万能知識チートの軍師は無血連勝してきましたが無能として解任されました

フルーツパフェ

文字の大きさ
上 下
9 / 58
1章: 刃なき剣

7

しおりを挟む
「くっ!! コイツ! 私を助けたんじゃなかったのか!」
「勘違いしないで欲しいな。君が食い散らかした補償と引き換えに、君を奴隷として買い取っただけだ」
「卑劣な! お前なんかの言うなりになるか! この私が!」
「いいのかい? 僕の奴隷になれば少なくとも寝食には困らせないよ。断る権利もあるが、そうなったらこの村に身柄を引き渡すだけだ。そしたら君、まずは村中から袋叩きにされて一生納屋に繋がれたまま酷使されることになる。やがて、食事の量も日に日に減らされて、それこそ干ばつでも起こった時には――」
「ま、待て! お前の想像は暗すぎる! 聞いていて嫌になるからそれ以上言うな!!」
「一つ助言しておこう。物事を決める時には、常に最悪の事態を想定しておくものだ」
「・・・・・・わかった。それで、お前の下僕になってやるとして、私は何をすればいい?」
「ようやく状況を呑み込んでくれたか。それじゃあ――」
 レムダは剣の柄に手を掛けた。
「なっ!」
 少女はすぐに身構える。猫にも劣らない反射的な身のこなしだった。
 レムダの剣は既に抜身。だが肝心の刀身はどこにも見当たらない。本当にただの柄だけを握りしめている。
「その剣は?」
「見ての通り、柄と鞘だけの飾りだ。だから僕には身を護る術が欲しい。君なら、安心して任せられる」
「私を、信用するのか?」
「信用まではしていない。契約を依頼しただけだ。破棄すれば、相応のペナルティがあることは最初に断っておく」
「受けてやってもいいが、赤眼族を連れ歩いて、お前は同胞から何とも思われないのか?」
「実際のところ、君がいなくても、僕は帝国の中ではみ出し者さ。だったらせめて、合わせられる背中くらいは欲しいとは思わないか?」
 レムダは少女の返事を待たず、用意された服を差し出した。
「まずはそれを着てくれ。そんなボロボロの服では、大事な部分がまるで隠せていない」
 少女はそれを珍しそうに眺める。
「そうか、赤眼族は帝国とはだいぶ違う民族衣装だから」
 民族衣装というより、麻や獣の皮を服らしくまとった、かなり原始的で簡素な衣類だ。
 カフスや襟という概念もない。
「その前に、まずはやることがあるな」
 翌朝、村の共同井戸で少女は桶の水で背中を流した。
 土ぼこりで汚れていた髪は背後からレムダが櫛でとかし、上から下まで衣類を着せてやる。
 すっかり身支度を終えると、野性味は控えめとなり、やや活発な印象の少女に仕上がった。
「動き、にくい」
 慣れない服装に、赤眼族の少女は居心地悪そうに身を捩らせた。
「このひらひら、邪魔」
「それはスカートだ。絶対人前でめくるなよ」
「しかも中にもう一つ。これ、必要なのか?」
「下着はつけておくこと! それも常識だ。それより君、名前は?」
「シア・・・・・・」
「シアか。よし、じゃあ君はシア=ヘルベット。今日からそう名乗って欲しい」
「シアだ。ヘルベットは余計だ」
「いいか? 帝国には皆、苗字があるんだ。煩わしいかもしれないが、この苗字がないと、色々と面倒だ。ちなみに僕はレムダ=ゲオルグだが、苗字はゲオルグの方だ」
「何だか面倒な慣習が多いな」
「劣悪な単純労働に戻してやってもいいんだぞ?」
「わかった。ゲオルグ」
「それともう一つ、僕を呼ぶ時は、絶対に苗字の方で呼ばないでくれ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。

アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。 両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。 両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。 テッドには、妹が3人いる。 両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。 このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。 そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。 その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。 両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。 両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…   両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが… 母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。 今日も依頼をこなして、家に帰るんだ! この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。 お楽しみくださいね! HOTランキング20位になりました。 皆さん、有り難う御座います。

異世界ハズレモノ英雄譚〜無能ステータスと言われた俺が、ざまぁ見せつけながらのし上がっていくってよ!〜

mitsuzoエンターテインメンツ
ファンタジー
【週三日(月・水・金)投稿 基本12:00〜14:00】 異世界にクラスメートと共に召喚された瑛二。 『ハズレモノ』という聞いたこともない称号を得るが、その低スペックなステータスを見て、皆からハズレ称号とバカにされ、それどころか邪魔者扱いされ殺されそうに⋯⋯。 しかし、実は『超チートな称号』であることがわかった瑛二は、そこから自分をバカにした者や殺そうとした者に対して、圧倒的な力を隠しつつ、ざまぁを展開していく。 そして、そのざまぁは図らずも人類の命運を握るまでのものへと発展していくことに⋯⋯。

スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する

カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、 23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。 急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。 完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。 そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。 最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。 すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。 どうやら本当にレベルアップしている模様。 「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」 最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。 他サイトにも掲載しています。

クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした

コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。 クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。 召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。 理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。 ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。 これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】 その攻撃、収納する――――ッ!  【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。  理由は、マジックバッグを手に入れたから。  マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。  これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

処理中です...