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近未来スカベンジャーアスカ編
第37話 美しいという事
しおりを挟む「いつまで追ってくるんですか? 貴女のストーカーは」
「地獄の果てまで?」
現れた巨大なブッチャーは一部体が崩れ、色が変わっていた。
金属部分に比べるとやはり生体パーツは脆いようで、男の顔だった物はただの頭蓋骨になっている。
頭蓋骨を被った銀色の巨体。
黒色とむき出しの筋肉が主だった時と比べればまだ見られる見た目だ。
「ほら、おしゃれまでしてきてますよ」
「面食いだから骸骨はパス。 で、詳しい変化は?」
「生体パーツを捨てたおかげで力や耐久力の向上と、金属部分を構成する金属もゴールドラッシュ特有のレアメタルになっています。 並の銃弾は通らず、レーザーでも融点に達するかわかりません」
「要するに戦うなって事?」
「そうですね」
巨体なブッチャーは発声器官を失っているにも関わらず頭蓋骨をカタカタと揺らし、アスカたちに向けて何かを言ってくる。
ようやく動きが止まろうかと言うその時、ポラリスのライフルがその頭蓋骨を撃ち抜いた。
「時間の無駄です。 あいにく、急いでいるので」
それが逆鱗に触れたのか、ブッチャーは両腕を振り回しポラリスへと襲いかかる。
太い銀の腕から生えた鋭いパーツがポラリスの服を掠め削り取っていく。
その触れただけでバラバラになりそうな攻撃の嵐に、アスカは急いで距離を取った。
ポラリスは全てをギリギリの所で躱している。
触れれば終わりの一撃も当たらなければ意味が無い。
涼しい顔は崩れず、着々と逆転への準備を進めていた。
肘、膝、腰。
巨体を支える関節部へとグレネードランチャーから抜き出した弾を差していく。
様々な部品を取り込み歪になった体にはいくらでも差し込めそうな穴がある。
五つを差し終えた時、ポラリスはわざと動きを止めた。
ようやく巡ってきたチャンスにブッチャーは両手を上げ、ハンマーのように振り下ろした。
「知能の強化が先でしょうに」
あっさりとそれを躱したポラリスはグレネードランチャーに残った最後の弾を撃ち出す。
ブッチャーへと炸裂したそれは、辺りから熱という熱を奪った。
凍結弾が関節部を凍らせ、ブッチャーの体から自由を奪う。
余計ぎこちなくなった動きでポラリスの方を見た時には、すでにその関節部へとポラリスの蹴りが突き刺さっていた。
グシャッという凄まじい衝突音と共にブッチャーの関節部がひしゃげる。
そこから先があらぬ方向を向く。
膝の関節をやられ巨体を支えきれなくなったブッチャーが倒れると、ポラリスは残る関節も同じように破壊していった。
両腕両膝、腰を失ったブッチャーは、ただもがくだけになっている。
アスカがこれで終わりかと安堵した時、ポラリスは後ろに飛び退き大きく距離を取った。
「アスカ、離れて!」
「えっ?」
疑問を口にしながらもアスカの体は反射的に飛び退いていた。
直後、ブッチャーの関節部分から共生生物が触手を伸ばした。
辺りに積み重なるブッチャーの死体へと伸びたそれは、部品を引き千切り取り込んでいく。
美しさなど関係なくただ補修しただけのそれは、歪さを増して不気味にすら見える。
動けば良いという機械的なその修理が、ポラリスの逆鱗に触れた。
「知能を持った機械がこの体たらくとは。 どうやら私が処分すべき相手だったようですね」
グレネードランチャーを捨てライフルを構えると、バレルが焼き切れるまで撃ち尽くす。
関節部から姿を現した共生生物はレーザーの熱により失活し、繋ぎとめていたパーツを離す。
立ち上がろうとしていたブッチャーが姿勢を崩すと、ポラリスはすかさず新たなライフルを拾いブッチャーの胸へと集中砲火を浴びせた。
男たちのおかげで武器ならいくらでもある。
両手に構えたライフルのバレルが真っ赤に染まり、鉄の焼けた匂いが立ち込める。
やがて排莢口が詰まり触媒の装填が行われなくなると、ポラリスはブッチャーの胸に開いた穴へと焼夷弾ごと右手を突き刺した。
ピンを抜き、手を引き抜く。
どうにか捕まえようと絡みつく共生生物をいともせず「いつまで追ってくるんですか? 貴女のストーカーは」
「地獄の果てまで?」
現れた巨大なブッチャーは一部体が崩れ、色が変わっていた。
金属部分に比べるとやはり生体パーツは脆いようで、男の顔だった物はただの頭蓋骨になっている。
頭蓋骨を被った銀色の巨体。
黒色とむき出しの筋肉が主だった時と比べればまだ見られる見た目だ。
「ほら、おしゃれまでしてきてますよ」
「面食いだから骸骨はパス。 で、詳しい変化は?」
