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異世界転生者マリー編

第32話 油断

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 マリーが後ろを振り返ると、そこには不気味な男が立っていた。
 薄汚いローブのみを身に纏ったずぶ濡れの男。
 フードの下で薄ら笑いを浮かべ、舐め回すような視線をマリーへと向けている。
 その青白い肌の下では、触手のような何かが蠢いていた。
 男性陣に興味が無いのか、大剣を構えて踏み込んだバーミリオンも、下方から迫るシルバーの姿も見ていない。
 その目はただ一点、マリーだけを見据えている。
 シルバーの剣が男の体を逆袈裟に両断すると、ずれた体をバーミリオンの一撃が薙ぎ払った。
 横薙ぎに振るわれた大剣は男の体を壁の染みに変える。
 しかし、おかしいのはその色だ。
 普通であれば赤く染まるはずの壁には、無色透明な粘り気のある液体が張り付いている。
 男のローブが床に落ちると、その中から傷一つ無い男の姿が現れた。
 まるで手品のようなその出来事に一瞬、時間が止まる。
 目に見えない速度で振るわれた触手の一撃を、マリーの剣が防いでいた。

 「こいつは私が相手をします! シルバーさんとバーミリオンさんは中に!」

 バーミリオンの頬には傷が出来ている。
 顔の中心を狙った触手の突きをマリーが弾き、何とか直撃は免れた。
 もしあの触手が当たっていれば、バーミリオンは頭の中身を壁にぶち撒けていただろう。
 その速度に反応できたのはマリーとシアンだけであり、シルバーすら辛うじて軌道を追えただけだった。
 
 「わかった。 そいつの相手は任せる」

 シルバーは自分とバーミリオンが足手まといにしかならないと判断し、ミドリを追って排水管へと入っていく。
 シルバーとバーミリオンの体が排水管の闇へと消えていくまでの間、マリーとシアンは数十回の攻撃を防いでいた。

 「酒の肴に良さそうだが、縛られてちゃなぁ。 なぁニュートよ、解いてくれたら加勢するぜ?」
 「黙れ。 口の軽い奴は死ね」
 
 混乱に乗じてニュートへと近づいたグリズリーだったが、その額に向けて触手を放たれている。
 グリズリーはそれを難なく躱すと、残念そうな顔でその場に座った。
 
 「俺の相手をしてて良かったのかね。 そのお嬢ちゃん、あんたが思ってる数倍はやり手だぞ?」

 グリズリーの言う通り、マリーはその隙を見逃さなかった。
 触手による攻撃がニュートの口から放たれている事を見抜くと、首元へと一閃。
 マリーの剣は何の抵抗も無くその首を通り抜ける。
 その事にニュートが気付いた時には、頭の上に地面があった。

 「な……」

 何かを言いかけたニュートの頭が、シアンの槍の石突によって潰される。
 ぐちゃっと嫌な音を立てて、ニュートの頭は崩れ落ちた。
 崩れた頭は透明な水たまりに姿を変え、ぷるぷると震えている。
 残された体も透明な液体へと変化していき、お互いを目掛けて這い寄っていた。
 
 「惜しい! そいつが普通の人間だったら決着だったな!」

 楽しそうに戦いを眺めるグリズリーの目の前で、スライムはまた男の姿に戻っていく。
 ローブの中から男の体が生えると、首に手を置き何度か傾けていた。
 
 「久々に首を取られたな…… 確かになかなかやるようだ」
 
 男の姿の時は声も動きも人そのもので、まさかその体がスライムで出来ているとは思えない。
 スライムに対して有効打を持たないマリーとシアンは攻めあぐねていた。
 素早い触手の攻撃にも目が慣れ、難なく躱し、弾けている。
 しかし反撃を繰り出そうにもただスライムへと戻るだけで、意味があるようには思えない。
 しばらくの間攻防を繰り返していると、マリーは一つの事を思い出した。
 ニュートはスライムに頭を呑み込まれ、苦しんでいた。
 もしあれが演技ならそこまでだが、ダメージを与えられるとしたらそれしかない。
 マリーは触手の攻撃を掻い潜るとまたもニュートの首をはね飛ばし、それを抱えたまま水の中へと飛び込んだ。
 
 「マリー!」

 突然のマリーの行動にシアンが驚いた声を上げる。
 頭を失ったニュートの体はそれでも動いており、斬られた断面から絶えず触手を伸ばしてくる。
 シアンはそれを防ぐのに精一杯であり、マリーを助けに行く事が出来ない。
 生暖かく生臭い水の中で、マリーはニュートの首が笑っているのを見た。
 切断面から伸びた触手がマリーの体へと伸び、手足へと絡みつくと体中を弄り始める。
 どうやらマリーの思惑は外れたらしい。
 触手が這い回るおぞましい感覚にマリーは体を震わせて拒否感を表したが、ニュートはそんな事お構いなしにその触手を伸ばしていく。
 男の狙いはマリーの穴という穴だった。
 口、秘部、肛門。
 体内に侵入するつもりなのか、マリーの服を懸命にずらしている。
 抵抗するマリーの首へと触手が巻かれ呼吸が出来なくなる。
 苦しさに耐えかね口を開いたその瞬間を狙うのだろう。
 ついにマリーの下半身が露わになり、両穴へと触手が添えられる。
 マリーの首は強い力によってメキメキと音を立てている。
 絶体絶命なそんな時、突然ニュートの顔が苦悶の表情へと変わった。
 体中を這っていた触手が解け、消えていく。
 開放されるや否や、マリーは水上へと飛び出した。

