武器屋の看板娘に転生したつもりでしたが、図らずも最強の剣士として戦うことになりそうです

序章: The god for someone is present

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　特殊スキル、＜アクチュライズ＞。

　それは思い描いた通りの行動を現実化する能力。
　例えばジャグリングをする自分を思い描けば、実際に曲芸師と同じように棒でもナイフでも投げることができて、馬を駆る姿を思い描けば、何があっても落馬することはない。
　チハルはそのスキルを使って、店が用意するあらゆる武器を扱うことができる。
　どんなに重い武器でも、それを軽々と扱う自分さえ想像できれば、熟練者と同じ域に達することができるのだ。
　肝心なのは、その姿を明確に思い描くこと。
　例えばアクチュライズのスキルを使って空を飛んだり、瞬間移動をしようと思っても上手く行かない。
　日常の感覚からあまりに乖離した行動は、明確に思い描くことはできないからだ。
　故に武器を使うにしても、それを正しく扱う自分の姿をまず知らなければならない。
　鍛冶職人の娘に過ぎないチハルになぜそれが可能なのか。
　それは彼女には特殊な職業だった前世の記憶があるからだ。
　ゲームクリエーターとして、キャラクターが装備する武器のデザインを考案する際、文献やオンライン情報から膨大な知識をため込んでいた。
　雑学から武器の細かい握り方まで、歴史学者にも遜色ない知識を学び、それをCG世界に再現する。
　もちろんのゲームのための仕事だから、剣、槍、弓のような大雑把な種類で武器を分類すればよいわけではない。
　剣ならば長剣と短剣、長剣ならば両手剣と片手剣、両手剣ならばロングソードとクレイモア、古今東西、ありとあらゆる武器を研究して数万種類にも及ぶアイテムのレパートリーを用意する必要がある。
　特にスタンドアロンのゲームからMMO型のソーシャルゲームが主流になったことで、アイテムでもキャラクターでも二十年前とは比べ物にならない数を用意しなければならない。
　そんな途轍もない知力と体力の要る世界で働き、転生のきっかけを作ってしまったのも事実だが、それが現世で最大限に活躍してくれるのだから文句はない。
　転生前の記憶と、転生時に授かったスキルと、転生後の親の職業。
　その全てが奇跡的なマリアージュを生み、今の看板娘、チハルが存在しているのだ。