ヴァルホルサーガVR~夜明けの開拓者たち~《改稿版》~地雷スタートでもヒーローになれますか?~

夏冬春日

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第1章 宵闇の冒険者

第十一話 レベルアップと説明回

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 さて、ユエちゃんに引っ張られるようにして、屋根裏部屋まで戻ってきたわけだが……。
 まぁ、未来のことは置いておいて、今やるべき事、すなわちレベルアップについて考えてみようか。
 そうそう、ユエちゃんは俺をここまで連れてきた後、おやすみを言って階段を降りていった。
 とてもご機嫌な様子だったよ。いや、俺も明日は楽しみではあるんだけどね。

 それはさておき、待ちに待ったレベルアップ作業だ。
 ただこのゲームにおけるレベルというのは、いくつか種類があって少しめんどくさい。
 まずはこれが今のステータスだ。



 数多のマーモットを礎として、加護のレベルが3から上昇し、4になっている。
 これによりHP等の上限も少し上がった。なおこれらの上昇量は能力値やクラスによって変わるらしい。なので俺の上昇量は、多分低いだろうと思う。
 さて、加護のレベルが上がったことで手に入ったモノが他にもある。GPグロース・ポイントだ。これが10ポイント手に入った。
 前回と大きく変わったのはそこだ。

 今回はこのGPを使って、色々ステータスをいじるわけだが……。それよりも先にクラスのレベルを上げるとしよう。

 クラスのレベルは、加護のレベルが上がる毎に任意のクラスのレベルを一つあげることができる。
 他にもさっきのGPを消費してあげることもできるが、一つあげるのに10ポイント必要なので、今は無理だな。
 ここを戦闘クラスなんかを上げている人は、キャップレベルのやりくりに苦労しそうだが、俺には関係ない。
 なぜなら、前にカネティスが説明してくれたとおり、キャップレベルの計算が……、

 戦闘クラスLv×1+生産クラスLv×1+補助クラスLv×0.5≦加護Lv

 となっているからだ。
 補助クラスしかとってない俺は、キャップなんて無きが如しだ。ちなみに現在の加護レベルの上限は50らしい。そっちもまだまだ遠いね。

 さて、どのクラスのレベルを上げようか……。
 クラスもそのレベルの上昇に応じて、取得できるアビリティなんかが増えていくらしいんだけど。

 う~んエッグマスターか、それともウェポンマスターか……。
 とりあえずは、直近の戦闘に関わるかもしれない、ウェポンマスターにするか。卵の方はまだ時間がかかりそうだしな……
 ゲーム開始からなんの変化もなく腰にある、卵を見る。
 ……早く孵ってくれるといいんだけどなぁ。

 さて、ウェポンマスターを2に上げよう。

「……ふむ」

 レベルを上げた後、改めてステータスを見るが、大きな変わりは無い。
 若干HPとTPの最大値が増えたくらいか? 特に何か取得できる物が増えているわけではないな。
 まぁ、クラスレベルが1上がった程度じゃそんな物だろう

 さて、気を取り直して他を見るか。
 後はそうだな、GPを使って基礎能力値も上げられるのか……。
 いや、でもこれは現状は無理だなぁ。種族がヒューマンの場合、10~13の間は各20ポイント、13~15の間は各30ポイントにの消費となっている。
 今のGPじゃ手が出ないし、ここを上げるためにGPをためておくってのも、正直現実的じゃないな。
 能力値自体がスキルとかの成功率に影響するんだろうし、もしかしたら転職に必要になったりするかもしれない。だから、あえてここメインであげていく人もいるんだろうけど……。う~ん、俺はパスかな。

 となるとやっぱりGPの使い道は、アビリティの取得か。
 前にも調べたように、今覚えられるアビリティは、すべて取得にGPが5ポイントかかる。
 つまり、〔武器習熟〕〔ホワイトレディ〕〔共感〕の三つの中から、最大二つ選べるわけだ。
 この内〔共感〕は、トライゾンがとった方がいいとか言ってたな。よし、まずはこれを取得だ。
 あとはこの〔共感〕のレベルを上げるか、もしくはもう一つアビリティを取得するか……。
 いや、GPを温存しておくという手もある。悩ましいな。

