11 / 16
第10章
ジョルジュ・ド・クレイターヴ
しおりを挟む
王都クラン・クレイターヴでは、民衆の不安と不満が渦を巻いていた。
今から半月ほど前、ノルド遠征軍から勝利の報がもたらされ、凱旋を楽しみにしていたクレイターヴの民は浮足立っていた。
遠征軍の帰還を心待ちにしていたクレイターヴ城にもたらされたのは、ローザニア帝国の大軍が押し寄せてきたという早馬だった。
二万という敵兵の数を知ったジョルジュ王の判断は早かった。
都中に出されたふれは驚くべきものだった。それはたった一言。
『逃げられるものは逃げよ』
商人の都へと変貌を遂げていたクラン・クレイターヴのものたちは機に聡い。このふれが出ると同時に知人縁者を頼りに都を抜け出した。もちろん、持てるだけの財産を持ってだ。
ジョルジュは領民がいち早く安全な場所へ逃げることで、命と同時にある程度の財産は手元に残せるよう心をくだいたのだ。
それでも、城に残るものたちはいた。
クレイターヴの臣下だ。
主だった者たちはノルド遠征軍へ加わっていたため、このとき城の護りに残っていたのは、ジョルジュの父であるクレイターヴ候の時代から仕えてくれたものたちで、ジョルジュへの忠誠心も厚い。言い換えれば、年寄りの頑固者の集まりであった。
彼らは、ローザニア帝国の大軍を前にして、籠城戦を主張した。最期まで騎士の国クレイターヴの底力を見せるのだと息巻いていた。
しかし、ジョルジュには最初から籠城の意思はなかった。それはいたずらに兵を犠牲するだけでなく、領民にとっても多くの犠牲を伴う愚策であったからだ。
アンリが考えたのと同じように、ジョルジュはクレイターヴ城を一旦無血開城するという考えを早くから決めていた。
しかし、これまでローザニアとの数々の戦に勝利してきた騎士候たちは説得に応じる様子はなかった。
ローザニア帝国が率いてきた二万という大軍はこれまでにない数であるにもかかわらずだ。そしてその前線には皇女ロゼ・ヒルデガルドの姿があるという。これは実質的な親征である。皇女は騎士候からの信頼も厚く、軍の士気も高い。
どう考えても城に残った守備軍では歯が立つわけがない。
なにごとにも合理的な考え方をするジョルジュは、どうすればこの頑固者たちに諦めさせることができるか、知恵を絞るはめになった。
考えてみれば、さほど難しいことではなかった。
ジョルジュは一通の手紙を残して姿を消した。
『皆もさっさと逃げよ』
クラン・クレイターヴの者たちは、王が逃げ出したことにさほど驚きはしなかった。クレイターヴのものたちは知っていた。王は戦いに重きをおく騎士ではないことを。
本当の意味で騎士なのは王弟のリュシオンのほうである。
ただ、それでもジョルジュは王として領民に慕われていた。民が豊かに、穏やかな暮らしがおくれるようにするために数々の政策をとってきたからである。
独立と同時に世をさったクレイターヴ候の後を継いで即位したジョルジュは、軍事面を弟であるリュシオンに一任した。リュシオンは、サラン候、セルシーヴ候の両者を従えて戦に専念した。それによりジョルジュは内政に没頭することができたのである。
独立からの十年間、この役割分担は功を奏し、クレイターヴでは戦を繰り返す中でも、比較的豊かな生活を続けることができたのである。
ローザニア帝国によるクラン・クレイターヴ攻略はまさに電光石火だった。
クラン・クレイターヴに一報がもたらされてからわずか五日後に、王都に二万の大軍が姿を現したのである。
その瞬間にも王都の裏門からは、民衆が次々と逃げ出していた。城内に残ったのは、亡きクレイターヴ候と親交の深かったドニエ候ただひとりだった。
ジョルジュの置手紙を呼んだ家臣たちは、呆れかえるのとともにその真意を読み取ってもいた。動ける者たちは、わずかでも手勢を率いてクラン・クレイターヴを離れ再起をはかるため落ち延びよということである。
無血開城したクレイターヴ城に入ったロゼ・ヒルデガルドは、当然のことながら国王ジョルジュ・ド・クレイターヴの引き渡しを講和の条件としたが、いない者を引き渡すことはできない。ドニエ候は首を刎ねられるのを覚悟の上、皇女に対峙したが、ロゼ・ヒルデガルドは、ドニエ候に監禁を命じただけであった。
ローザニア軍の入城直後から、クラン・クレイターヴには戒厳令が敷かれた。物資はすべてローザニア帝国の管理課に置かれて、自由な取引が禁じられた。
