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第七章・死ぬ前に一度だけ、セックスをしたかったあの人と。
7-0・カケラ
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自分の運命なんて、とっくにわかっているつもりでいた。
だから思い込もうとしていた。触れ合った人たちの思い出と、ささやかでもいいから残せたもの。善人ぶった自己満足だとしても、他人に必要以上の重荷を背負わせなかったこと。持っていくなら、それくらいでいい。それだけあれば俺の人生、短くともそう悪いものではなかったはずだ、と。
だけど俺は知ってしまった。それもよりによって、終わりの直前に。行くべき場所が決まっているのに、もうちょっとだけここでまどろんでいたいと願ってしまう、白く暖かい陽だまりの存在を。
別に、一緒に連れて行きたいなんてことは思わない。俺がいなくなったあとの世界でも、あの人には幸せに生きていて欲しい。俺のことなんか忘れて。違う、忘れないで。忘れないで欲しい。誰に忘れられてもいいから、あなたの中だけには俺の存在を刻みつけていてほしい。言えたことは全部、言えなかったことも含めて。俺が生きていたこと。俺と話したこと。俺がもっとあなたと一緒にいたかったこと。俺があなたを好きだったこと。俺があなたの、そばにいたこと。
そして死ぬ前に俺が、一度だけでいいから──
だから思い込もうとしていた。触れ合った人たちの思い出と、ささやかでもいいから残せたもの。善人ぶった自己満足だとしても、他人に必要以上の重荷を背負わせなかったこと。持っていくなら、それくらいでいい。それだけあれば俺の人生、短くともそう悪いものではなかったはずだ、と。
だけど俺は知ってしまった。それもよりによって、終わりの直前に。行くべき場所が決まっているのに、もうちょっとだけここでまどろんでいたいと願ってしまう、白く暖かい陽だまりの存在を。
別に、一緒に連れて行きたいなんてことは思わない。俺がいなくなったあとの世界でも、あの人には幸せに生きていて欲しい。俺のことなんか忘れて。違う、忘れないで。忘れないで欲しい。誰に忘れられてもいいから、あなたの中だけには俺の存在を刻みつけていてほしい。言えたことは全部、言えなかったことも含めて。俺が生きていたこと。俺と話したこと。俺がもっとあなたと一緒にいたかったこと。俺があなたを好きだったこと。俺があなたの、そばにいたこと。
そして死ぬ前に俺が、一度だけでいいから──
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