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3章: 威厳なき名家

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 空気が重い。
 こともあろうにレムダ達に割り当てられた宿営地の中は、一部屋だった。
 ただ、フェリスは早速見えない壁をこしらえたようで、一人窓際に座って誰も近づけようとしない。
 その壁に囲まれ、隅に追いやられるようにして、レムダは座っている。
「あの~、フェリスさん?」
「話掛けないでくれませんこと?」
 シアだけがその壁を越えて自由に行き来できる状態だった。
 もっとも彼女には、目に見える壁でさえ有って無いようなものだが。
「どうせ抗議をされたいのでしょう? 知らずにこんな所まで連れて来られたことに」
「いや、知らなかったのはフェリスさんだけで・・・・・・何でもないです!」
 フェリスの一睨みにレムダは竦んだ。
「いいですわ。そもそもこの実習、領土防衛の現状を現地で学び取るのが目的ですもの」
「その防衛を放棄されたのがこの土地なんですけどね・・・・・・いえ、やっぱり何でもないです!」
「いいですわ! 野盗だろうと獣だろうと、この私が一人でお引き受けします。あなたは黙って見ているだけで結構ですわ!」
「いや、そんな怒らなくとも・・・・・・ところで、フェリスさんの従者の人達は?」
「そういえば先程外の様子を見に行くと言ったきり、戻っていないですね?」
 既に外は暗くなっている。
 帝都の中央ならばともかく、この土地でしばらく姿が見えないと妙に不安に駆られる。
「僕が見てきますよ」
 レムダが薄い木扉を開けると、外の風が待ち侘びたとばかりに吹き込んできた。
 夕刻ともなると、もはや人の気配すらない。
 まるで廃墟の中に自分一人が取り残されているような感覚に陥る。
「参ったぜ。こんな所まで付き合わされるなんてな」
 フェリスの従者達は建物の影で持参の酒を飲みながら、言葉を交わしていた。
「仕方ないだろ。あのお転婆に付き合わなきゃ金がもらえないんだから」
「本当に支払われるのかよ。あの子娘、実はトレスデンの家の人間じゃないんだろ?」
「いや、正確には正当な血筋じゃないらしい。一応、父親の子ではあるらしいが」
「どっちにせよ、それで勘当されたらこっちの苦労が水の泡だ」
「そうなった時は、あの女に埋め合わせをしてもらえればいいのさ。ハハハ」
 レムダは気分を害して、先に宿営地に戻ろうとした。
 そんな彼の目前に、いくつもの松明が列をなしてこちらに向かっていた。
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