20 / 58
3章: 威厳なき名家
3
しおりを挟む
最初は広々と物寂しいレムダの部屋だったが、今は色々なものが置かれるようになった。
全て士官学校から命じられた課題ではなく、どちらかと言えばレムダのクラフト趣味の産物である。
「レムダ様。今日は何をしているんだ?」
せわしなく動くレムダの手を、シアが物珍しげに眺める。
「お前があんまり露出癖があるから、その対策だ」
「だってこの服、動きにくいからさ」
「だから動きやすい服をこしらえるんだよ。ほら、そこに立て。採寸してやる」
レムダはシアの身体の各所の寸法を測りながら、時折生地を合わせる。
「う~む、ここはこうか」
集中を遮ったのはノックの音。そのパターンには聞き覚えがある。
「レムダ=ゲオルグ。いるのですか・・・・・・また、あなたは!!」
「違う! コイツの気に入った服を作ってやっているんだって! 大体何でいつもこういう時に限って、部屋に入ってくるんだ?」
「あなたこそ、いつもいつも何をしているんですか? そこの従者の方。あなた本当にこの男に何もされてないのですよね? 変なことは」
「うん? されてないと思うぞ。落とし穴に嵌められたり、木に吊るされたりしたことはあったけど」
「やはりしているではありませんか!!」
「それは不可抗力だ!」
「でも別に、ここに来てから後悔はしたことがないな。美味い飯は食えるし、レムダ様は意外と器用で色んなものを作ってくれるから」
「色んなものを、作る?」
フェリスは部屋を眺め回した。
「そういえばこの部屋、本当に色々なものが置かれていますね。あれは、観葉植物ですか?」
フェリスは窓際を占拠する鉢植えの列を指さした。
「いや、小麦だ。この地域の土壌と日照条件で一番育ちやすい品種を研究している」
「そんなこと、農民の仕事で、この士官学校の学生がする仕事ではないのでは?」
「いや、優等生ならわかると思うけど、食料の調達は軍の最優先課題だよ。ましてや帝国のように大軍を動員するならなおさらだ」
「それはそうですけど、それであちらにぶら下がっている金属の板は?」
「武器に転用しやすい鋼の素材を改良している試作品だ。強度は十分だけど、まだ重さが難点で」
「それも鍛冶職人に任せればよいではありませんか?」
「ろくな武器がなくて、どうやって戦うのさ。この帝国軍では、誰もが上質の剣を手に入れられるわけではないんだよ。武器もなしに戦場に赴くのは犬死も同然じゃないか」
「わかりますけど・・・・・・私達には私達のするべきことがあると思います。今日はあなたにそのお話をしに出向いたのです」
フェリスはレムダの前で傲岸にも腕を組んだ。
全て士官学校から命じられた課題ではなく、どちらかと言えばレムダのクラフト趣味の産物である。
「レムダ様。今日は何をしているんだ?」
せわしなく動くレムダの手を、シアが物珍しげに眺める。
「お前があんまり露出癖があるから、その対策だ」
「だってこの服、動きにくいからさ」
「だから動きやすい服をこしらえるんだよ。ほら、そこに立て。採寸してやる」
レムダはシアの身体の各所の寸法を測りながら、時折生地を合わせる。
「う~む、ここはこうか」
集中を遮ったのはノックの音。そのパターンには聞き覚えがある。
「レムダ=ゲオルグ。いるのですか・・・・・・また、あなたは!!」
「違う! コイツの気に入った服を作ってやっているんだって! 大体何でいつもこういう時に限って、部屋に入ってくるんだ?」
「あなたこそ、いつもいつも何をしているんですか? そこの従者の方。あなた本当にこの男に何もされてないのですよね? 変なことは」
「うん? されてないと思うぞ。落とし穴に嵌められたり、木に吊るされたりしたことはあったけど」
「やはりしているではありませんか!!」
「それは不可抗力だ!」
「でも別に、ここに来てから後悔はしたことがないな。美味い飯は食えるし、レムダ様は意外と器用で色んなものを作ってくれるから」
「色んなものを、作る?」
フェリスは部屋を眺め回した。
「そういえばこの部屋、本当に色々なものが置かれていますね。あれは、観葉植物ですか?」
フェリスは窓際を占拠する鉢植えの列を指さした。
「いや、小麦だ。この地域の土壌と日照条件で一番育ちやすい品種を研究している」
「そんなこと、農民の仕事で、この士官学校の学生がする仕事ではないのでは?」
「いや、優等生ならわかると思うけど、食料の調達は軍の最優先課題だよ。ましてや帝国のように大軍を動員するならなおさらだ」
「それはそうですけど、それであちらにぶら下がっている金属の板は?」
「武器に転用しやすい鋼の素材を改良している試作品だ。強度は十分だけど、まだ重さが難点で」
「それも鍛冶職人に任せればよいではありませんか?」
「ろくな武器がなくて、どうやって戦うのさ。この帝国軍では、誰もが上質の剣を手に入れられるわけではないんだよ。武器もなしに戦場に赴くのは犬死も同然じゃないか」
「わかりますけど・・・・・・私達には私達のするべきことがあると思います。今日はあなたにそのお話をしに出向いたのです」
フェリスはレムダの前で傲岸にも腕を組んだ。
0
お気に入りに追加
61
あなたにおすすめの小説
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
世界最強の勇者は伯爵家の三男に転生し、落ちこぼれと疎まれるが、無自覚に無双する
平山和人
ファンタジー
世界最強の勇者と称えられる勇者アベルは、新たな人生を歩むべく今の人生を捨て、伯爵家の三男に転生する。
しかしアベルは忌み子と疎まれており、優秀な双子の兄たちと比べられ、学校や屋敷の人たちからは落ちこぼれと蔑まれる散々な日々を送っていた。
だが、彼らは知らなかったアベルが最強の勇者であり、自分たちとは遥かにレベルが違うから真の実力がわからないことに。
そんなことも知らずにアベルは自覚なく最強の力を振るい、世界中を驚かせるのであった。
性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。
狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。
街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。
彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)
貞操逆転世界に無職20歳男で転生したので自由に生きます!
やまいし
ファンタジー
自分が書きたいことを詰めこみました。掲示板あり
目覚めると20歳無職だった主人公。
転生したのは男女の貞操観念が逆転&男女比が1:100の可笑しな世界だった。
”好きなことをしよう”と思ったは良いものの無一文。
これではまともな生活ができない。
――そうだ!えちえち自撮りでお金を稼ごう!
こうして彼の転生生活が幕を開けた。
豪華地下室チートで異世界救済!〜僕の地下室がみんなの憩いの場になるまで〜
自来也
ファンタジー
カクヨム、なろうで150万PV達成!
理想の家の完成を目前に異世界に転移してしまったごく普通のサラリーマンの翔(しょう)。転移先で手にしたスキルは、なんと「地下室作成」!? 戦闘スキルでも、魔法の才能でもないただの「地下室作り」
これが翔の望んだ力だった。
スキルが成長するにつれて移動可能、豪華な浴室、ナイトプール、釣り堀、ゴーカート、ゲーセンなどなどあらゆる物の配置が可能に!?
ある時は瀕死の冒険者を助け、ある時は獣人を招待し、翔の理想の地下室はいつのまにか隠れた憩いの場になっていく。
※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる