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第四章
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「カーライル兄ちゃん! 思ったより早かったね!」
「どうしたの? このオイルって、すっごく質がいいよね。どうやって手に入れたの」
トーヤとリーヤは、カーライルの帰りに大はしゃぎだった。それもそのはず、もしかしたら、もうカーライルは戻ってこないかもしれないと腹をくくりながら、エンジンの整備をしていたのだ。そこに、約束したのよりもずっと早い時間にカーライルが、最高級のオイルを手に戻ってきた。
「飛空艇にはオイルだろうが、おまえたちにはこれだろ!」
そう言って、カーライルが包みからだしてきたのは、やわらかい白パンに、屋台で買ってきた、色とりどりの惣菜だった。
実験飛行は翌日だ。とても料理をしている時間などないだろうと考えて、みつくろってきたのだ。ふたりの目の色を見ていると買ってきて正解だった。
幸いハーレからは、オイルとは別に十分な給金をもらっていた。しかし、カーライルにとって、現金はそれほど重要なものではなかった。それならば、これまでずっと世話になってきたふたりに、美味しいものをごちそうするのは、悪い使い方ではなかった。
「白パン食べたのっていつぶり?」
「二年前? いや三年前の誕生日じゃないか!」
カーライルとしては、パン屋の女将の驚く顔を見たので、十分だった。買い物かごいっぱいに白パンを積み上げたときの顔に、金貨で支払ったときの顔。しかも、すぐにお釣りがないとか言って、両替屋に走っていった。
それにしても、たった二日というか、一日半の仕事で、これだけの報酬をもらえるとは思ってもみなかった。あまりの金額にトーヤとリーヤには何の仕事をしたのか、随分聞かれたが話すことはできなかった。
「それはそうと、エンジンはどうなんだ?」
「オーバーホールしたからね」
トーヤが胸をはって答えた。
「おーばーほーるってのはなんだ?」
「エンジンの部品を全部ばらして、修理したんだ」
「ネジ一本、歯車一枚までピッカピカなんだから」
「おお、それはすごいな。一日半でよくそこまで」
「おれ、カーライル兄ちゃんが帰ってこなかったら、どうしようって…」
「おいおい、ちゃんと帰ってきただろう。泣くなよ」
「泣いてないっ!」
「袖で拭くと、また顔中黒くなるぞ」
カーライルが笑って、トーヤの腕を掴んでとめた。
三人で、倉庫の前までいくと、すでにエンジンを搭載した飛空艇が待ち構えていた。
「火入れはしたのか?」
「まだだよ。オイル待ちだったから」
「古いオイルを入れると汚れちゃうからね」
「じゃあ、早速いれてみようぜ」
カーライルがオイルの缶をトーヤに渡す。蓋をあけるとトーヤが感心したように声をあげた。
「あの、いやな臭いがしないや」
「いや、十分臭い…」
機械油の臭いに慣れていないカーライルはどうしてもこの臭いがだめだった。鼻をつまんで、トーヤから距離を取る。
一方、リーヤはトーヤの近くへ寄り、鼻をならして臭いをかいでいる。
「本当、良い匂い」
「いや、いい臭いのわけないだろ。はやくオイルを入れて、蓋をしめてくれ」
カーライルの仕草に面白がって、トーヤがわざとカーライルの近くにオイルをもってくる。
「こら、やめろっていってるだろ!」
「トーヤ! もう、早くやろうよ。日が暮れちゃうよ」
実際には、まだ昼を少し過ぎたくらいだが、リーヤが助け船をだしてくれた。
「わかった、わかった。始めようぜ。リーヤ、脚立だ!」
「了解!」
トーヤが操縦席に座ると、カーライルとリーヤでプロペラを回す。依然とは比べものにならないほど、軽い音で回りはじめた。その風で脚立から二人が吹っ飛ばされたのは同じだったが、その笑顔は途切れることはなかった。
「どうしたの? このオイルって、すっごく質がいいよね。どうやって手に入れたの」
トーヤとリーヤは、カーライルの帰りに大はしゃぎだった。それもそのはず、もしかしたら、もうカーライルは戻ってこないかもしれないと腹をくくりながら、エンジンの整備をしていたのだ。そこに、約束したのよりもずっと早い時間にカーライルが、最高級のオイルを手に戻ってきた。
「飛空艇にはオイルだろうが、おまえたちにはこれだろ!」
そう言って、カーライルが包みからだしてきたのは、やわらかい白パンに、屋台で買ってきた、色とりどりの惣菜だった。
実験飛行は翌日だ。とても料理をしている時間などないだろうと考えて、みつくろってきたのだ。ふたりの目の色を見ていると買ってきて正解だった。
幸いハーレからは、オイルとは別に十分な給金をもらっていた。しかし、カーライルにとって、現金はそれほど重要なものではなかった。それならば、これまでずっと世話になってきたふたりに、美味しいものをごちそうするのは、悪い使い方ではなかった。
「白パン食べたのっていつぶり?」
「二年前? いや三年前の誕生日じゃないか!」
カーライルとしては、パン屋の女将の驚く顔を見たので、十分だった。買い物かごいっぱいに白パンを積み上げたときの顔に、金貨で支払ったときの顔。しかも、すぐにお釣りがないとか言って、両替屋に走っていった。
それにしても、たった二日というか、一日半の仕事で、これだけの報酬をもらえるとは思ってもみなかった。あまりの金額にトーヤとリーヤには何の仕事をしたのか、随分聞かれたが話すことはできなかった。
「それはそうと、エンジンはどうなんだ?」
「オーバーホールしたからね」
トーヤが胸をはって答えた。
「おーばーほーるってのはなんだ?」
「エンジンの部品を全部ばらして、修理したんだ」
「ネジ一本、歯車一枚までピッカピカなんだから」
「おお、それはすごいな。一日半でよくそこまで」
「おれ、カーライル兄ちゃんが帰ってこなかったら、どうしようって…」
「おいおい、ちゃんと帰ってきただろう。泣くなよ」
「泣いてないっ!」
「袖で拭くと、また顔中黒くなるぞ」
カーライルが笑って、トーヤの腕を掴んでとめた。
三人で、倉庫の前までいくと、すでにエンジンを搭載した飛空艇が待ち構えていた。
「火入れはしたのか?」
「まだだよ。オイル待ちだったから」
「古いオイルを入れると汚れちゃうからね」
「じゃあ、早速いれてみようぜ」
カーライルがオイルの缶をトーヤに渡す。蓋をあけるとトーヤが感心したように声をあげた。
「あの、いやな臭いがしないや」
「いや、十分臭い…」
機械油の臭いに慣れていないカーライルはどうしてもこの臭いがだめだった。鼻をつまんで、トーヤから距離を取る。
一方、リーヤはトーヤの近くへ寄り、鼻をならして臭いをかいでいる。
「本当、良い匂い」
「いや、いい臭いのわけないだろ。はやくオイルを入れて、蓋をしめてくれ」
カーライルの仕草に面白がって、トーヤがわざとカーライルの近くにオイルをもってくる。
「こら、やめろっていってるだろ!」
「トーヤ! もう、早くやろうよ。日が暮れちゃうよ」
実際には、まだ昼を少し過ぎたくらいだが、リーヤが助け船をだしてくれた。
「わかった、わかった。始めようぜ。リーヤ、脚立だ!」
「了解!」
トーヤが操縦席に座ると、カーライルとリーヤでプロペラを回す。依然とは比べものにならないほど、軽い音で回りはじめた。その風で脚立から二人が吹っ飛ばされたのは同じだったが、その笑顔は途切れることはなかった。
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