 「がはっ…… うぉえ……」

 もがいている間、鼻から随分と水を吸ってしまった。
 鼻の奥がキーンとする感覚と強い生臭さがマリーを襲う。
 マリーは涙目になりながら水を吐き出していた。
 あたりを見回すと、そこにはニュートの体に槍を突き立てるシアンの姿があった。
 
 「な、スライム男だってスライムはスライムだ。 スライム相手なら核を狙うのが常套だろう?」
 
 策を思いついたのか初めから知っていたのか、グリズリーは得意げな顔で手を叩いて喜んでいる。
 シアンはバツが悪そうな顔をして、突き刺さっていた槍を引き抜いた。
 直後、ニュートの体が液体となって下水と混ざる。
 その液体の中には細かく砕けた赤い破片が交じっていた。
 地面に膝をつき、苦しそうに息をしているマリーへとシアンの手が伸びる。
 マリーはその手を取ると、ゆっくりと立ち上がった。
 
 「お嬢ちゃん良い表情だな。 ガキは趣味じゃないんだがそそられた、ヤらしてくれたら手伝ってやってもいいぜ」

 にやりと嫌な笑いを浮かべ、グリズリーは平然とそう言ってのけた。
 怒りと嫌悪感の混じったどす黒い感情がマリーを満たす。
 グリズリーを両断しようと剣を振りかぶったその時、マリーの体はグリズリーにより抱きしめられていた。
 いつの間に拘束を解いたのか、グリズリーの背後にはロープが落ちている。
 急いで助けに来ようとしたシアンを、グリズリーは視線だけで制していた。
 
 「お嬢ちゃんは力は強いが体の耐久度はそうでも無い。 俺が本気で力を入れたら…… わかるな?」
 「くっ……」

 シアンは槍を構えたまま、グリズリーから距離を取った。
 殺気に駆られたマリーは冷静さを失っており、グリズリーの動きに反応する事が出来なかった。
 これは完全にマリーの油断であり、失敗だ。
 マリーの体は万力のような力で締められており、両手をあげた姿勢で拘束されたマリーは剣を振り下ろす事が出来ない。
 背中がミシミシと音を立て、後ろに反っていく。
 
 「ああああっ!」

 ついには痛みに耐えかねて、苦しそうな悲鳴をあげた。

 「剣を捨てたら優しくしてやるよ。 じゃなきゃ大人しくさせてから犯すかね」
 
 男の言葉を聞いたからか限界を迎えたからか、マリーの体はその意思に反して剣を落としてしまう。
 床へと転がった剣はカランと高い音を立てた。

 「シアン、お前はさっさと先に行きな。 俺はマリーと楽しんでから帰るとするよ」

 グリズリーは片手でマリーの体を抱き上げると、シアンへと見せつけるようにマリーの秘部を開いて見せた。
 シアンに選択肢は残っていない。
 グリズリーに言われるがまま排水管を上り、闇へと姿を消してしまった。
 ひとり残されたマリーは、グリズリーの腕の中で泣いていた。
 高速移動も捕まってしまえば意味が無く、弱った体には力が入らない。
 感触を確かめるように秘部をなぞる指から逃れる事すら出来ないのだ。
 グリズリーはマリーを仰向けに下ろすと、両手をロープできつく縛った。
 手首にはロープが食い込み、青くなっている。

 「馬鹿力で暴れられたら困るんでね。 動くなよ」
 
 どこで見つけたのか、グリズリーの手には尖った石が握られていた。
 恐らく、ロープもそれで切ったんだろう。
 マリーの革鎧と服を、グリズリーはその尖った石で難なく切り裂いていく。
 そうしてマリーの清らかな肢体が露わになると、下着を脱いでいきり立つ剛直を見せつけてきた。
 その大きさは凄まじく、秘部から胸の下あたりまで届いている。
 太さもマリーの腕くらいあり、マリーという獲物を前にして期待にビクビクと震えていた。
 先端から垂れる透明な液がマリーの体へと塗りたくられ、潤滑油となって前後運動を助けた。
 マリーの秘部を、お腹を、胸の間をグリズリーの剛直がなぞる。
 マリーはぐっと歯を噛み締めてその恥辱に耐えていた。
 
 「せいぜい耐えてくれよ。 並のやつじゃ耐えられないんだ」

 こぶし大の亀頭がマリーの秘部へと狙いを済ましたその時、背後からまたバチャンと水の音がした。

 「おいおいニュート、しつこい男は嫌われるって知らないのか?」
 「裏切り者を生かしておくと思うか? その女もろとも死んでくれ」

 マリーの頭からグリズリーの腰までを串刺しにしようとしたニュートの触手が空を切る。
 グリズリーはマリーの体を抱きかかえたまま、排水管とは別の方向ヘと走り出した。
 
 「核がダメなら打つ手なしだ。 素直に逃げるぜ」
 「おい、待て!」

 グリズリーは巨大に似合わぬスピードで地下を駆け抜け、ニュートの触手の届かない位置まで逃げ切った。
 どこに居るのかはわからないが、その下水の濁り具合から白城から離れてしまった事が伺える。
 はぁはぁと荒い息を吐くグリズリー目掛け、マリーは渾身の頭突きを放った。

 「いってぇ!」
 
 グリズリーは目に涙を浮かべて痛がると、マリーの体を放した。
 目の間を狙った一撃は激しい痛みと涙をもたらし、大男であろうと悶える程だ。
 グリズリーが涙で塞がった視界に戸惑っている間に、マリーは高速移動でどこかへと消えていく。
 グリズリーの視界がようやく戻った頃には、もうすっかりマリーの姿は無くなっていた。

 「あーぁ、せっかくの上物が」

 グリズリーは頭をぽりぽりとかいて悔しがると、宛もなく周りを歩き始めた。

 
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