61 / 61
3章: Happiness will be enjoyed when it is unequal.
19
しおりを挟む
「ありがとうな。これで明日から安心して商売を続けられる」
テラ=グレミアという最大の脅威が去り、アリーナの人々は喜びを取り戻した。
「いえ、こちらこそ身内がご迷惑をお掛けしました」
「なあ、王宮ってのは、あんな奴等ばっかりなのか?」
「・・・・・・まあ、ちょっと変わった人は多いですけど」
チハルは苦笑いする。
控えめな言い方をする時、人はよくこういう表情を作るものだ。
「でもチハルはやっぱり強いな。ウチのアリーナでてっぺん取れるんじゃないか?」
「そのうち、この仕事が終わったら一度、王都に来てみようと思います」
「その時はお手柔らかに頼むぜ」
こうしてチハルは王宮に戻った。
数々の悪行を働いたテラだったが、貴重戦力ということもあってか、王宮を追い出されるまでには至らず、数か月の謹慎と減給の処分に留まったようだ。
もちろん、それにはチハルの擁護があったことは言うまでもない。
だからフェミル連隊長はあまりいい顔はしなかった。
「あなたという人は、どうしてそうやって、自分の敵を周りに置き続けるの?」
「私は誰も王宮から追い出したいわけではありませんから」
「もし、私が敵に回ったとしても、同じことを言えるのかしら?」
「上官に刃向かおうとは思いません。今回のような、あまりにも理不尽な光景を目にしなければの話ですが」
「だったら、心配は無用ね」
「ところで・・・・・・皇太子殿下に親衛隊の誰かが呼ばれたって聞きましたけど?」
「その話は知らないわ。誰か、噂で知っている?」
フェミル連隊長の仲間で、知る者はいなかった。
「それで、そのことが何か?」
「いえ、それが今回の騒動のきっかけになったので、ちょっと気になっただけですが」
「その噂は決して口外しないことよ。テラのように、余計な嫉妬心を刺激する輩が出るかもしれないわ」
「無論です。それで聞いてみただけです」
結局それが誰なのかはわからないが、考えてみればその人物に悪意があったわけでもない。
だからチハルは、それ以上のことは確かめなかった。
テラ=グレミアという最大の脅威が去り、アリーナの人々は喜びを取り戻した。
「いえ、こちらこそ身内がご迷惑をお掛けしました」
「なあ、王宮ってのは、あんな奴等ばっかりなのか?」
「・・・・・・まあ、ちょっと変わった人は多いですけど」
チハルは苦笑いする。
控えめな言い方をする時、人はよくこういう表情を作るものだ。
「でもチハルはやっぱり強いな。ウチのアリーナでてっぺん取れるんじゃないか?」
「そのうち、この仕事が終わったら一度、王都に来てみようと思います」
「その時はお手柔らかに頼むぜ」
こうしてチハルは王宮に戻った。
数々の悪行を働いたテラだったが、貴重戦力ということもあってか、王宮を追い出されるまでには至らず、数か月の謹慎と減給の処分に留まったようだ。
もちろん、それにはチハルの擁護があったことは言うまでもない。
だからフェミル連隊長はあまりいい顔はしなかった。
「あなたという人は、どうしてそうやって、自分の敵を周りに置き続けるの?」
「私は誰も王宮から追い出したいわけではありませんから」
「もし、私が敵に回ったとしても、同じことを言えるのかしら?」
「上官に刃向かおうとは思いません。今回のような、あまりにも理不尽な光景を目にしなければの話ですが」
「だったら、心配は無用ね」
「ところで・・・・・・皇太子殿下に親衛隊の誰かが呼ばれたって聞きましたけど?」
「その話は知らないわ。誰か、噂で知っている?」
フェミル連隊長の仲間で、知る者はいなかった。
「それで、そのことが何か?」
「いえ、それが今回の騒動のきっかけになったので、ちょっと気になっただけですが」
「その噂は決して口外しないことよ。テラのように、余計な嫉妬心を刺激する輩が出るかもしれないわ」
「無論です。それで聞いてみただけです」
結局それが誰なのかはわからないが、考えてみればその人物に悪意があったわけでもない。
だからチハルは、それ以上のことは確かめなかった。
0
お気に入りに追加
18
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(1件)
あなたにおすすめの小説

王が気づいたのはあれから十年後
基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。
妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。
仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。
側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。
王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。
王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。
新たな国王の誕生だった。

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫
むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。


愛のゆくえ【完結】
春の小径
恋愛
私、あなたが好きでした
ですが、告白した私にあなたは言いました
「妹にしか思えない」
私は幼馴染みと婚約しました
それなのに、あなたはなぜ今になって私にプロポーズするのですか?
☆12時30分より1時間更新
(6月1日0時30分 完結)
こう言う話はサクッと完結してから読みたいですよね?
……違う?
とりあえず13日後ではなく13時間で完結させてみました。
他社でも公開

悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない
陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」
デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。
そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。
いつの間にかパトロンが大量発生していた。
ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
おもしろい!
お気に入りに登録しました~