二万の大軍を養うため、食料はすべて接収され、それを料理するための人も強制的に集められた。しかし、略奪や暴行は厳しく禁じられ、それを破ったものはその場で処刑が言い渡された。それは、高い地位のあるローザニア帝国の騎士候の息子であっても助命されることはなかった。女性に不埒な振る舞いに及ぼうとした馬鹿息子に対して、そこに居合わせたリヒテンベルグ候が問答無用で一刀に処したのである。
ロゼ・ヒルデガルドの匙加減は絶妙で、クラン・クレイターヴの民衆の不満をぎりぎりのところで抑えてこんでいた。
民衆からほぼすべての物資を絞り取る一方、最低限必要な食糧だけは隅々にいたるまで配給した。また、少しづつではあるが、宿屋や食堂などの営業も許可した。あまりに長い戒厳令は、都そのものの息を止めてしまう恐れがあるからだ。まさに生かさず殺さずの線を外すことなく、都を鎮めることに成功していたのである。
「クレイターヴにいるのに、まだ名物の紅葡萄酒をのんでないって?」
クラン・クレイターヴの酒場では、すっかりクレイターヴのものの姿は消え、ここ最近は、ローザニア兵の姿しか見えない。
ローザニア兵には、はめをはずさない程度の自由は与えられ、非番の兵は街で酒を飲むことも許されていた。
この混乱のなかでもクラン・クレイターヴに残ることに決めた商魂たくましいものたちは、ローザニア兵相手の商売にも抜かりがない。
安宿が集まる界隈で評判の酒場である『紅葡萄亭』は、今夜もローザニアの兵で賑わっていた。さすがに若い娘たちは疎開していたが、その代わりにひとりの若者が客席を縫うように走り回っていた。
「はい、こちらのお客さんは紅葡萄酒ね。そりゃうちも商売ですからね。麦酒もおいてますよ。でも、やっぱりおすすめは葡萄酒。甘いのが苦手なら、白の辛口はどうだい」
まるで口から生まれてきたかのようなすすめ文句に、客たちの注文が次々とはいる。
「ジル、炙り肉があがったぞ。右側のお客さんだ」
台所でせわしなく料理をしている親爺が若者に声をかけた。若者は手早く料理を運んでしまうと、酒の入った小さな盃をふたつ、新しく入ってきた客に振舞った。
「まずは、味見しておくれよ。自慢するだけのことはあると思うよ」
盃を受け取った客は、一息に酒をあおると、お互いの顔を見合わせた。どうやら紅葡萄酒の味が気に入ったようだ。席に腰を下ろすとジルにいくつかの料理と葡萄酒を注文する。
台所に食べ終わった皿を返しにきたジルに店の親爺が声をかけた。
「あなたさまにこんなことさせちまって…」
「好きでやっているんだから大丈夫。それにさ、見てみなよ」
ジルが促した先には、甲冑こそつけていないものの立派な風体の騎士が立っていた。
その姿をみたとたん、酒を酌み交わして大声で騒いでいた者たちが直立不動になった。
「リヒテンベルグ候! どうされたのでありますか?」
その騎士は、手で皆を座らせると、かしこまる必要はないと言っているようだった。
「おい、わたしにも自慢の葡萄酒とやらをもらえるかな」
台所に控えていたジルに向かって注文をしてくると、顔見知りの部下たちの席に落ち着いた。
「評判になれば大物が釣れると思っていたんだ」
ジルは得意気にゴブレットになみなみと葡萄酒をつぐと、サービスにとこれまた自慢の白ハムを添えて、リヒテンベルグ候のテーブルに近づいた。
皇女の近衛騎士でもあるリヒテンベルグ候は、三十手前といったところだろう。プラチナブロンドを短く切り揃えた精悍な顔立ちをしていた。肩の厚みといい腕まわりの太さといい、酒屋の息子にしか見えないジルとは大違いだった。
リヒテンベルグ候は、喉を鳴らして葡萄酒を飲みほすとその味に満足したようだった。
「おまえはここの息子か?」
「そうだけど」
「この葡萄酒を城に納めてくれ。皇女殿下にも献上したい」
「城への商売には鑑札がいるんだ。ローザニアの門衛は厳しくてね」
リヒテンベルグ候は書くものを借り、その場で鑑札を書き記した。自筆の署名が入っている。今のローザニアでは皇女の次にものを言うリヒテンベルグ候の直筆だ。これで城の出入りは自由と言っていい。
「前金だ」
そう言ってわたされた革袋はずっしりと重く、中を開けてみると十数枚の金貨がはいっていた。
「もらい過ぎだけど。いったい何樽必要なんだい」
「今日中に一樽持ってきてもらおう。あとは毎日あるぶんだけ運んでおいてくれ、金が足りなくなったら城の者に言えばいい」
なんとも豪勢な話だが、話の取り方によっては、いつでも城の中に潜り込めるということである。
ジルはわざと品のない笑みを浮かべ、リヒテンベルグ候に頭を下げた。
「毎度あり」
