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序章: The god for someone is present

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「チハル、これを持っていけ」
 出立の朝、父親から渡されたのは細長い包みだ。
「これは・・・・・・」
「お前が発案した武器だ。作るのに一番苦労させられたが、ようやく今朝完成したよ」
「父さん、まさか今日のために?」
「でもできれば、そいつを使わないことを祈るがな」
「でもありがとう。これで私、寂しくないよ」
「必ず、そいつと一緒に元気に帰ってくるんだぞ?」

 こうしてチハルは王都へ向けて旅に出た。
 王都で審査の結果、近衛兵に選ばれなければそれでよい。
 選ばれたとしても、これは出稼ぎのためだ。
 そして王都での審査。
 国中から同い年の少女が集められ、粛然と身辺調査、運動能力、識字力の検査を受ける。
 合格倍率は三百倍。
 受かった後を心配するのは何とおこがましいことだろう。
 そう思って真面目に受けなかったはずなのに、チハルの名前は近衛兵選抜者の中にあった。
 これで運命の岐路ははっきりした。

 極力他者との争いは避け、ただ地道に職務をこなしてお金を稼ぎ、家に帰ろう。
 そもそもこれは、自分にとってチャンスのはずなのだ。
 王国にしてみれば良い人材を得たということでると同時に、チハルにとってもまた、店の運営資金を稼ぐ絶好の機会のはずだ。
 どんな状況においても、神はいるものだ。それが誰にとっての神かは別として。
 別段、誰かと戦う必要も、張り合う必要もない。
 それでも争いが避けられない時は、その時は力づくで訴えるしかあるまい。
 でもそれは、あくまで最後の手段だ。
 特殊スキルと武器屋の経験があるチハルは恐らく最強で、実力行使に出れば間違いなく楽勝。
 しかし、そのことが無用の争いを引き寄せてしまうかもしれない。
 それが彼女の見透かす道のりだった。
 この後の現実からすれば、とてもとても平坦な、楽観的すぎるほど平坦な道のりだった。
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