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第八章:そして死ぬ前にただ一度だけ、セックスをしたあの人と。
8-7・呼び合って、そして
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ミゴーが舌打ちをして、汗じみたシャツを脱ぎ捨てた。露わになる二の腕の筋肉も胸板も、覚えていたのより少し力強く見えた。俺のシャツはとうの昔にはだけて、ベッドの下かどこかに落ちてしまっている。今や俺たちを隔てるものは、文字通り布一枚もなかった。
「は、あ、やぅ、うぅんっ、あっ」
「っふ、……は、……っ」
声を抑える余裕は消し飛んでいた。貫かれ、揺さぶられ、手足を絡めて体を密着させる。前の二回と比べれば、確かにずいぶんと荒っぽいやり方だ。けれど抱き潰されるにはほど遠い。俺だって大人の男だ、きつく抱きしめられたくらいで折れはしないし、何よりミゴーの動きには、ほんの僅かに怯えにも似た遠慮が潜んでいる。
だから俺からも肌を寄せた。汗ばんだ皮膚が吸いつきあって、互いに跡を残すほどに。そこから生まれる快感は言わば副作用みたいなものだったけれど、躊躇を消し去る言い訳にはちょうどよかった。
「……さ……、……ジ、……んっ」
「はっ、ふぅっ、っく……ぅんっ」
弾む吐息の合間に、ほんの微かな声が聞こえる。恐らく無意識の独り言で、俺に聞かせるつもりもないようだ。けれど今まさに体を繋げている俺には、ミゴーの囁きもゼロ距離で届く。
「……ユージンさん……祐仁さんっ、ユージンさん……っ」
ミゴーは絞り出すように、幾度も繰り返し俺を呼んでいた。声の先にいるのが今の俺なのか過去の俺なのかは、きっと本人もわかっていない。だから全部の俺を込めてミゴーを抱きしめる。本当はもっと前にこうしていればよかった──その後悔すら含めた、限りない全部を込めて。
「く、はっ、あ……、ユージン、さんっ」
「うん、うんっ、あ、ミゴ、ぉっ、ミゴーっ」
「っは、ユージンさんっ、俺、……俺、はっ」
「あっ、いいよ、んっ、いいからっ、そのままっ……ふぅっ、あ、あ、あっ!」
俺の中にいるミゴーがぶるりと震えた。咄嗟に彼の背を強く引き寄せる。一番奥に届いたものが動きを止めて、先端から熱い液体が広がっていくのがわかる。
「ぅ、く……ぅっ!」
「あ、あ……っは、……ふぁ……っ」
同時に、腰部に奇妙な浮遊感を覚えた。さっきまで感じていた鈍重さがかき消えて、まるでこのままふわふわと飛んで行ってしまいそうな。それが射精の感覚だったことには、垂れ落ちた白濁を目にして初めて気づいた。
「はぁ……っ、……は……っ」
「……ふ……ぅっ」
最後の一滴まで余さず注ぎ終わってから、ミゴーが俺の上に倒れ込む。無遠慮に押し潰される形になっても、俺は動けなかった。それどころか彼の重みすら心地よかった。汗ばんだ背中を撫でながら、いまだ抜けない幸福感に酔う。精を放った直後にこんな深い余韻を感じるなんて、初めての経験だった。
「は、あ、やぅ、うぅんっ、あっ」
「っふ、……は、……っ」
声を抑える余裕は消し飛んでいた。貫かれ、揺さぶられ、手足を絡めて体を密着させる。前の二回と比べれば、確かにずいぶんと荒っぽいやり方だ。けれど抱き潰されるにはほど遠い。俺だって大人の男だ、きつく抱きしめられたくらいで折れはしないし、何よりミゴーの動きには、ほんの僅かに怯えにも似た遠慮が潜んでいる。
だから俺からも肌を寄せた。汗ばんだ皮膚が吸いつきあって、互いに跡を残すほどに。そこから生まれる快感は言わば副作用みたいなものだったけれど、躊躇を消し去る言い訳にはちょうどよかった。
「……さ……、……ジ、……んっ」
「はっ、ふぅっ、っく……ぅんっ」
弾む吐息の合間に、ほんの微かな声が聞こえる。恐らく無意識の独り言で、俺に聞かせるつもりもないようだ。けれど今まさに体を繋げている俺には、ミゴーの囁きもゼロ距離で届く。
「……ユージンさん……祐仁さんっ、ユージンさん……っ」
ミゴーは絞り出すように、幾度も繰り返し俺を呼んでいた。声の先にいるのが今の俺なのか過去の俺なのかは、きっと本人もわかっていない。だから全部の俺を込めてミゴーを抱きしめる。本当はもっと前にこうしていればよかった──その後悔すら含めた、限りない全部を込めて。
「く、はっ、あ……、ユージン、さんっ」
「うん、うんっ、あ、ミゴ、ぉっ、ミゴーっ」
「っは、ユージンさんっ、俺、……俺、はっ」
「あっ、いいよ、んっ、いいからっ、そのままっ……ふぅっ、あ、あ、あっ!」
俺の中にいるミゴーがぶるりと震えた。咄嗟に彼の背を強く引き寄せる。一番奥に届いたものが動きを止めて、先端から熱い液体が広がっていくのがわかる。
「ぅ、く……ぅっ!」
「あ、あ……っは、……ふぁ……っ」
同時に、腰部に奇妙な浮遊感を覚えた。さっきまで感じていた鈍重さがかき消えて、まるでこのままふわふわと飛んで行ってしまいそうな。それが射精の感覚だったことには、垂れ落ちた白濁を目にして初めて気づいた。
「はぁ……っ、……は……っ」
「……ふ……ぅっ」
最後の一滴まで余さず注ぎ終わってから、ミゴーが俺の上に倒れ込む。無遠慮に押し潰される形になっても、俺は動けなかった。それどころか彼の重みすら心地よかった。汗ばんだ背中を撫でながら、いまだ抜けない幸福感に酔う。精を放った直後にこんな深い余韻を感じるなんて、初めての経験だった。
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