今から半月ほど前、ノルド遠征軍から勝利の報がもたらされ、凱旋を楽しみにしていたクレイターヴの民は浮足立っていた。
遠征軍の帰還を心待ちにしていたクレイターヴ城にもたらされたのは、ローザニア帝国の大軍が押し寄せてきたという早馬だった。
二万という敵兵の数を知ったジョルジュ王の判断は早かった。
都中に出されたふれは驚くべきものだった。それはたった一言。
『逃げられるものは逃げよ』
商人の都へと変貌を遂げていたクラン・クレイターヴのものたちは機に聡い。このふれが出ると同時に知人縁者を頼りに都を抜け出した。もちろん、持てるだけの財産を持ってだ。
ジョルジュは領民がいち早く安全な場所へ逃げることで、命と同時にある程度の財産は手元に残せるよう心をくだいたのだ。
それでも、城に残るものたちはいた。
クレイターヴの臣下だ。
主だった者たちはノルド遠征軍へ加わっていたため、このとき城の護りに残っていたのは、ジョルジュの父であるクレイターヴ候の時代から仕えてくれたものたちで、ジョルジュへの忠誠心も厚い。言い換えれば、年寄りの頑固者の集まりであった。
彼らは、ローザニア帝国の大軍を前にして、籠城戦を主張した。最期まで騎士の国クレイターヴの底力を見せるのだと息巻いていた。
しかし、ジョルジュには最初から籠城の意思はなかった。それはいたずらに兵を犠牲するだけでなく、領民にとっても多くの犠牲を伴う愚策であったからだ。
アンリが考えたのと同じように、ジョルジュはクレイターヴ城を一旦無血開城するという考えを早くから決めていた。
しかし、これまでローザニアとの数々の戦に勝利してきた騎士候たちは説得に応じる様子はなかった。
ローザニア帝国が率いてきた二万という大軍はこれまでにない数であるにもかかわらずだ。そしてその前線には皇女ロゼ・ヒルデガルドの姿があるという。これは実質的な親征である。皇女は騎士候からの信頼も厚く、軍の士気も高い。
どう考えても城に残った守備軍では歯が立つわけがない。
なにごとにも合理的な考え方をするジョルジュは、どうすればこの頑固者たちに諦めさせることができるか、知恵を絞るはめになった。
考えてみれば、さほど難しいことではなかった。
ジョルジュは一通の手紙を残して姿を消した。
『皆もさっさと逃げよ』
クラン・クレイターヴの者たちは、王が逃げ出したことにさほど驚きはしなかった。クレイターヴのものたちは知っていた。王は戦いに重きをおく騎士ではないことを。
本当の意味で騎士なのは王弟のリュシオンのほうである。
ただ、それでもジョルジュは王として領民に慕われていた。民が豊かに、穏やかな暮らしがおくれるようにするために数々の政策をとってきたからである。
独立と同時に世をさったクレイターヴ候の後を継いで即位したジョルジュは、軍事面を弟であるリュシオンに一任した。リュシオンは、サラン候、セルシーヴ候の両者を従えて戦に専念した。それによりジョルジュは内政に没頭することができたのである。
独立からの十年間、この役割分担は功を奏し、クレイターヴでは戦を繰り返す中でも、比較的豊かな生活を続けることができたのである。
ローザニア帝国によるクラン・クレイターヴ攻略はまさに電光石火だった。
クラン・クレイターヴに一報がもたらされてからわずか五日後に、王都に二万の大軍が姿を現したのである。
その瞬間にも王都の裏門からは、民衆が次々と逃げ出していた。城内に残ったのは、亡きクレイターヴ候と親交の深かったドニエ候ただひとりだった。
ジョルジュの置手紙を呼んだ家臣たちは、呆れかえるのとともにその真意を読み取ってもいた。動ける者たちは、わずかでも手勢を率いてクラン・クレイターヴを離れ再起をはかるため落ち延びよということである。
無血開城したクレイターヴ城に入ったロゼ・ヒルデガルドは、当然のことながら国王ジョルジュ・ド・クレイターヴの引き渡しを講和の条件としたが、いない者を引き渡すことはできない。ドニエ候は首を刎ねられるのを覚悟の上、皇女に対峙したが、ロゼ・ヒルデガルドは、ドニエ候に監禁を命じただけであった。
ローザニア軍の入城直後から、クラン・クレイターヴには戒厳令が敷かれた。物資はすべてローザニア帝国の管理課に置かれて、自由な取引が禁じられた。
二万の大軍を養うため、食料はすべて接収され、それを料理するための人も強制的に集められた。しかし、略奪や暴行は厳しく禁じられ、それを破ったものはその場で処刑が言い渡された。それは、高い地位のあるローザニア帝国の騎士候の息子であっても助命されることはなかった。女性に不埒な振る舞いに及ぼうとした馬鹿息子に対して、そこに居合わせたリヒテンベルグ候が問答無用で一刀に処したのである。
