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序章: The god for someone is present
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<The god for someone is present.>
~神は存在する。誰にとっての神かは別として~
――チハル = クレーヒル
その武器屋には多くの人が訪れた。
王都から遠く離れようが、店主が無名の鍛冶職人だろうが、そんなことは関係ない。
昼夜を通して入れ替わり立ち替わり、傭兵稼業やら狩人やら、あるいは旅の武芸者までが顔を見せる。
その度に店内には、明るい透き通るような少女の声が響く。
「いらっしゃいませ~」
「新しい剣を買いに来たんだけど」
「片手剣ですか? 両手剣ですか?」
「うん、出来れば両手持ちの方を」
「それでしたらこちらのツーハンデッド・ソードはどうでしょう?」
ほぼ身の丈に匹敵する武骨な大剣を、華奢な少女の腕が持ち上げた。
客は唖然としているが、少女の表情に無理をする様子はない。
「どうです? 柄とは別に両手で握るためのグリップが刀身に施されているんですよ」
「そうか。ちょっと持ってみていいかな?」
「はい。重いのでお気をつけて」
少女は剣を返し、客に柄を差し出した。
客が剣を握り、少女の手が離れた瞬間、店内に大きな物音がした。
「お客さん? 大丈夫ですか?」
客は剣を持ちきれず、大剣は床に転がっていた。
「だ、大丈夫だけど・・・・・・この剣、重すぎない?」
「そうですか?」
少女は落ちていた剣を軽々と持ち上げ、棚に戻した。
その様子を、客は目を丸くして眺めている。
「では片手剣の方がよろしいかと」
振り返った少女はさっきよりも小ぶりの剣を持ち替えていた。
客は慎重にそれを受け取って、数回振るう。
「じゃあ、これで」
「毎度、ありがとうございま~す」
この店の人気の源、看板娘チハル=クレーヒルの快活な笑顔が、用を済ませた客を見送った。
~神は存在する。誰にとっての神かは別として~
――チハル = クレーヒル
その武器屋には多くの人が訪れた。
王都から遠く離れようが、店主が無名の鍛冶職人だろうが、そんなことは関係ない。
昼夜を通して入れ替わり立ち替わり、傭兵稼業やら狩人やら、あるいは旅の武芸者までが顔を見せる。
その度に店内には、明るい透き通るような少女の声が響く。
「いらっしゃいませ~」
「新しい剣を買いに来たんだけど」
「片手剣ですか? 両手剣ですか?」
「うん、出来れば両手持ちの方を」
「それでしたらこちらのツーハンデッド・ソードはどうでしょう?」
ほぼ身の丈に匹敵する武骨な大剣を、華奢な少女の腕が持ち上げた。
客は唖然としているが、少女の表情に無理をする様子はない。
「どうです? 柄とは別に両手で握るためのグリップが刀身に施されているんですよ」
「そうか。ちょっと持ってみていいかな?」
「はい。重いのでお気をつけて」
少女は剣を返し、客に柄を差し出した。
客が剣を握り、少女の手が離れた瞬間、店内に大きな物音がした。
「お客さん? 大丈夫ですか?」
客は剣を持ちきれず、大剣は床に転がっていた。
「だ、大丈夫だけど・・・・・・この剣、重すぎない?」
「そうですか?」
少女は落ちていた剣を軽々と持ち上げ、棚に戻した。
その様子を、客は目を丸くして眺めている。
「では片手剣の方がよろしいかと」
振り返った少女はさっきよりも小ぶりの剣を持ち替えていた。
客は慎重にそれを受け取って、数回振るう。
「じゃあ、これで」
「毎度、ありがとうございま~す」
この店の人気の源、看板娘チハル=クレーヒルの快活な笑顔が、用を済ませた客を見送った。
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