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1章: Love is hate against itself.
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<Love is hate against itself.>
~愛は、それを阻む者への憎しみ~
――エリー=ミルドレット
赤絨毯が延々と続いている。
時折現れる鎧にはっとさせられながら、チハルがたどり着いたのは彼女のための私室。
とはいっても、二人用の共用部屋だ。
「こちらで制服に着替えられよ。すぐにまた、呼ぶので」
「はい、ありがとうございます」
チハルは案内した執事に深く礼をした後、部屋のドアを開けた。
「あ」
部屋には既に先客、彼女の他の主がいた。
到着がよほど早かったのか、もう軍服に着替えている。
コバルトブルーのベストとエメラルドグリーンのスカート。
細い首元を軽く結びあげる胸元のリボン飾り。
その下では金色のカフスがシャンデリアの光を受けて煌めく。
ブーツは艶が際立つほどに磨かれ、その上から上質なシルクのタイツが足のラインを細く浮かび上がらせている。
同性でさえ恍惚としてしまうその様相は、恐らく軍服のためだけではない。
それを着る者もまた、この厳しい審査をかいくぐったとだけあって、中々の美少女だった。
赤髪を動きやすく後ろにまとめ上げた、細面の顔。
腰元は滑らかにくびれ、すらりとした体のライン。
「あなたがこの部屋の子?」
「はい、チハルです」
「変わった名前ね。私はアンリ・・・・・・あ、もしかして貴族の方?」
「違いますよ。田舎の武器屋が実家です」
「・・・・・・よかったぁ」
アンリはほっと胸を撫で下ろした。
「いや、ここって、貴族の出身の人が多いって言うし、それにあなた、凄く美人だから」
「そんな。私なんかこんな髪と眼の色で」
「そんなことないよ。神秘的な感じがして凄く素敵。ねえ、チハルって呼んでもいい?」
「構いませんよ。私もアンリでいいですか? えっと」
「改めて自己紹介するわね。アンリ=リザルファー。えっと、ただの町娘かな?」
こうしてチハルは人生で初めて、同年代同性の友人を得たのだった。
~愛は、それを阻む者への憎しみ~
――エリー=ミルドレット
赤絨毯が延々と続いている。
時折現れる鎧にはっとさせられながら、チハルがたどり着いたのは彼女のための私室。
とはいっても、二人用の共用部屋だ。
「こちらで制服に着替えられよ。すぐにまた、呼ぶので」
「はい、ありがとうございます」
チハルは案内した執事に深く礼をした後、部屋のドアを開けた。
「あ」
部屋には既に先客、彼女の他の主がいた。
到着がよほど早かったのか、もう軍服に着替えている。
コバルトブルーのベストとエメラルドグリーンのスカート。
細い首元を軽く結びあげる胸元のリボン飾り。
その下では金色のカフスがシャンデリアの光を受けて煌めく。
ブーツは艶が際立つほどに磨かれ、その上から上質なシルクのタイツが足のラインを細く浮かび上がらせている。
同性でさえ恍惚としてしまうその様相は、恐らく軍服のためだけではない。
それを着る者もまた、この厳しい審査をかいくぐったとだけあって、中々の美少女だった。
赤髪を動きやすく後ろにまとめ上げた、細面の顔。
腰元は滑らかにくびれ、すらりとした体のライン。
「あなたがこの部屋の子?」
「はい、チハルです」
「変わった名前ね。私はアンリ・・・・・・あ、もしかして貴族の方?」
「違いますよ。田舎の武器屋が実家です」
「・・・・・・よかったぁ」
アンリはほっと胸を撫で下ろした。
「いや、ここって、貴族の出身の人が多いって言うし、それにあなた、凄く美人だから」
「そんな。私なんかこんな髪と眼の色で」
「そんなことないよ。神秘的な感じがして凄く素敵。ねえ、チハルって呼んでもいい?」
「構いませんよ。私もアンリでいいですか? えっと」
「改めて自己紹介するわね。アンリ=リザルファー。えっと、ただの町娘かな?」
こうしてチハルは人生で初めて、同年代同性の友人を得たのだった。
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