ロゼ・ヒルデガルドの匙加減は絶妙で、クラン・クレイターヴの民衆の不満をぎりぎりのところで抑えてこんでいた。
民衆からほぼすべての物資を絞り取る一方、最低限必要な食糧だけは隅々にいたるまで配給した。また、少しづつではあるが、宿屋や食堂などの営業も許可した。あまりに長い戒厳令は、都そのものの息を止めてしまう恐れがあるからだ。まさに生かさず殺さずの線を外すことなく、都を鎮めることに成功していたのである。
「クレイターヴにいるのに、まだ名物の紅葡萄酒をのんでないって?」
クラン・クレイターヴの酒場では、すっかりクレイターヴのものの姿は消え、ここ最近は、ローザニア兵の姿しか見えない。
ローザニア兵には、はめをはずさない程度の自由は与えられ、非番の兵は街で酒を飲むことも許されていた。
この混乱のなかでもクラン・クレイターヴに残ることに決めた商魂たくましいものたちは、ローザニア兵相手の商売にも抜かりがない。
安宿が集まる界隈で評判の酒場である『紅葡萄亭』は、今夜もローザニアの兵で賑わっていた。さすがに若い娘たちは疎開していたが、その代わりにひとりの若者が客席を縫うように走り回っていた。
「はい、こちらのお客さんは紅葡萄酒ね。そりゃうちも商売ですからね。麦酒もおいてますよ。でも、やっぱりおすすめは葡萄酒。甘いのが苦手なら、白の辛口はどうだい」
まるで口から生まれてきたかのようなすすめ文句に、客たちの注文が次々とはいる。
「ジル、炙り肉があがったぞ。右側のお客さんだ」
台所でせわしなく料理をしている親爺が若者に声をかけた。若者は手早く料理を運んでしまうと、酒の入った小さな盃をふたつ、新しく入ってきた客に振舞った。
「まずは、味見しておくれよ。自慢するだけのことはあると思うよ」
盃を受け取った客は、一息に酒をあおると、お互いの顔を見合わせた。どうやら紅葡萄酒の味が気に入ったようだ。席に腰を下ろすとジルにいくつかの料理と葡萄酒を注文する。
台所に食べ終わった皿を返しにきたジルに店の親爺が声をかけた。
「あなたさまにこんなことさせちまって…」
「好きでやっているんだから大丈夫。それにさ、見てみなよ」
ジルが促した先には、甲冑こそつけていないものの立派な風体の騎士が立っていた。
その姿をみたとたん、酒を酌み交わして大声で騒いでいた者たちが直立不動になった。
「リヒテンベルグ候! どうされたのでありますか?」
その騎士は、手で皆を座らせると、かしこまる必要はないと言っているようだった。
「おい、わたしにも自慢の葡萄酒とやらをもらえるかな」
台所に控えていたジルに向かって注文をしてくると、顔見知りの部下たちの席に落ち着いた。
「評判になれば大物が釣れると思っていたんだ」
ジルは得意気にゴブレットになみなみと葡萄酒をつぐと、サービスにとこれまた自慢の白ハムを添えて、リヒテンベルグ候のテーブルに近づいた。
皇女の近衛騎士でもあるリヒテンベルグ候は、三十手前といったところだろう。プラチナブロンドを短く切り揃えた精悍な顔立ちをしていた。肩の厚みといい腕まわりの太さといい、酒屋の息子にしか見えないジルとは大違いだった。
リヒテンベルグ候は、喉を鳴らして葡萄酒を飲みほすとその味に満足したようだった。
「おまえはここの息子か?」
「そうだけど」
「この葡萄酒を城に納めてくれ。皇女殿下にも献上したい」
「城への商売には鑑札がいるんだ。ローザニアの門衛は厳しくてね」
リヒテンベルグ候は書くものを借り、その場で鑑札を書き記した。自筆の署名が入っている。今のローザニアでは皇女の次にものを言うリヒテンベルグ候の直筆だ。これで城の出入りは自由と言っていい。
「前金だ」
そう言ってわたされた革袋はずっしりと重く、中を開けてみると十数枚の金貨がはいっていた。
「もらい過ぎだけど。いったい何樽必要なんだい」
「今日中に一樽持ってきてもらおう。あとは毎日あるぶんだけ運んでおいてくれ、金が足りなくなったら城の者に言えばいい」
なんとも豪勢な話だが、話の取り方によっては、いつでも城の中に潜り込めるということである。
ジルはわざと品のない笑みを浮かべ、リヒテンベルグ候に頭を下げた。
「毎度あり」
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
【取り下げ予定】愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる