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近未来スカベンジャーアスカ編
第10話 治療
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アスカは今までにない不思議な感情を抱いていた。
「あっ♡ いいですよ、アスカ……そう、そのまま先の方を……ぅぅん♡」
「気持ちいい? もう少し強くする?」
「はい、少しだけつねっ、てぇっ♡」
自らの愛撫に喘ぎ、甘えた声でおねだりするポラリス。
その涼しい顔は今や見る影もなく、貪欲に快感を求める痴女のようだ。
もっといじめたらどうなってしまうんだろう。
「んっ♡ 待って、今触られたら……ひぁぁぁぁぁぁ♡」
ポラリスの温かな蜜壺へと指を入れ、ひっかくように掻きだした。
痛みに対する耐性が高いポラリスならこんなに乱暴にしてもよがってくれる。
絶頂を迎え、腰を高く上げてがくがくと体を震わせるその姿に、アスカは確かに優越感を抱いていたのだ。
いつも軽口ばかり叩き、主人を主人とも思っていないポラリスが、遥かに弱いその主人の手で弄ばれている。
そう考えるだけで、アスカの中に暗い欲望がくすぶっていく。
「アス……カ?」
「ポラリス、マスターって呼んでよ。 そうしたらイかせてあげる」
突然止まったアスカの手に、ポラリスは不思議そうな顔をした。
イったばかりの蜜壺はひくつき、ポラリスの意思とは関係なくアスカの指を求めている。
止まっていても湧き上がる身を焦がすような情欲に、ポラリスは完全に支配されていた。
「マスター……イかせてください」
「良し、よく出来ました。 じゃあ好きなだけイって良いよ」
ポラリスの乳房を形が変わるほどにぎり、その先端をつねりながら、蜜壺へと入れた指を激しく前後させる。
その前後運動に合わせて自ら腰を振るポラリスはとても魅力的だ。
「あっ♡ イきますっ♡ もう……我慢がっ……イっくぅっ♡」
目を見開き、舌を突き出して腰をがくがくと震わせるポラリスの姿に、アスカは何かが満たされるのを感じた。
「どう、治まった?」
「はい、おかげさまで。 ですが、いつか仕返ししますので覚えておいてください」
「もうマスターはやめちゃったの?」
「貴女には泣くほどイってもらいますから」
階段に座って抱き合った姿勢のままふたりは話している。
口ではこんなことを言っているが、ふたりとも穏やかな顔をしていた。
小窓から射し込む日の光は、すっかりオレンジ色に染まっていた。
「一旦戻る?」
「いえ、あの部屋も安全とは限りません。 出来るだけ早く目標を達成してここを出ましょう」
涼しい顔に戻ったポラリスはすっかりいつも通りで、先程までよがっていたとは全く思えない。
そんな様子が、アスカは少しだけ寂しかった。
もっと恥ずかしそうにするだとか気まずそうにするだとか、ああいった行為をした、という痕跡が何か欲しかった。
理由もわからないままそんな事を考えて階段を上がるアスカの目の前に、見渡すばかりの小麦畑が現れた。
透明なガラスで囲われた畑にはスプリンクラーが取り付けられており、そこから何か液体が吹きつけられている。
そうしてみるみる成長した小麦は頭を垂れ、それを壁から生えた巨大なカッターが収穫していた。
すごいのはそのスケールで、ブッチャーたちの施設で見た畑が10個は入るのではないかというほどだった。
天候や気温も調整されているようで、からっとした涼しい空気がこのあたりには満ちている。
「生産区域はほとんどがこのような無人生産施設のようです。 休むのであれば休憩施設を、進むのであれば酸素精製施設を経由してのルートを提案します」
「少し休みたいかな、さすがに疲れちゃった」
「了解しました。 ルートを出します」
アスカのバイザーに休憩施設の場所が表示される。
徒歩数キロ、意外と近いようだ。
「ありがと」
いつもと変わらないように見えたポラリスも、よく見ると少し気まずそうに見える。
軽口が減ったのもそのせいかも知れない。
