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2章: Aman loves someone not by him but in his mind.

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「侵入者が出たんです!」
「侵入者? 今どこに?」
「わかりません・・・・・・しかし、昨日の夜見回りに出ていた隊員の行方が分からず、今朝になって発見されました」
「何てこと・・・・・・」
 早くも犠牲者が出たことに場が凍り付く。
「襲われたのは?」
「二番隊の隊員一名ですが、命に別状はありません。ただ・・・・・・・服を全て脱がされていました」
「は?」
「丸裸になって、手首足首を縛られていたんです。かと言って、痣や傷はありませんでしたが」
「てことは、強姦?」
 何人かの隊員が身震いする。
「許せないわね。私達の身体に手を出していいのは皇太子殿下だけよ。今晩より、見回りを一人から五人体制に切り替えます。不審な人物を見つけたら逐次報告すること。よろしいですね?」
「はい!」
 事によると、王族をも襲いかねない危険人物かもしれない。
 親衛隊としての試金石が、今まさにチハルに訪れようとしていた。

 厳重警戒態勢が敷かれたにもかかわらず、五日経っても不審者に関する情報は入らなかった。
 かといって、被害もなりを潜めているかというと、そうではなかった。
「また犠牲者が出たって?」
 フェミル連隊長が業を煮やしたように呟く。
「はい、東門を警備していた二人がやられました」
「東門・・・・・・ああ、一番隊の管轄ですか? 二人もいて何をしていたの?」
 自分の部下でないと知ると、フェミルは途端に冷徹になる。
「それが、一人が小用で外した間にもう一人が襲われ、戻って来たところを」
「まあ、何て軽率なの。あれだけ一人で動くなと言ったのに」
「今回もやはり、服を脱がされていました。しかも今のところ、親衛隊以外に被害は出ていません」
「となると、敵は親衛隊そのものが標的ということかしら」
 ちなみに被害はフェミルの派閥でも出始めている。
 単純な勢力争いが引き金の事件というわけではないようだ。
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