万能知識チートの軍師は無血連勝してきましたが無能として解任されました

フルーツパフェ

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1章: 刃なき剣

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 中は薄暗く、脇の小さなラウンジや酒場にも人の気配はない。
 宿帳は一年ほど前から更新されていない。
「あ、お客様ですか?」
 丁度別用で奥から現れたと思しき店主がレムダの姿を視界に収めて立ち止まる。
「突然お邪魔してすいません。こちらで一泊したいのですが?」
「も、もちろんですとも。すいませんね。最近は閑古鳥が鳴くありさまでして、この宿も、今年のうちに廃業を決めています」
「しかしそれではここを通る旅人はますます・・・・・・」
「そりゃ、気の毒とは思いますが、何しろ商売をすると税金が掛かるものですから。収入は減るのに、負担額は変わらない。十年前に儲かっていた時はよかったのですが、今となっては」
「そうですか」
「同業も次々廃業して、今は村を出て行く者さえおります。お陰でこの寂れようですよ」
「いえ、のどかでよい村だと思います。わざわざ南の街道を通らずにこちらを通ってよかったです」
「そう、思いますか? のどか、と言いましてもねぇ・・・・・・」
 宿の主人はやや沈んだ表情をした。
「どうかされたのですか?」
「いえ、何でもありません。ではここに、お名前を記入願えますか」
「わかりました」
「・・・・・・レムダ、ゲオルグ様でいらっしゃいますか。ゲオルグ・・・・・・ははは、これは失礼。まさかとは思いましたが」
「ええ、よく言われますよ。綴りまで同じ苗字だから、仕方のないことですが」
 レムダは朗らかに笑った。
 目の前にいる人物が、実は宿の主人の考えるゲオルグ家の人間だったということを隠そうとするかのように。
 夕刻、読書に飽きたレムダは部屋の窓から外を眺める。
 村の明かりは少なく、どこかで野犬が物寂しく吠えている。
 まるで廃村のような景色だが、それでもレムダは動く影を見出した。
 昼間見かけた、見回りをする村の男達である。
 夜とあってか、彼らは尚も剣呑な表情で村を見回った。
 こんな山間に近い集落だから、獣の侵入を恐れているのだろうか。
 あるいはこの辺りで荒稼ぎを始めた山賊一味でも棲みついたのか。
「お客様、夕食の準備ができました」
 そこへ、宿の主人がレムダを呼ぶ。
「ありがとう。ところで一つ、教えて欲しいのですが」
 レムダはずっと気になっていた違和感を尋ねた。
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