 しばしの逡巡ののち決めた。
 ここは〔武器習熟〕をとることにする。
 アビリティにしろスキルにしろ、持っているのと持っていないのとじゃ大違いだ。
 それなら戦闘スキルに補正が来る〔武器習熟〕を取るべきだろう。

 いやまぁ、戦闘スキル自体は持ってないんだけどね。ただ、そうであってもナイフの扱いが――フレーバー的にでも――うまくなることによって、ダメージが上がるかも知れない。
 実際、マーモット戦でも慣れる前と後では、相手に与えるダメージが違っていた。

 こうなったら、次レベルが上がったときに〔ホワイトレディ〕の取得も、と言いたいところだけど、これの取得は追々かなぁ。
 〔武器習熟〕と違って、こちらの効果は生産スキルへの補正。現状そんなものをもらってもねぇ。
 まぁ、どちらにしろそれらはまだ先の話だ。

 ちなみに、アビリティのレベルの上限は、それぞれのアビリティ毎に違う。
 例えば〔共感〕のレベル上限は10で固定。〔武器習熟〕も今は10が上限だけど、こちらはウェポンマスターのレベルが上がれば、徐々にキャップが開放されていくらしい。
 同じく、〔エルルーンの冥助〕も徐々にキャップが開放されていくタイプだが、参照するものが違う。こちらは加護レベルの上昇に応じて、段階的に解放されていく。
 まぁ、というわけで、冥助のレベルを上げて、デメリットの軽減を図るのはまだ先に事だ。


 そして最後にスキルについてなんだが……。
 さすがに今回のアビリティ二つじゃ、とれる物は増えなかったか。
 これも今後に期待だな。

 というわけで、今回のレベルアップで俺のステータスはこうなった。



 さて、これが一体どのくらいの効果があるのやら……。
 もしかしたら一切無いかも知れないけど、それは実際戦ってみてからだなぁ。
 とはいえ明日は、ユエちゃんのおもりという大事なクエストが待っている。だから戦うことはないだろうし……。
 明日以降、もしクエスト達成からのレベルアップが軌道に乗るようなら、どっかで試しに戦ってみないと。
 どうせなら今日会った喜助さんに連絡取って、ナイフの扱い方を教えてもらうのも手かも知れないな。
 ま、これ以上は捕らぬ狸のなんとやら、か。
 もう遅いし寝るとしよう。
 おっとその前に、せっかく〔共感〕を取ったんだ。卵に話しかけないと。

「早く孵れ―。俺の手助けをしてくれー」

 こんなもんか?
 いやまて、そもそも共感って、こんな使い方するものなのか? うーん、わからん。


 ◆


 明けて次の日である。
 おっちゃんの用意してくれた朝食を食べ、今はユエちゃんが準備を終えて部屋から降りてくるのを待ってる状態だ。
 なお、今日の朝食のメニューは、トースト、おむすび、サラダ、ミニオムレツ、ゆで卵、スープと来てデザートにヨーグルト。もちろんコーヒーも付いている。
 多いって思うだろ? 確かに多少豪勢ではある。でもね、昨日もおとといもこんな感じだったんだ。どうにもおっちゃんの作る飯は朝と晩はがっつり多めなイメージだ。
 いやまぁ、多い以前に突っ込みどころ満載なんだよなぁ。何でおむすびとトーストがセットなんだよ! とか、ミニオムレツにゆで卵とかかぶってない? とかね。
 でももうなれた。昨日はホットサンドに味噌汁が付いてきたしなぁ。
 そして意外なことにその食い合わせは悪くない。一品一品がおいしいのもあるだろうけど、結構あっさりと平らげることができた。
 食べ終えた後に、おなかにズンッときたけどね。