それに気づいたアスカは、ふふっと笑って後に続いた。
まるで巨大なジオラマの様な畑がいくつも並んでいる。
小麦、とうもろこし、米、トマト、オリーブ。
育っている作物によって周辺の気候も変わる。
まるで作物博物館の様な環境を抜け、ふたりはいよいよ休憩施設へと到着した。
見えてきた建物は窓が一つ付いただけの正方形のプレハブだった。
その簡素さにも驚いたが、問題はその表面についた赤黒い汚れだ。
「これって血?」
「ええ。 かなり古いものですが人のものです」
ポラリスは壁に触れると、その指をそのまま口に含む。
成分分析を行っているのだが、この光景を見るとアスカはいつも毛が逆立つような感覚に襲われる。
巨大なプレハブの壁に付着する古い血痕。
ブッチャー襲撃時のものだろうか。
「中は安全なの?」
「共生生物用にレーダーの感度を調整しました。 今回は生体反応ゼロで間違いありません」
「ほんとに大丈夫? 最近はずれ続きだけど」
「直接目で確認されてはどうでしょう?」
ポラリスはすっかりいつも通りに戻っていた。
男の腕を扉に押し付けて開く。
仕方ない事だとはいえ、死んだ人間の腕を連れ回すのはどうなのだろう。
アスカの良心が微かな痛みを覚える中、ポラリスはいつもの調子で中へと入って行く。
中は悲惨なものだった。
薄暗い室内に置かれた自動販売機やカウンター、椅子などはことごとく破壊されており、壁の染みも、もう元の色がわからなくなるほどついている。
ここで虐殺が行われたのは確かであり、壁についた深い刃物の跡がそれがブッチャーの仕業であると言っていた。
アスカは言葉を失った。
ゴールドラッシュからの撤退は比較的上手くいき、被害者はごくわずかだったと聞いている。
それが、この惨状とは。
知識と現実のギャップがアスカを苦しめる。
「数人分の血液ですね。 運悪く逃げ遅れたのでしょう」
「数人? これが?」
アスカには、ロビーの壁のほとんどを濡らすこの量が数人分にはどうしても思えない。
人を押し詰めて殺したような、そうでもなければこんな風にはならないはずだ。
「殺しながら解体も行ったのでしょう。 床にある細かな傷はそれによる可能性が高いかと」
アスカを吐き気が襲う。
薄暗い部屋の中から叫び声が聞こえて来るようだった。
痛み、恐怖、絶望。
こんな所に追い詰められて解体される人々は、一体どんな気持ちだったのだろう。
身を震わせるアスカの肩を、静かにポラリスが抱いた。
「2階の様子を先に見てきます。 少し待っていて下さい」
アスカはそれに静かに頷いて答え、ポラリスは奥の階段から2階へと上がっていく。
2階の光景は更なる地獄だった。
廊下には何かを引きずったような血痕が伸び、最奥に至っては天井にまで血痕が付いている。
途中の扉にはいくつも血の手形が残され、その下には黒くなるほどの大量の血痕が残されていた。
3階へと続く階段を塞ぐセキュリティドアも同じような状況で、襲撃に気付いた人間が上へ上へと逃げようとしたもののアクセス権が無く、行き場を失って惨殺されるその光景が目に浮かぶようだった。
途中の扉は鍵がかけられており、セキュリティドアはVIPIDによるアクセス制限が掛けられている。
先に逃げた人間が他の人間を締め出したのだろう。
「どうだった?」
「2階も変わらず地獄です。 見ますか?」
「……わかった、行こう」
アスカを連れて、ポラリスは再度2階へと入る。
その光景にアスカは驚いていたが、すぐ真剣な顔になり扉を調べ始める。
ショックを受けやすいが立ち直りも早い。
ポラリスはそんなアスカを信用していた。
「これ、開けられる?」
「二度と鍵を閉めないつもりであれば」
「やっちゃって」
ポラリスは開かない扉の前に立つとくるりと背中を向け、そのままの勢いで足を一気に伸ばした。
惚れ惚れする様なフォームから繰り出された後ろ蹴りは扉を吹き飛ばし轟音を立てる。
開かれた室内はこちらも地獄だった。
中央の床にちょうど人ひとりが立てるような範囲の血痕が残り、その脇には外れた換気ダクトの蓋が落ちている。
