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2章: 戦術なき軍師

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 フェリスは中途半端に構えたまま、口をぽかんと開けていた。
「あなた、何をしているの?」
「謝ってます。あなたには勝てる気がしません。どうか命だけはお助け下さい」
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ? さっきまでの自信はどうしたのよ? ねえ、私と戦いに来たのでしょう?」
「そのつもりでした。でも勝てないとすぐにわかりました。本当にごめんなさい」
 レムダは一向に頭を上げない。
「はあ? あなた、プライドってものはないの? それでもゲオルグ家の人間なの?」
「まあ、一応、血縁的には・・・・・・」
「だったら剣を取って戦いなさい! 私との勝負はこれからですよ」
 レイピアを力強く握りしめたフェリスが詰め寄る。
 そこへ、大きな影がレムダを遮った。
「が、学長?」
「フェリス=トレスデン。この決闘の勝敗は既についている。決闘以外での武力行使は校則で禁じられているはずだが?」
「な・・・・・・学長はこんな茶番を納得しているのですか? ろくに戦いもせずにいきなり降参なんて」
「最初に言ったはずだ。この決闘の勝敗条件を。レムダ=ゲオルグは明らかに自信の敗北を認めている。すなわち決闘の勝者はフェリス=トレスデンということになる」
「お言葉ですが・・・・・・学長は本当にそれでよろしいのですか? 私達はいずれ帝国の軍旗を背に戦う誇り高い軍人を志す者です。命欲しさに自ら敗北を認める腑抜け者など、この士官学校には――」
「では一つ訊かせてくれたまえ、フェリス。君はこの決闘に勝利して、何のメリットを得る?」
「メリットとは、何の話ですか?」
「質問を変えよう。レムダを殺すなり、傷つけるなりして、結局君に何の得があるということだ」
「それは・・・・・・別にありませんが、ただこの男はしょうもない変態です。年端もいかない従者の少女を、ベッドの上で丸裸にしていたのを見ましたから」
「いや、それは誤解なんです!」
 レムダはこの時だけは頭を上げた。
「それは事実かね? レムダ=ゲオルグ」
「違います! 僕はむしろそれを止めようと」
「では本人に訊くのが一番早かろう。君は本当に、主人に侵されたのかね?」
 ここでシアが引き合いに出された。首を傾げて、彼女は言った。
「侵された? 何の話だ?」
「彼から服を脱がされたとの目撃談があるのだが」
「違う。この服はきついから脱ぎ捨てただけだ。今だって、このパンツとか言うのはない方がすうすうする」
「だからシア、パンツは履いてくれよ・・・・・・」
 レムダは赤面を伏せた。
「そんな。何なのよ。アンタ達は」
「というわけだ。フェリス。全ては君の勘違いということになる」
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