 そんなわけで、食休みをしつつユエちゃんを待っているって訳だが……。

「お兄ちゃん、おまたせー」

 ユエちゃんが二階からおりてきた。
 リュックを背負い、裾にかわいくフリルのあしらわれた七分丈のパンツをはいている。帽子もかぶって、すっきりと髪をまとめてあった。
 ……かわいい。かわいいのはいいんだが活動的すぎじゃありませんかねぇ。
 今日は雑貨屋のおばあさんの紹介をしてもらうだけだから、こんな活動的である必要は無いと思うんだが。
 それこそ初日に会った時みたいにワンピース姿でも良かったと思うんだ。
 なので、そこら辺のことをユエちゃんに聞いてみた。

「今日はなかなか活動的な格好だね。かわいいけど、昨日とかみたいにワンピースでも良かったんじゃないのか」

「んふふー、かわいい?」

 ユエちゃんは笑顔いっぱいだ。
 だけど、でもねと続ける。

「今日は1日お兄ちゃんのお世話をしなきゃなんないから、ぼーけんよーの服をおかーさんに用意してもらったの! 私にとって今日はだいだいだいぼーけんの日なのーー」

 手を大きく広げ、だいだいだいぼーけんをアピールするユエちゃん。
 お世話の所に若干反応しないでもなかったけど、そうか。楽しみにしてくれたのか……。
 よく見れば、帽子の下の髪もきれいに梳かしてまとめてある。
 こんなに準備をしてくれたんだ、俺も楽しんでもらえるよう頑張らないとな。
 できれば雑貨屋のおばあさんの依頼を手早くこなして、自由時間でユエちゃんと遊びたいところだ。

「よし、準備ができたみたいだな。今日一日、ユエのことをよろしく頼むぜ」

 おっちゃんがお弁当を持ってきてくれた。今日は二人前。いつもの包みとは違って、今日は大小二つのバスケットを渡された。

「んもー、私がお兄ちゃんのお世話をするのっ」

 手を振りむくれるユエちゃん頭を、おっちゃんがなでる。

「はは、そうだったな。それじゃあユエ、坊主がまた迷って腹すかせて倒れないよう、しっかり見張るんだぞ」
「うん、わかったー。任せておとーさん」

 んふーと胸を張るユエちゃん。

「ほらお父さんも、そろそろ準備してくださいな」

 ニコニコしながらこちらを見ていたソレイユさんが、おっちゃんに言った。

「そうだな」

 そう答え、おっちゃんがこちらに向き直る。

「それじゃあ今日はよろしく頼むわ。ああそうだ、別に町の外に出てもいいぞ。この辺の魔物は、こっちが手を出さなきゃ危害はないからな。とはいえさすがに遠くは不安があるからな、この町の周りまでで勘弁してくれや」

 驚いた。まさか町の外に出ていいって言われるとは。
 確かにクエスト内容に『町の隣接マップまでは大丈夫』とは書いていたけど……。
 そんな俺の頭をおっちゃんが小突く。

「なにポカンとしてやがる。雑貨屋のおばあの依頼次第じゃ、町の外に出なきゃならんかもしれんだろうが。今後は自分で依頼を探すんだろう? それくらいのことは予想しとけ」

 そこまで言って、さっさと行けとばかりに手を振ってくる。
 おっちゃんの言うとおりだ。確かにそれくらいのことは予想してしかるべきだった。
 これから個人で依頼を受けるんだったら、こういったこともちゃんと考えておかないと……。
 おっちゃんの言葉を胸に刻み、改めてユエちゃんの肩に手を置く。

「わかりました。ユエちゃんお預かりします」
「おとーさん、おかーさん、いってきまーーす」

 ユエちゃんは元気に二人に手を振った後、今度は俺の手を取り、店から引っ張って出ようとする。
 いや、手をつながなくても大丈夫だから……。
 そう言うも、ユエちゃんは意に介さない

「ダメなのー。おにーちゃん、手を離すとすぐ迷子になりそうだから、今日はつないでるの」

 そう言って、むしろその手を強く握ってくる。
 マジか! もしかして今日一日こうしてるつもりなのか?
 いや、さすがにこの姿を人に見られるのは恥ずかしいんだが……。
 ほら、おっちゃんとソレイユさんもこっちを見て笑ってるじゃないか。

 だが、そんな俺の思いをよそに、ユエちゃんはフンフンと上機嫌に鼻歌を歌いながら、俺を町へと連れ出していった。
 
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