27 / 61
2章: Aman loves someone not by him but in his mind.
2
しおりを挟む
「えっと、どういう事でしょうか」
フェミル連隊長はチハルの所属する第六小隊を管轄している。
彼女に言われるまでもなくチハルは部下なのだが、あえて仲間になれということはどういうことだろう。
「あなたも薄々感じ始めている頃じゃないの? この親衛隊にもそれなりの派閥があることを」
「派閥・・・・・・」
どこの組織も一枚岩ではないということか。
なるほど、だから最高位の連隊長のポストも二つ存在するわけか。
「今の勢力図を簡単に説明しておくと、私率いる派閥と、対立する連隊長の派閥で親衛隊内のほぼ三分の二を占めているわ。残りは他の小規模の派閥か、あるいは隊内には派閥に属さないって決め込んでいる子よ」
「つまり、あなた方二人のグループがツートップということですか?」
「それほどでもないわよ。人数的には向こうの連隊長の方が五倍の隊員をなびかせているわ。それでもウチが潰されないのは、少数精鋭の体制に重きを置いているからよ」
「つまり、ここに居る方々は皆、相当の実力者、ということですね?」
「謙遜することはないわ。あなただって、向こう側の主戦力であるエリーを打ち破ったじゃない」
「いや、それは・・・・・・・え、今なんて?」
「向こうのエリーを打ち破ったといったのよ。あなた、もしかしてエリーに勝てばそれでめでたしなんて思っていないよね? あの決闘のお陰で、少なくとも向こう側の派閥からは相当警戒されているわよ」
――や、やってしまった!!
チハルのティーカップを握る手が震える。
「だったら、私達の側についた方がまだ安全よ。このままだとあなた、親衛隊の半数を敵に回すことになるわ」
「いえ、私はその、実家がしがない武器屋で・・・・・・稼いだお金を将来店のために使うつもりでここへ来たわけで・・・・・・」
「そう言っても信じてもらえるかしら。あの決闘の噂は、皇太子殿下のお耳にも伝わっているそうよ。もしかするとあなたが殿下の御心を奪うかもしれない。みんなそれを危惧しているわ」
「では、仮にフェミル連隊長の側につけば、私に野心がないことを証明できますか?」
「当然よ。殿下は私のもの。それはこの部屋にいる全員の共通認識。ここに居るということは、あなたは私と殿下を結ぶための赤い糸になるということよ」
「でもその代わり、あなたと対立する隊員との対立が決定的になるということですね?」
「しかし・・・・・・・」
「安心なさい。私とて、あなた達を道具のように使い捨てるつもりはないわ。この私が守ってあげる。すぐに結論を出せとは言わないわ。でも賢明な答えなら、もう出ているとは思うけど。三日後、答えを聞かせてくれる?」
フェミル連隊長はチハルの所属する第六小隊を管轄している。
彼女に言われるまでもなくチハルは部下なのだが、あえて仲間になれということはどういうことだろう。
「あなたも薄々感じ始めている頃じゃないの? この親衛隊にもそれなりの派閥があることを」
「派閥・・・・・・」
どこの組織も一枚岩ではないということか。
なるほど、だから最高位の連隊長のポストも二つ存在するわけか。
「今の勢力図を簡単に説明しておくと、私率いる派閥と、対立する連隊長の派閥で親衛隊内のほぼ三分の二を占めているわ。残りは他の小規模の派閥か、あるいは隊内には派閥に属さないって決め込んでいる子よ」
「つまり、あなた方二人のグループがツートップということですか?」
「それほどでもないわよ。人数的には向こうの連隊長の方が五倍の隊員をなびかせているわ。それでもウチが潰されないのは、少数精鋭の体制に重きを置いているからよ」
「つまり、ここに居る方々は皆、相当の実力者、ということですね?」
「謙遜することはないわ。あなただって、向こう側の主戦力であるエリーを打ち破ったじゃない」
「いや、それは・・・・・・・え、今なんて?」
「向こうのエリーを打ち破ったといったのよ。あなた、もしかしてエリーに勝てばそれでめでたしなんて思っていないよね? あの決闘のお陰で、少なくとも向こう側の派閥からは相当警戒されているわよ」
――や、やってしまった!!
チハルのティーカップを握る手が震える。
「だったら、私達の側についた方がまだ安全よ。このままだとあなた、親衛隊の半数を敵に回すことになるわ」
「いえ、私はその、実家がしがない武器屋で・・・・・・稼いだお金を将来店のために使うつもりでここへ来たわけで・・・・・・」
「そう言っても信じてもらえるかしら。あの決闘の噂は、皇太子殿下のお耳にも伝わっているそうよ。もしかするとあなたが殿下の御心を奪うかもしれない。みんなそれを危惧しているわ」
「では、仮にフェミル連隊長の側につけば、私に野心がないことを証明できますか?」
「当然よ。殿下は私のもの。それはこの部屋にいる全員の共通認識。ここに居るということは、あなたは私と殿下を結ぶための赤い糸になるということよ」
「でもその代わり、あなたと対立する隊員との対立が決定的になるということですね?」
「しかし・・・・・・・」
「安心なさい。私とて、あなた達を道具のように使い捨てるつもりはないわ。この私が守ってあげる。すぐに結論を出せとは言わないわ。でも賢明な答えなら、もう出ているとは思うけど。三日後、答えを聞かせてくれる?」
0
お気に入りに追加
18
あなたにおすすめの小説
魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
婚約破棄からの断罪カウンター
F.conoe
ファンタジー
冤罪押しつけられたから、それなら、と実現してあげた悪役令嬢。
理論ではなく力押しのカウンター攻撃
効果は抜群か…?
(すでに違う婚約破棄ものも投稿していますが、はじめてなんとか書き上げた婚約破棄ものです)
【書籍化進行中、完結】私だけが知らない
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化進行中です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/12/26……書籍化確定、公表
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ!
タヌキ汁
ファンタジー
国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。
これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
愛されない皇妃~最強の母になります!~
椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』
やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。
夫も子どもも――そして、皇妃の地位。
最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。
けれど、そこからが問題だ。
皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。
そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど……
皇帝一家を倒した大魔女。
大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!?
※表紙は作成者様からお借りしてます。
※他サイト様に掲載しております。
悪役令嬢にざまぁされた王子のその後
柚木崎 史乃
ファンタジー
王子アルフレッドは、婚約者である侯爵令嬢レティシアに窃盗の濡れ衣を着せ陥れようとした罪で父王から廃嫡を言い渡され、国外に追放された。
その後、炭鉱の町で鉱夫として働くアルフレッドは反省するどころかレティシアや彼女の味方をした弟への恨みを募らせていく。
そんなある日、アルフレッドは行く当てのない訳ありの少女マリエルを拾う。
マリエルを養子として迎え、共に生活するうちにアルフレッドはやがて自身の過去の過ちを猛省するようになり改心していった。
人生がいい方向に変わったように見えたが……平穏な生活は長く続かず、事態は思わぬ方向へ動き出したのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる