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オカルトハンター渚編
第23話 渚の欲望
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観光ホテルへと戻ったふたりは、チャペルに残された行雄を救うべく廊下のあった壁を調べていた。
完全に塞がれてしまったのか壁に怪しい部分は無く、再び廊下が開く気配も無い。
ふたりがどれだけその場所をイメージしようともチャペルはおろか廊下すら姿を現さず、ただただ時間だけが過ぎていく。
お互い顔を見合わせて悩んでいると、ルカが覚悟を決めた顔で大きく頷いた。
その姿から何か方法が浮かんだのはわかるが、よほど危険な事なのだろう。
ルカの真剣な表情に渚は不安が募っていく。
行雄を救いたいのは本心だが、もしルカと行雄のどちらかを選ぶとしたら間違いなくルカを選ぶ。
ここに来るまで好き勝手してきたであろう行雄のためにルカが危険を冒すなら、その程度を見て止めなくてはならない。
渚も密かに決意を固め、ルカの方へと強い視線を送った。
「可能性があるとしたら、あいつと同調するのが一番だと思います」
「ルカへの影響は?」
「同調度にもよりますけど、一時的に思考が重なってあいつと同じような行動を取ったり、同じような感情を抱く可能性がありますね」
ルカの言葉に、渚は不快感を隠せない。
あんな奴とルカが同調するなんて。
ルカの中にあいつの一部が入るかと思うと、それだけで底知れぬ怒りが込み上げてくる。
怖くなった渚の顔にルカは嬉しくなり、ふっと笑みを浮かべる。
自分の事を本気で心配してくれて、守ろうとしてくれているという事実がルカを勇気づける。
渚に霊感があろうとなかろうと、ルカにはそれだけで十分だった。
「本気でやばそうだったら止めてください。 渚さんの声ならきっと届くので」
ルカのその笑顔を見て、渚は諦めたように笑顔を返した。
ルカの決意は渚が思っているより硬いようで、笑顔でありながらその目には強い意志が感じられる。
きっとどれだけ言ってもルカは折れず、あらゆる手段をもって行雄を救うだろう。
本当ならそんなやつ放っておいて、ふたりで脱出を目指すのが正解のはずだ。
しかし、ルカはルカだ。
論理的な、安全な選択を捨て、今後の自分に汚点を残さないためにも、感情に従った危険な選択肢をあえて選ぶ。
この村に来てからより強まった、遥としてではないルカとしての選択が今のルカを動かしていた。
そんなルカに渚は頷いて意思表示をし、ルカは目を閉じ静かに精神を集中させていく。
無音のエントランスは静寂が耳に刺さるようで、音がしないのが返って渚の不安を煽っていた。
もし今幽霊が近づいているとしたら、自分には気付けるのだろうか。
最終局面とも言えるこの状況にありながら、渚は自身の能力不足に奥歯を噛み締めていた。
しばらくエントランスの中央で立ち尽くしていると、ルカの様子が変わった。
目を閉じたままはぁはぁと呼吸が荒くなり、スカートの端を掴んでいる。
肌が上気するその様子からも、その体を快感が襲っているのだろうと想像できた。
行雄が自らの欲望のみに従って行動していたのであれば、それに同調するルカは同じ欲望を抱くのだろうか。
それとも、その欲望を受けてしまうのだろうか。
行雄に抱かれるルカの姿なんて想像したくもない。
渚の中に暗い願望が渦巻いていく。
ルカへの愛が深いが故に生まれたその願望は、他のどの願望よりも強く純粋な物だ。
行雄の気配の他に別の物を感じ取ったルカは、はっとその目を開いた。
眼前には渚が迫り、真剣な目をしている。
あまりに真剣すぎて、ルカは綺麗だなと思いながらも少しだけ恐怖を感じていた。
そして、両腕を抱きかかえるようにして抱きしめられてしまった。
その力はとても強く、痛みを感じてしまうほど。
微かに感じていた恐怖が強くなり、ルカは異常に気がついた。
エントランスから見える二階部分。
そこに幽霊たちが並び、こちらを観察するように眺めている。
虚ろな目をこちらへと向けながら、何をするでも無くじっと見ている。
目的のわからない霊たちの行動に困惑していると、渚の唇がルカを襲った。
「んんっ!?」
突然の出来事にルカは声を上げる。
いつもの、優しく蕩けるようなキスとは違う。
困惑するルカの口内へと乱暴に舌が挿し込まれ、口全体を覆うかのように強く唇を押し付けられる。
その粗暴とも取れるキスを受けて、ルカは一瞬の内に何も考えられなくなってしまう。
行雄と同調した事によりルカの中へと流れ込んできた、女性を支配したいという歪められた願望。
そして、渚が抱いてしまったルカをひとり占めしたいという新たな願望がルカを襲う。
ふたり分の願望をその身に受けて、ルカの体は呆気なく限界を迎えていた。
行雄の願望は支配すべき対象であるルカへと支配される事が快感であるという思考を植え付け、渚の願望が他の誰にも奪われぬようルカの頭と体を縛っていく。
ふたつの願望はまるで元々ひとつであったかのように絡み合い、渚に支配される事が何よりも幸せだとルカに教え込んでいく。
これまでの行為の中で上下関係を刻み込まれたルカには抗えるはずもない。
ルカは蕩けきった顔で渚へと全てを委ね、その温かな快楽へとその身を沈めた。
エントランスの中にぴちゃぴちゃという水音が響く。
その中央で渚とルカは情熱的なキスを交わし、ふたりだけの世界を形成していた。
新たな願望に釣られてやって来た霊たちも干渉する事は出来ない。
渚の願望はルカの独占であり、その強さからもはや何者も近づく事は許されない。
真っ白になったルカの頭は渚から与えられる快楽に染まり、その願望を実現させていく。
ついにその体がエントランスの床へと倒されると、渚の口が糸を引きながら離れていった。
「ルカがいけないんだよ? あんな奴のために体を張るから」
強く抱きしめられながら耳元で囁かれ、ルカの体はそれだけでびくんと跳ねてしまう。
一文字一文字が脳へと深く刻まれるように、渚の声が耳から染み込んでくる。
今のルカにはそれすら身を焦がす快感で、だらしなく開ききった口を閉じる事すら出来ない。
「謝って? あんな奴の事を考えてごめんなさい、って。 もう渚さんの事しか考えません、って」
「渚さ……ん……」
渚の声が、体温が、その感触がルカを満たす。
もう頭の中は渚の事でいっぱいで、他の全ては消えてしまった。
今どこに居るのか、外は暑いのか寒いのか、今はいつなのか。
もうルカには何もわからない。
「あんな奴の事を考えてごめんなさい……もう渚さんの事しか考えません……」
ルカは言われた言葉を一字一句間違わず、そのまま復唱した。
その言葉は呪いのようにルカの体へと浸透し、心をより強く縛っていく。
自ら口にした事で、その言葉は制約となって自らを強く、強く縛り上げていく。
弱々しいルカの声に渚は歓喜でその身を震わせ、優しく蕩けるようなキスを贈った。
言う事を守る良い子にはご褒美をあげないといけない。
これまでのキスとは違う、舌を優しく包み込むような舌遣いで快感を与え、口全体を舐め回すようにして誰の物かを教え込む。
ルカへと甘い唾液を流し込み、中から自分の物へと染め上げる。
その刺激はルカの思考力をさらに削ぎ落とし、自らがそう宣言したように頭の中を渚でいっぱいに染めていく。
頭と体を同時に染め上げられたルカは、もう完全に渚の物へと堕ちていた。
「続きはお風呂でしよっか、お風呂でするの好きでしょ?」
渚の甘い誘惑に、抗う事など当然出来ない。
ルカはひょいと抱き上げられると、そのまま浴場へと連れ去られてしまった。
エントランスの霊たちはその後を追い、浴場へと殺到する。
