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1章: Love is hate against itself.

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 決闘の日、朝日は既に天高く上っていた。
 チハルは武器を携えたまま、対戦相手のエリー小隊長を待つ。
「あら、本当に来たのね」
 刻限にやや遅れながら、エリー小隊長が見物に訪れた隊員の群れの中から姿を現す。



 華奢な彼女の背に隠れるように潜むのは彼女の得物。
 両刃の戦闘用斧、通称バトルアックスだ。
――まさか、そっちの斧?
 チハルにしてみれば意外な選択だった。
 エリーとて貴族の少女だから、戦斧と言っても片手用のハンドアックスか、あるいは両手持ち片刃斧のポールアックスが相場だろうと踏んでいた。
 バトルアックスは戦斧の中でも特に重量がある。おまけに両刃斧とだけあって、刃の消耗にも有利だ。
 厄介な相手だが、それだけでチハルの勝算が崩れたわけではなかった。
「てっきり、あの泥棒猫と先を争って逃げ出したのかと思いましたよ」
「そうしたら、あなたの言葉を認めることになりますから」
「それだけの理由でわざわざ醜態を晒しに来たと言いますの? 命知らずなこと。言っておきますけど私、決闘の相手に見苦しくない死に様をお約束することは受けかねますの」
「そちらこそ、簡単に決闘など催したこと、後悔しますよ」
 チハルのそっけない反応にエリー小隊長は眉を引きつらせた。
「簡単に、ではありませんわ。私とて、今この時も自分の命を賭ける覚悟はございますの。決闘に至った選択とて、僭越ながら皇太子殿下への愛情の表現ですのよ」
「意味が分かりません」
「愛とは、それを阻む者への憎しみ・・・・・・・そう言う事ですわ」
「とりあえず、本気を出しても恨みっこなし、ということですね?」
「いいでしょう。あの泥棒猫と、どっちがどっちだかわからないくらいズタズタに八つ裂きにしてやりますわ!!」
 エリー小隊長はバトルアックスを構えた。
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