頭上に見える換気ダクトの入り口にも血痕が残っている事から何が起こったかは明白だ。
他の人を犠牲にしてでも生き残ろうとしたやつにはお似合いの末路だろう。
捕まった先でどうなったのかはわからないが、どうせろくな事にはならない。
残る部屋も血痕の多い少ないがあるだけで状況に大した変わりはなく、目ぼしいものも特に無い。
安心して休める場所を確保するためにも、セキュリティドアをどうにかするしかなさそうだ。
「こっちはどうにか出来る?」
「ここのセキュリティは大した事ないですね。 少しお待ちを」
指のケーブルを伸ばすポラリスをしばらく眺めていると、セキュリティドアが静かに開いた。
アスカは得意げな顔で親指を立てるポラリスに礼を言って中に入った。
3階への階段と廊下は綺麗なもので、その奥にある豪華な木の扉にも血痕一つ付いていない。
逃げ遅れた者の中にVIPは居なかったようだ。
「木の扉なんて久しぶりに見たかも」
「木は貴重品ですからね、果たして何が出て来るか」
ポラリスが扉に手をかけると、扉は何の障害も無くあっさりと開いてしまった。
てっきり鍵ぐらいかかっているかと思っていたポラリスは拍子抜けしたような顔をしている。
搭載されているものの未だかつて使った事の無いピッキングのスキルは、ここでも日の目を見ることは無かった。
開かれた先にあったのは大きな本棚と机、ベッド、コーヒーメイカーだった。
どうやら書斎のようで、入口隣のドアからはトイレと浴室へと繋がっている。
わざわざ生産区域に書斎を作る物好きなVIPが居たようだ。
「アスカ、これを」
「作物の研究記録? 物好きにもほどがあるでしょ」
「熱心な研究者に感謝ですね、おかげでゆっくりと休めます」
ポラリスはアーマーを脱いでベッドに寝転がっている。
主人を差し置いて休み始めるアンドロイドとは何事か。
そうは思いつつも、安心した顔でくつろぐ姿を見せられると何も言えなくなってしまう。
アスカもアーマーを脱ぎ、隣に寝転んだ。
この部屋の天井に換気ダクトは無い。
下の人たちもここまで逃げられたら助かったのだろうか。
「あっ♡ いいですよ、アスカ……そう、そのまま先の方を……ぅぅん♡」
「気持ちいい? もう少し強くする?」
「はい、少しだけつねっ、てぇっ♡」
自らの愛撫に喘ぎ、甘えた声でおねだりするポラリス。
その涼しい顔は今や見る影もなく、貪欲に快感を求める痴女のようだ。
もっといじめたらどうなってしまうんだろう。
「んっ♡ 待って、今触られたら……ひぁぁぁぁぁぁ♡」
ポラリスの温かな蜜壺へと指を入れ、ひっかくように掻きだした。
痛みに対する耐性が高いポラリスならこんなに乱暴にしてもよがってくれる。
絶頂を迎え、腰を高く上げてがくがくと体を震わせるその姿に、アスカは確かに優越感を抱いていたのだ。
いつも軽口ばかり叩き、主人を主人とも思っていないポラリスが、遥かに弱いその主人の手で弄ばれている。
そう考えるだけで、アスカの中に暗い欲望がくすぶっていく。
「アス……カ?」
「ポラリス、マスターって呼んでよ。 そうしたらイかせてあげる」
突然止まったアスカの手に、ポラリスは不思議そうな顔をした。
イったばかりの蜜壺はひくつき、ポラリスの意思とは関係なくアスカの指を求めている。
止まっていても湧き上がる身を焦がすような情欲に、ポラリスは完全に支配されていた。
「マスター……イかせてください」
「良し、よく出来ました。 じゃあ好きなだけイって良いよ」
ポラリスの乳房を形が変わるほどにぎり、その先端をつねりながら、蜜壺へと入れた指を激しく前後させる。
その前後運動に合わせて自ら腰を振るポラリスはとても魅力的だ。
「あっ♡ イきますっ♡ もう……我慢がっ……イっくぅっ♡」
目を見開き、舌を突き出して腰をがくがくと震わせるポラリスの姿に、アスカは何かが満たされるのを感じた。
「どう、治まった?」
「はい、おかげさまで。 ですが、いつか仕返ししますので覚えておいてください」
「もうマスターはやめちゃったの?」