どれだけ集まろうと生気のひとつすら与えられないが、蛍光灯に集まる虫のように、霊たちは惹かれるままに集まっていた。
完全に塞がれてしまったのか壁に怪しい部分は無く、再び廊下が開く気配も無い。
ふたりがどれだけその場所をイメージしようともチャペルはおろか廊下すら姿を現さず、ただただ時間だけが過ぎていく。
お互い顔を見合わせて悩んでいると、ルカが覚悟を決めた顔で大きく頷いた。
その姿から何か方法が浮かんだのはわかるが、よほど危険な事なのだろう。
ルカの真剣な表情に渚は不安が募っていく。
行雄を救いたいのは本心だが、もしルカと行雄のどちらかを選ぶとしたら間違いなくルカを選ぶ。
ここに来るまで好き勝手してきたであろう行雄のためにルカが危険を冒すなら、その程度を見て止めなくてはならない。
渚も密かに決意を固め、ルカの方へと強い視線を送った。
「可能性があるとしたら、あいつと同調するのが一番だと思います」
「ルカへの影響は?」
「同調度にもよりますけど、一時的に思考が重なってあいつと同じような行動を取ったり、同じような感情を抱く可能性がありますね」
ルカの言葉に、渚は不快感を隠せない。
あんな奴とルカが同調するなんて。
ルカの中にあいつの一部が入るかと思うと、それだけで底知れぬ怒りが込み上げてくる。
怖くなった渚の顔にルカは嬉しくなり、ふっと笑みを浮かべる。
自分の事を本気で心配してくれて、守ろうとしてくれているという事実がルカを勇気づける。
渚に霊感があろうとなかろうと、ルカにはそれだけで十分だった。
「本気でやばそうだったら止めてください。 渚さんの声ならきっと届くので」
ルカのその笑顔を見て、渚は諦めたように笑顔を返した。
ルカの決意は渚が思っているより硬いようで、笑顔でありながらその目には強い意志が感じられる。
きっとどれだけ言ってもルカは折れず、あらゆる手段をもって行雄を救うだろう。
本当ならそんなやつ放っておいて、ふたりで脱出を目指すのが正解のはずだ。
しかし、ルカはルカだ。
論理的な、安全な選択を捨て、今後の自分に汚点を残さないためにも、感情に従った危険な選択肢をあえて選ぶ。
この村に来てからより強まった、遥としてではないルカとしての選択が今のルカを動かしていた。
そんなルカに渚は頷いて意思表示をし、ルカは目を閉じ静かに精神を集中させていく。
無音のエントランスは静寂が耳に刺さるようで、音がしないのが返って渚の不安を煽っていた。
もし今幽霊が近づいているとしたら、自分には気付けるのだろうか。
最終局面とも言えるこの状況にありながら、渚は自身の能力不足に奥歯を噛み締めていた。
しばらくエントランスの中央で立ち尽くしていると、ルカの様子が変わった。
目を閉じたままはぁはぁと呼吸が荒くなり、スカートの端を掴んでいる。
肌が上気するその様子からも、その体を快感が襲っているのだろうと想像できた。
行雄が自らの欲望のみに従って行動していたのであれば、それに同調するルカは同じ欲望を抱くのだろうか。
それとも、その欲望を受けてしまうのだろうか。
行雄に抱かれるルカの姿なんて想像したくもない。
渚の中に暗い願望が渦巻いていく。
ルカへの愛が深いが故に生まれたその願望は、他のどの願望よりも強く純粋な物だ。
行雄の気配の他に別の物を感じ取ったルカは、はっとその目を開いた。
眼前には渚が迫り、真剣な目をしている。
あまりに真剣すぎて、ルカは綺麗だなと思いながらも少しだけ恐怖を感じていた。
そして、両腕を抱きかかえるようにして抱きしめられてしまった。
その力はとても強く、痛みを感じてしまうほど。
微かに感じていた恐怖が強くなり、ルカは異常に気がついた。
エントランスから見える二階部分。
そこに幽霊たちが並び、こちらを観察するように眺めている。
虚ろな目をこちらへと向けながら、何をするでも無くじっと見ている。
