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第七章・死ぬ前に一度だけ、セックスをしたかったあの人と。
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服の下に隠れていた肌が、思いのほか白かった。やみくもに撫で上げた掌の下で、祐仁さんの内腿がわずかに震えた。
たったそれだけのことで俺はもう、世界のすべてを手にしたような気分になっていた。
「尻、上げてください、祐仁さん」
「……」
「祐仁さん?」
有無を言わせない口調で促すと、うつ伏せの彼がこちらに視線を投げた。微笑みを浮かべたまま受け止める。彼の失望も絶望も、今の俺を揺らがせることはない。
もの言いたげに俺を見つめる瞳が、やがて諦めたようにふっと伏せられた。そろそろと膝を立てて、祐仁さんは腰を持ち上げる。引き締まった腰を後ろから両手で掌握し、きつく閉じた入り口に欲望の証を押し当てた。祐仁さんの体が強張る。肩越しに振り向いた彼は、さすがに少し焦っているようだ。
「ま、待て、ってっ」
「待ちませんよ。待てると思いますか」
「いや、先に、ちょっと俺の話を」
「説教なら聞く気ないです」
「違っ、おい、御郷!」
「憎んでくれていいですよ。……忘れられるよりは、ずっと」
「み、…………ッ!!!」
無遠慮に、一気に祐仁さんの中に突き入れた。彼の喉から声にならない悲鳴が漏れる。恥骨と尾骨がぶち当たり、軋むような痛みが股座に響いた。もちろんそんなのは、今の俺にはどうでもいいことだったけれど。
はぁ、と深く息を吐いた。熱い肉が拒むように押し出すように、俺の一番敏感な部位を締め上げている。
「あっ、は……すげ」
「ふっ、う……ぅっ、……っ……ぅ」
「ねえ、祐仁さん、わかりますか。っはは……今、俺と祐仁さん、セックスしてるんですよ」
「……っ!」
シーツに崩れ落ちた肩が、過剰なほどにびくんと跳ねた。知らず笑みが浮かぶ。俺の言葉が、肉体が、直接的に祐仁さんに入り込んでいるという事実が、既に張り詰めきった欲情をたまらなく刺激した。
「く、はぁっ……祐仁さん、っ、祐仁さん……っ」
「う、ぐ、んぅっ……ふぅっ」
がむしゃらに腰を打ち付ける。柔肉と粘膜が擦れるたびに、今まで感じたことのない快楽が脳天を突き抜ける。
祐仁さんはベッドに顔を押し付けて、突かれるたびに漏れる呻きを必死で堪えていた。気に入らない。彼が隠そうとしているその声も全部、俺は欲しかった。後ろから覆い被さる姿勢を取って、細い顎を上向かせる。目尻には、生理現象と思われる涙がうっすらと浮かんでいた。
「祐仁さん」
「……み、ごう」
熱に浮かされるまま視線を絡めた。その瞬間だけは、自嘲も罪悪感も吹き飛んでいた。俺に抱かれる祐仁さんの顔を、網膜に焼き付けておきたかった。祐仁さんを抱く俺を、覚えていてほしかった。
不意に、祐仁さんが顔を持ち上げた。形のよい唇がうっすらと開く。弾む吐息の隙間に、何かを俺に伝えようとしているみたいだ。けれど彼は何も言わない。ただ切れ切れの喘ぎを漏らしながら、黙って俺を見つめているだけだ。
引き込まれるように顔を寄せた。誘われるままに唇を重ねる。最奥で混じり合っているのを忘れたみたいに、表面で触れ合うだけのキスだった。
祐仁さんは、拒まなかった。
たったそれだけのことで俺はもう、世界のすべてを手にしたような気分になっていた。
「尻、上げてください、祐仁さん」
「……」
「祐仁さん?」
有無を言わせない口調で促すと、うつ伏せの彼がこちらに視線を投げた。微笑みを浮かべたまま受け止める。彼の失望も絶望も、今の俺を揺らがせることはない。
もの言いたげに俺を見つめる瞳が、やがて諦めたようにふっと伏せられた。そろそろと膝を立てて、祐仁さんは腰を持ち上げる。引き締まった腰を後ろから両手で掌握し、きつく閉じた入り口に欲望の証を押し当てた。祐仁さんの体が強張る。肩越しに振り向いた彼は、さすがに少し焦っているようだ。
「ま、待て、ってっ」
「待ちませんよ。待てると思いますか」
「いや、先に、ちょっと俺の話を」
「説教なら聞く気ないです」
「違っ、おい、御郷!」
「憎んでくれていいですよ。……忘れられるよりは、ずっと」
「み、…………ッ!!!」
無遠慮に、一気に祐仁さんの中に突き入れた。彼の喉から声にならない悲鳴が漏れる。恥骨と尾骨がぶち当たり、軋むような痛みが股座に響いた。もちろんそんなのは、今の俺にはどうでもいいことだったけれど。
はぁ、と深く息を吐いた。熱い肉が拒むように押し出すように、俺の一番敏感な部位を締め上げている。
「あっ、は……すげ」
「ふっ、う……ぅっ、……っ……ぅ」
「ねえ、祐仁さん、わかりますか。っはは……今、俺と祐仁さん、セックスしてるんですよ」
「……っ!」
シーツに崩れ落ちた肩が、過剰なほどにびくんと跳ねた。知らず笑みが浮かぶ。俺の言葉が、肉体が、直接的に祐仁さんに入り込んでいるという事実が、既に張り詰めきった欲情をたまらなく刺激した。
「く、はぁっ……祐仁さん、っ、祐仁さん……っ」
「う、ぐ、んぅっ……ふぅっ」
がむしゃらに腰を打ち付ける。柔肉と粘膜が擦れるたびに、今まで感じたことのない快楽が脳天を突き抜ける。
祐仁さんはベッドに顔を押し付けて、突かれるたびに漏れる呻きを必死で堪えていた。気に入らない。彼が隠そうとしているその声も全部、俺は欲しかった。後ろから覆い被さる姿勢を取って、細い顎を上向かせる。目尻には、生理現象と思われる涙がうっすらと浮かんでいた。
「祐仁さん」
「……み、ごう」
熱に浮かされるまま視線を絡めた。その瞬間だけは、自嘲も罪悪感も吹き飛んでいた。俺に抱かれる祐仁さんの顔を、網膜に焼き付けておきたかった。祐仁さんを抱く俺を、覚えていてほしかった。
不意に、祐仁さんが顔を持ち上げた。形のよい唇がうっすらと開く。弾む吐息の隙間に、何かを俺に伝えようとしているみたいだ。けれど彼は何も言わない。ただ切れ切れの喘ぎを漏らしながら、黙って俺を見つめているだけだ。
引き込まれるように顔を寄せた。誘われるままに唇を重ねる。最奥で混じり合っているのを忘れたみたいに、表面で触れ合うだけのキスだった。
祐仁さんは、拒まなかった。
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