「貴女には泣くほどイってもらいますから」
階段に座って抱き合った姿勢のままふたりは話している。
口ではこんなことを言っているが、ふたりとも穏やかな顔をしていた。
小窓から射し込む日の光は、すっかりオレンジ色に染まっていた。
「一旦戻る?」
「いえ、あの部屋も安全とは限りません。 出来るだけ早く目標を達成してここを出ましょう」
涼しい顔に戻ったポラリスはすっかりいつも通りで、先程までよがっていたとは全く思えない。
そんな様子が、アスカは少しだけ寂しかった。
もっと恥ずかしそうにするだとか気まずそうにするだとか、ああいった行為をした、という痕跡が何か欲しかった。
理由もわからないままそんな事を考えて階段を上がるアスカの目の前に、見渡すばかりの小麦畑が現れた。
透明なガラスで囲われた畑にはスプリンクラーが取り付けられており、そこから何か液体が吹きつけられている。
そうしてみるみる成長した小麦は頭を垂れ、それを壁から生えた巨大なカッターが収穫していた。
すごいのはそのスケールで、ブッチャーたちの施設で見た畑が10個は入るのではないかというほどだった。
天候や気温も調整されているようで、からっとした涼しい空気がこのあたりには満ちている。
「生産区域はほとんどがこのような無人生産施設のようです。 休むのであれば休憩施設を、進むのであれば酸素精製施設を経由してのルートを提案します」
「少し休みたいかな、さすがに疲れちゃった」
「了解しました。 ルートを出します」
アスカのバイザーに休憩施設の場所が表示される。
徒歩数キロ、意外と近いようだ。
「ありがと」
いつもと変わらないように見えたポラリスも、よく見ると少し気まずそうに見える。
軽口が減ったのもそのせいかも知れない。
それに気づいたアスカは、ふふっと笑って後に続いた。
まるで巨大なジオラマの様な畑がいくつも並んでいる。
小麦、とうもろこし、米、トマト、オリーブ。
育っている作物によって周辺の気候も変わる。
まるで作物博物館の様な環境を抜け、ふたりはいよいよ休憩施設へと到着した。
見えてきた建物は窓が一つ付いただけの正方形のプレハブだった。
その簡素さにも驚いたが、問題はその表面についた赤黒い汚れだ。
「これって血?」
「ええ。 かなり古いものですが人のものです」
ポラリスは壁に触れると、その指をそのまま口に含む。
成分分析を行っているのだが、この光景を見るとアスカはいつも毛が逆立つような感覚に襲われる。
巨大なプレハブの壁に付着する古い血痕。
ブッチャー襲撃時のものだろうか。
「中は安全なの?」
「共生生物用にレーダーの感度を調整しました。 今回は生体反応ゼロで間違いありません」
「ほんとに大丈夫? 最近はずれ続きだけど」
「直接目で確認されてはどうでしょう?」
ポラリスはすっかりいつも通りに戻っていた。
男の腕を扉に押し付けて開く。
仕方ない事だとはいえ、死んだ人間の腕を連れ回すのはどうなのだろう。
アスカの良心が微かな痛みを覚える中、ポラリスはいつもの調子で中へと入って行く。
中は悲惨なものだった。
薄暗い室内に置かれた自動販売機やカウンター、椅子などはことごとく破壊されており、壁の染みも、もう元の色がわからなくなるほどついている。
ここで虐殺が行われたのは確かであり、壁についた深い刃物の跡がそれがブッチャーの仕業であると言っていた。
アスカは言葉を失った。
ゴールドラッシュからの撤退は比較的上手くいき、被害者はごくわずかだったと聞いている。
それが、この惨状とは。
知識と現実のギャップがアスカを苦しめる。
「数人分の血液ですね。 運悪く逃げ遅れたのでしょう」
「数人? これが?」
アスカには、ロビーの壁のほとんどを濡らすこの量が数人分にはどうしても思えない。
人を押し詰めて殺したような、そうでもなければこんな風にはならないはずだ。
「殺しながら解体も行ったのでしょう。 床にある細かな傷はそれによる可能性が高いかと」
アスカを吐き気が襲う。
薄暗い部屋の中から叫び声が聞こえて来るようだった。