目的のわからない霊たちの行動に困惑していると、渚の唇がルカを襲った。
「んんっ!?」
突然の出来事にルカは声を上げる。
いつもの、優しく蕩けるようなキスとは違う。
困惑するルカの口内へと乱暴に舌が挿し込まれ、口全体を覆うかのように強く唇を押し付けられる。
その粗暴とも取れるキスを受けて、ルカは一瞬の内に何も考えられなくなってしまう。
行雄と同調した事によりルカの中へと流れ込んできた、女性を支配したいという歪められた願望。
そして、渚が抱いてしまったルカをひとり占めしたいという新たな願望がルカを襲う。
ふたり分の願望をその身に受けて、ルカの体は呆気なく限界を迎えていた。
行雄の願望は支配すべき対象であるルカへと支配される事が快感であるという思考を植え付け、渚の願望が他の誰にも奪われぬようルカの頭と体を縛っていく。
ふたつの願望はまるで元々ひとつであったかのように絡み合い、渚に支配される事が何よりも幸せだとルカに教え込んでいく。
これまでの行為の中で上下関係を刻み込まれたルカには抗えるはずもない。
ルカは蕩けきった顔で渚へと全てを委ね、その温かな快楽へとその身を沈めた。
エントランスの中にぴちゃぴちゃという水音が響く。
その中央で渚とルカは情熱的なキスを交わし、ふたりだけの世界を形成していた。
新たな願望に釣られてやって来た霊たちも干渉する事は出来ない。
渚の願望はルカの独占であり、その強さからもはや何者も近づく事は許されない。
真っ白になったルカの頭は渚から与えられる快楽に染まり、その願望を実現させていく。
ついにその体がエントランスの床へと倒されると、渚の口が糸を引きながら離れていった。
「ルカがいけないんだよ? あんな奴のために体を張るから」
強く抱きしめられながら耳元で囁かれ、ルカの体はそれだけでびくんと跳ねてしまう。
一文字一文字が脳へと深く刻まれるように、渚の声が耳から染み込んでくる。
今のルカにはそれすら身を焦がす快感で、だらしなく開ききった口を閉じる事すら出来ない。
「謝って? あんな奴の事を考えてごめんなさい、って。 もう渚さんの事しか考えません、って」
「渚さ……ん……」
渚の声が、体温が、その感触がルカを満たす。
もう頭の中は渚の事でいっぱいで、他の全ては消えてしまった。
今どこに居るのか、外は暑いのか寒いのか、今はいつなのか。
もうルカには何もわからない。
「あんな奴の事を考えてごめんなさい……もう渚さんの事しか考えません……」
ルカは言われた言葉を一字一句間違わず、そのまま復唱した。
その言葉は呪いのようにルカの体へと浸透し、心をより強く縛っていく。
自ら口にした事で、その言葉は制約となって自らを強く、強く縛り上げていく。
弱々しいルカの声に渚は歓喜でその身を震わせ、優しく蕩けるようなキスを贈った。
言う事を守る良い子にはご褒美をあげないといけない。
これまでのキスとは違う、舌を優しく包み込むような舌遣いで快感を与え、口全体を舐め回すようにして誰の物かを教え込む。
ルカへと甘い唾液を流し込み、中から自分の物へと染め上げる。
その刺激はルカの思考力をさらに削ぎ落とし、自らがそう宣言したように頭の中を渚でいっぱいに染めていく。
頭と体を同時に染め上げられたルカは、もう完全に渚の物へと堕ちていた。
「続きはお風呂でしよっか、お風呂でするの好きでしょ?」
渚の甘い誘惑に、抗う事など当然出来ない。
ルカはひょいと抱き上げられると、そのまま浴場へと連れ去られてしまった。
エントランスの霊たちはその後を追い、浴場へと殺到する。
どれだけ集まろうと生気のひとつすら与えられないが、蛍光灯に集まる虫のように、霊たちは惹かれるままに集まっていた。
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