウリゼンの前に置いた。
「お改めください」
 中には確かに金貨五百枚が積まれている。目も眩むような光景だが、この土地の潜在的な価値には遠く及ばない。
「さあ、計画は成立した。それを持って、我が領土から気を付けてお帰り下され」
「そうですよ。それに、あなたにはこの後やる事があるでしょう?」
 レムダが付け加えた。
「やる事だと?」
「当然、売った金貨の山分けですよ。この土地を今まで散々荒らしまわった野盗とね」
「なぜこのわしが! 野盗などと・・・・・・」
「知っているんですよ。こんな貧しい土地に税金を課せば中央政府から目を付けられる。それでも搾取を続けたいあなたは、野盗の侵入を許して彼らに非合法な略奪をさせ、その一部を通行料として徴収することで密に私腹を肥やしていた。その商売も行き詰ったから、どうせなら最後に金貨五百枚でももうかればいいかと思って、僕の契約を受けたのでしょう? あなたの独断で略奪ができなくなったのですから、当然その賠償はあなたの責任で行って下さい。そうしないと、あなた自身が後悔することになると思いますが?」
「お、おのれ! 貴様最初からそこまで計算し尽くした上でこのワシをはめおったな!!」
「失礼ですぞ、ガウリゼン男爵。レムダ殿はこの土地を金貨五百枚と査定したのですから、この土地にはそれだけの価値があるとなぜ最初に勘繰らなかったのですか? よもや彼を金銭感覚の未熟な子供と決めつけて、適当な返事を返されたのではありませぬか? 先程からレムダ殿は真実しか話しておりませんぞ」
 テセントラの叱責を受け、ガウリゼンはとても貴族と縁のない罵り文句を垂れ流しながら、自らの領土へ帰っていった。
「ありがとうございます。これで、誰も傷つかずにこの土地の安寧と発展が保証されました」
「またこのような上手い話があれば、贔屓にしていただきたいものですな。ハハハ」
 その後、アトロネーゼはテセントラ侯爵の支援を受けて窯業産業の街として発展し、そこで得られるレンガ資材はほぼ独占価格で販売され、売却金額など取るに足らない多額の利益を生むことになるのだった。
 一方のガウリゼン男爵は非合法勢力との和解金交渉に行き詰まり、豪邸を手放した後、その後の行方は知れていない。
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