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第七章・死ぬ前に一度だけ、セックスをしたかったあの人と。
7-13・本当は
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できるなら永遠に繋がっていたかった。けれど終わりは思ったよりずっと早くやってきた。我を忘れて没頭するしかできなかった俺が、その瞬間を先延ばしにできるわけもない。祐仁さんの身になってみれば、苦痛が長引かなくてよかったのかもしれない。
「祐仁さん、……祐仁さん祐仁さん、祐仁さんっ」
「あ、ぅ、ふぅっ……ん、っ、ぅあ……っ」
くしゃくしゃに乱れたシーツに、白い背中が縋ってしなる。搾り取るように引き締まる祐仁さんのそこは、それでも最初よりは少し、俺のかたちに慣れたように思えた。内心はどうあれ、肉体は俺を受け入れてくれている。祐仁さんの体にはもう、俺の痕跡が刻印されている。その下卑た達成感が、最後の一押しになった。
「っ、あ、は……ッ、ふ……っ!」
「あぐッ、……ッ、あ……!!」
逃げかける腰を、えぐり込むように引き寄せた。祐仁さんの最奥に嵌め込んで、内腑に注ぎ込むように射精する。
脈動に合わせて、狭い肉孔がびくんびくんと跳ねた。
額から垂れた汗が一滴、祐仁さんの背を転げ落ちてシーツに染みた。
本当はもっと、話したいことがたくさんあった。
祐仁さんと出会ってからの短い期間、俺は俺自身の話をほとんどしなかった。俺の世界は狭いから、何を話したところでつまらないと思っていた。でも話せばよかった。たぶん祐仁さんは、つまらなければつまらないと顔をしかめてくれるから。それでも人のいい彼は、俺のつまらない話をちゃんと覚えていてくれるはずだから。
祐仁さん自身のことだって、もっとたくさん聞けばよかった。大学、どうですか。園芸の他に趣味とかあるんですか。バイク乗るのって気持ちいいですか。俺が二十歳になったら、飲みに連れていってくれますか。俺の知らない世界のことだって、話してもらえれば想像くらいはできたはずだ。そしたら俺のちっぽけなわだかまりも、少しずつでも溶かしていけたかもしれない。
でも俺には時間がない。生まれつき造りの悪い俺の心臓には、ここのところより一層ガタが来ている。完全に壊れる日も遠くはないだろう。一年後か二年後か、あるいは来月、明日でも不思議はない。悠長に信頼関係を築くとか、あるいは親愛を深めるとか、まして男を好きになるなんて考えたこともない彼に、俺の思いを説くような時間は、ない。
だから今、俺たちはこんなことになっている。死神の来訪はきっかけにすぎない。俺は俺の意志で俺自身を人質に取って、祐仁さんに我が身を擲たせたにすぎない。
祐仁さんは、いい人だから。
死ぬ前に一度だけ、なんて懇願されたら、断れるわけがないのだ。
「祐仁さん、……祐仁さん祐仁さん、祐仁さんっ」
「あ、ぅ、ふぅっ……ん、っ、ぅあ……っ」
くしゃくしゃに乱れたシーツに、白い背中が縋ってしなる。搾り取るように引き締まる祐仁さんのそこは、それでも最初よりは少し、俺のかたちに慣れたように思えた。内心はどうあれ、肉体は俺を受け入れてくれている。祐仁さんの体にはもう、俺の痕跡が刻印されている。その下卑た達成感が、最後の一押しになった。
「っ、あ、は……ッ、ふ……っ!」
「あぐッ、……ッ、あ……!!」
逃げかける腰を、えぐり込むように引き寄せた。祐仁さんの最奥に嵌め込んで、内腑に注ぎ込むように射精する。
脈動に合わせて、狭い肉孔がびくんびくんと跳ねた。
額から垂れた汗が一滴、祐仁さんの背を転げ落ちてシーツに染みた。
本当はもっと、話したいことがたくさんあった。
祐仁さんと出会ってからの短い期間、俺は俺自身の話をほとんどしなかった。俺の世界は狭いから、何を話したところでつまらないと思っていた。でも話せばよかった。たぶん祐仁さんは、つまらなければつまらないと顔をしかめてくれるから。それでも人のいい彼は、俺のつまらない話をちゃんと覚えていてくれるはずだから。
祐仁さん自身のことだって、もっとたくさん聞けばよかった。大学、どうですか。園芸の他に趣味とかあるんですか。バイク乗るのって気持ちいいですか。俺が二十歳になったら、飲みに連れていってくれますか。俺の知らない世界のことだって、話してもらえれば想像くらいはできたはずだ。そしたら俺のちっぽけなわだかまりも、少しずつでも溶かしていけたかもしれない。
でも俺には時間がない。生まれつき造りの悪い俺の心臓には、ここのところより一層ガタが来ている。完全に壊れる日も遠くはないだろう。一年後か二年後か、あるいは来月、明日でも不思議はない。悠長に信頼関係を築くとか、あるいは親愛を深めるとか、まして男を好きになるなんて考えたこともない彼に、俺の思いを説くような時間は、ない。
だから今、俺たちはこんなことになっている。死神の来訪はきっかけにすぎない。俺は俺の意志で俺自身を人質に取って、祐仁さんに我が身を擲たせたにすぎない。
祐仁さんは、いい人だから。
死ぬ前に一度だけ、なんて懇願されたら、断れるわけがないのだ。
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