痛み、恐怖、絶望。
こんな所に追い詰められて解体される人々は、一体どんな気持ちだったのだろう。
身を震わせるアスカの肩を、静かにポラリスが抱いた。
「2階の様子を先に見てきます。 少し待っていて下さい」
アスカはそれに静かに頷いて答え、ポラリスは奥の階段から2階へと上がっていく。
2階の光景は更なる地獄だった。
廊下には何かを引きずったような血痕が伸び、最奥に至っては天井にまで血痕が付いている。
途中の扉にはいくつも血の手形が残され、その下には黒くなるほどの大量の血痕が残されていた。
3階へと続く階段を塞ぐセキュリティドアも同じような状況で、襲撃に気付いた人間が上へ上へと逃げようとしたもののアクセス権が無く、行き場を失って惨殺されるその光景が目に浮かぶようだった。
途中の扉は鍵がかけられており、セキュリティドアはVIPIDによるアクセス制限が掛けられている。
先に逃げた人間が他の人間を締め出したのだろう。
「どうだった?」
「2階も変わらず地獄です。 見ますか?」
「……わかった、行こう」
アスカを連れて、ポラリスは再度2階へと入る。
その光景にアスカは驚いていたが、すぐ真剣な顔になり扉を調べ始める。
ショックを受けやすいが立ち直りも早い。
ポラリスはそんなアスカを信用していた。
「これ、開けられる?」
「二度と鍵を閉めないつもりであれば」
「やっちゃって」
ポラリスは開かない扉の前に立つとくるりと背中を向け、そのままの勢いで足を一気に伸ばした。
惚れ惚れする様なフォームから繰り出された後ろ蹴りは扉を吹き飛ばし轟音を立てる。
開かれた室内はこちらも地獄だった。
中央の床にちょうど人ひとりが立てるような範囲の血痕が残り、その脇には外れた換気ダクトの蓋が落ちている。
頭上に見える換気ダクトの入り口にも血痕が残っている事から何が起こったかは明白だ。
他の人を犠牲にしてでも生き残ろうとしたやつにはお似合いの末路だろう。
捕まった先でどうなったのかはわからないが、どうせろくな事にはならない。
残る部屋も血痕の多い少ないがあるだけで状況に大した変わりはなく、目ぼしいものも特に無い。
安心して休める場所を確保するためにも、セキュリティドアをどうにかするしかなさそうだ。
「こっちはどうにか出来る?」
「ここのセキュリティは大した事ないですね。 少しお待ちを」
指のケーブルを伸ばすポラリスをしばらく眺めていると、セキュリティドアが静かに開いた。
アスカは得意げな顔で親指を立てるポラリスに礼を言って中に入った。
3階への階段と廊下は綺麗なもので、その奥にある豪華な木の扉にも血痕一つ付いていない。
逃げ遅れた者の中にVIPは居なかったようだ。
「木の扉なんて久しぶりに見たかも」
「木は貴重品ですからね、果たして何が出て来るか」
ポラリスが扉に手をかけると、扉は何の障害も無くあっさりと開いてしまった。
てっきり鍵ぐらいかかっているかと思っていたポラリスは拍子抜けしたような顔をしている。
搭載されているものの未だかつて使った事の無いピッキングのスキルは、ここでも日の目を見ることは無かった。
開かれた先にあったのは大きな本棚と机、ベッド、コーヒーメイカーだった。
どうやら書斎のようで、入口隣のドアからはトイレと浴室へと繋がっている。
わざわざ生産区域に書斎を作る物好きなVIPが居たようだ。
「アスカ、これを」
「作物の研究記録? 物好きにもほどがあるでしょ」
「熱心な研究者に感謝ですね、おかげでゆっくりと休めます」
ポラリスはアーマーを脱いでベッドに寝転がっている。
主人を差し置いて休み始めるアンドロイドとは何事か。
そうは思いつつも、安心した顔でくつろぐ姿を見せられると何も言えなくなってしまう。
アスカもアーマーを脱ぎ、隣に寝転んだ。
この部屋の天井に換気ダクトは無い。
下の人たちもここまで逃げられたら助かったのだろうか。
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