武器屋の看板娘に転生したつもりでしたが、図らずも最強の剣士として戦うことになりそうです

フルーツパフェ

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3章: Happiness will be enjoyed when it is unequal.

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「いいとも、大事な剣を折られて泣くんじゃねえぞ!」
「ちょっと、チハル! なんかとんでもないことになっているよ!」
「大丈夫」
 店の前で、ハンマーを抱えた男が仁王立ちになる。
 がっしりとした両足を大きく広げ、あの太い腕でショートスピアほどもある柄を握りしめている。
 その姿勢でチハルは確信した。
 こんな武器、わざわざ遠出して見に来るまでもなかったということを。
「いくぜ! せやっ!!」
 戦槌を大きく振りかぶった男は、刀を横向きに構えるチハルめがけて突進した。
 チハルは動かない。
 正確には、動くまでもなかった。
「のわっ!!」
 男の姿勢が途端に崩れた。同時に重々しい音が響き渡る。
「何だって・・・・・・ああ、俺のハンマーが!」
 戦槌は柄とヘッドが完全に分断されていた。チハルが斬りつけたわけでもない。
 あのハンマーがすぐに折れるだろうことは簡単に想像がついた。
 そもそもヘッド部分が鋳鉄。
 鋳鉄は炭素含量が鋼よりも多く、強度に優れた材質だが、その分比重も重い。
 そんなヘッド部分を支える柄は驚くほど簡素な作りで、恐らくは材料費をここで渋ったのだろう。
 そんな頭でっかちな武器は当然、柄の付け根に過大な力が生じて最悪の場合、破損する。
 いわゆる応力集中の原理を、この世界の住人は理解していない。
「お前! 何をしやがった?」
「別に、何もしていませんけど?」
「よくも、買ったばかりの俺のハンマーを!」
 憤った男がチハルの胸ぐらに掴みかかろうとした時だ。
「何をしとるんじゃぁ!!」
 聞き覚えのある野太い声がした。
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