「生体パーツを捨てたおかげで力や耐久力の向上と、金属部分を構成する金属もゴールドラッシュ特有のレアメタルになっています。 並の銃弾は通らず、レーザーでも融点に達するかわかりません」
「要するに戦うなって事?」
「そうですね」
巨体なブッチャーは発声器官を失っているにも関わらず頭蓋骨をカタカタと揺らし、アスカたちに向けて何かを言ってくる。
ようやく動きが止まろうかと言うその時、ポラリスのライフルがその頭蓋骨を撃ち抜いた。
「時間の無駄です。 あいにく、急いでいるので」
それが逆鱗に触れたのか、ブッチャーは両腕を振り回しポラリスへと襲いかかる。
太い銀の腕から生えた鋭いパーツがポラリスの服を掠め削り取っていく。
その触れただけでバラバラになりそうな攻撃の嵐に、アスカは急いで距離を取った。
ポラリスは全てをギリギリの所で躱している。
触れれば終わりの一撃も当たらなければ意味が無い。
涼しい顔は崩れず、着々と逆転への準備を進めていた。
肘、膝、腰。
巨体を支える関節部へとグレネードランチャーから抜き出した弾を差していく。
様々な部品を取り込み歪になった体にはいくらでも差し込めそうな穴がある。
五つを差し終えた時、ポラリスはわざと動きを止めた。
ようやく巡ってきたチャンスにブッチャーは両手を上げ、ハンマーのように振り下ろした。
「知能の強化が先でしょうに」
あっさりとそれを躱したポラリスはグレネードランチャーに残った最後の弾を撃ち出す。
ブッチャーへと炸裂したそれは、辺りから熱という熱を奪った。
凍結弾が関節部を凍らせ、ブッチャーの体から自由を奪う。
余計ぎこちなくなった動きでポラリスの方を見た時には、すでにその関節部へとポラリスの蹴りが突き刺さっていた。
グシャッという凄まじい衝突音と共にブッチャーの関節部がひしゃげる。
そこから先があらぬ方向を向く。
膝の関節をやられ巨体を支えきれなくなったブッチャーが倒れると、ポラリスは残る関節も同じように破壊していった。
両腕両膝、腰を失ったブッチャーは、ただもがくだけになっている。
アスカがこれで終わりかと安堵した時、ポラリスは後ろに飛び退き大きく距離を取った。
「アスカ、離れて!」
「えっ?」
疑問を口にしながらもアスカの体は反射的に飛び退いていた。
直後、ブッチャーの関節部分から共生生物が触手を伸ばした。
辺りに積み重なるブッチャーの死体へと伸びたそれは、部品を引き千切り取り込んでいく。
美しさなど関係なくただ補修しただけのそれは、歪さを増して不気味にすら見える。
動けば良いという機械的なその修理が、ポラリスの逆鱗に触れた。
「知能を持った機械がこの体たらくとは。 どうやら私が処分すべき相手だったようですね」
グレネードランチャーを捨てライフルを構えると、バレルが焼き切れるまで撃ち尽くす。
関節部から姿を現した共生生物はレーザーの熱により失活し、繋ぎとめていたパーツを離す。
立ち上がろうとしていたブッチャーが姿勢を崩すと、ポラリスはすかさず新たなライフルを拾いブッチャーの胸へと集中砲火を浴びせた。
男たちのおかげで武器ならいくらでもある。
両手に構えたライフルのバレルが真っ赤に染まり、鉄の焼けた匂いが立ち込める。
やがて排莢口が詰まり触媒の装填が行われなくなると、ポラリスはブッチャーの胸に開いた穴へと焼夷弾ごと右手を突き刺した。
ピンを抜き、手を引き抜く。
どうにか捕まえようと絡みつく共生生物を引きちぎり、蹴りと共に離脱する。
ポラリスが離れた直後、ブッチャーの体から灼熱の炎が噴き上がった。
胸から各関節部へと炎が伝い、全身を真紅に染めている。
共生生物が蒸発した事で上半身の身となっているが、ブッチャーはそれでも動き続けた。
赤熱した体は恐るべき熱さになっており、這った後は石ですらも溶けている。
顔を背けたくなるようなその熱さを前にしても、ポラリスはまだ涼しい顔をしていた。
「アスカ、急激に冷やされた金属に力を加えるとどうなるか、知っていますか?」
ポラリスは凍結弾のピンを抜き、ブッチャーへと放った。
カシュッという小さな音を立て、中の薬剤がブッチャーの体を包む。
白く霞んだ空気の奥で、影となったブッチャーはバラバラに分解されていた。
「多くはこのように割れたり折れたり。 美しくない物は脆いのです」
霧が晴れ、ブッチャーの姿が鮮明に見えてくる。
パーツ単位に分解されてなお動き続けるその姿は、ポラリスの言う通りとても醜い物だった。
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