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3章: 威厳なき名家

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 灯は数えるだけで七つ。
 実際の人数はもっと多いようだ。
 連中はあばら屋の集落に入るなり、足元に置かれていた道具などを足蹴りにして大騒ぎした。
「くそっ! 野盗がきやがった!」
「どうする?」
 物陰でぼやいていたフェリスの従者達もこの騒ぎを聞きつけていた。
「どうするも何も、命あっての金だろうが! あんなお転婆と心中できるかよ!」
 そう言い捨てるなり、二人は慌てた様子で集落を脱出した。
「何だぁ!! 寂れた村だなぁ!!」
 頭と思しき大男が辺りを見回しながら吠えるように叫んだ。
 彼に呼応して手下どもがゲラゲラと笑いだす。
「この村の頭はどこのどいつだ?」
「あの・・・・・・この村に何か?」
 村長がたどたどしい足取りで野盗達の輪の中に入っていく。
 見る限り、野盗達は帝国とは少し色彩感覚の違う衣類を身に付けていた。
 職業柄もあるかもしれないが、恐らくは越境してきた隣国の出身だろう。
「見るからになにもねえ村だが、この村は今日から俺達の庇護下に入ってもらう。まずは前金として保護料を頂きに来た」
「保護料・・・・・・でございますか? しかしこの村には本当に何もないのでございます。呪われた土地と揶揄されるように、作物さえ十分に育つ土地では・・・・・・げはっ!!」
 野盗の頭は村長を平手で殴り倒した。
 二人ほどの手下が現れ、荒々しく地面に倒れ込んだ村長を立たせる。
「守ってやるってのに、なんだその態度は。この村には誠意ってものさえないのか?」
「勘弁して下さい。これ以上搾取されては、本当に私達はこの土地を捨てるしかなくなってしまいます」
「ああ、そうかい。だったら綺麗さっぱり出て行くんだな! おい、野郎ども。この村を燃やしてしまえ!」
「お待ちください! 中には女子供もおります!」
「うるせえ! まだほざくのかお前は!」
 頭が拳を振り上げた瞬間だった。
「ぎゃわあ!!」
 悲鳴と共に、手下が一人馬にでもはねられたかのように転がり込んだ。
「何だ?」
 一同の視線の先に、剣呑な表情で得物を握ったフェリスの姿があった。
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