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第六章・壊れてしまった物語を美しく終わらせるために、あの図書室で物語を分け合った先生と。
6-8・欲望の行末
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肉体の反応を先生の前に晒すのは、先生自身に触れるよりも更に一段深い抵抗があった。彼が抱いているであろう理想に、僕の体は反していないだろうか。なるべく手の内に隠すようにして、僕のそれを先生のそれに押しつける。中心で佇む先生のものはもはや、芯が入ったみたいに硬度を増していた。先端の、赤剥けみたく露出した肉を触れ合わせる。粘性のある感触が先っぽの穴から中まで入り込んでくるみたいで、腿の付け根がぞくりと震えた。
「っは、ぁ、ねえ、先生……っ、……先生は、僕を……、抱きたいと、思ってくれてたんでしょう」
「……っく」
「ふ、っ、この期に及んで、隠さないでよ……、僕はもう、死人なのにっ」
「……っ……!」
形のよい眉が、初めて苦しげに歪んだ。それで僕はなんだか少し得意になってしまった。好きな人にこんな顔をさせておいて、酷い話だ。調子に乗って腰を浮かせ、屹立したそれの上に跨る姿勢を取った。尻の割れ目に熱いものが滑る。男の肉体を持つ僕が、先生を受け入れられる唯一の箇所に。
「いいんだよ、先生。先生が先生であることを貫いたのは尊敬すべき事実だけど……今の僕はもう、人倫の及ぶ存在ではないから」
「能、交っ……」
「だから……ね」
「……っ!」
十分すぎるほど硬くなったものに手を添えて、あてがった部位に体重をかける。きつく閉じた筋肉をぐっと押し開いて、先生が僕のなかに入り込んでくる。
「は……ぁ……っ」
「……っふ……っ」
抵抗は、されなかった。それどころか先生の欲望は、歓喜を示すみたいに僕のなかで大きく膨れ上がっていた。加減を知らず絞めつける肉の孔が、無理に拡げられる痛みに悲鳴を上げる。ふっ、ふっと短い息を吐きながら、僕は先生の首に両腕ですがりつく。
「そうだ、私……私、は」
うわ言みたいな小さな声で、先生が囁いた。
「私は、貴方に……、……情欲、を……抱いていた」
「……うん」
「……貴方の肉体に、触れたい、と……貴方を、この腕に、……抱きたいと」
「うん。……ふふ、やっと認めてくれたね」
感極まった気分になりながら、広い背を両腕でかき抱く。けれど先生は責め苦を与えられる罪人の顔で、遠い天井をじっと見上げたままだ。
「許される、ことではない……、……貴方に、合わせる顔がない」
「まだそんな……、僕が、僕自身が、望んでるんだよ」
繋がった部分に力を込めて、焦れったく腰を揺する。僕がこれだけみっともない様を晒しているというのに、先生は目を逸らしたまま静かに首を振る。
「貴方に……、貴方には、素晴らしい物語だけを……見ていて欲しかった。……愛や、悲しみ、希望や……絶望……人間の精神を凝縮して、絞り出された……一雫だけを」
「え……」
「こんな……こんな、醜い、動物的な……性欲ではなく」
絞り出すようにそう呟いて、先生は目を閉じた。切れ長の目元が一瞬だけ光って見えたのは、恐らく光の加減による錯覚だろう。
「っは、ぁ、ねえ、先生……っ、……先生は、僕を……、抱きたいと、思ってくれてたんでしょう」
「……っく」
「ふ、っ、この期に及んで、隠さないでよ……、僕はもう、死人なのにっ」
「……っ……!」
形のよい眉が、初めて苦しげに歪んだ。それで僕はなんだか少し得意になってしまった。好きな人にこんな顔をさせておいて、酷い話だ。調子に乗って腰を浮かせ、屹立したそれの上に跨る姿勢を取った。尻の割れ目に熱いものが滑る。男の肉体を持つ僕が、先生を受け入れられる唯一の箇所に。
「いいんだよ、先生。先生が先生であることを貫いたのは尊敬すべき事実だけど……今の僕はもう、人倫の及ぶ存在ではないから」
「能、交っ……」
「だから……ね」
「……っ!」
十分すぎるほど硬くなったものに手を添えて、あてがった部位に体重をかける。きつく閉じた筋肉をぐっと押し開いて、先生が僕のなかに入り込んでくる。
「は……ぁ……っ」
「……っふ……っ」
抵抗は、されなかった。それどころか先生の欲望は、歓喜を示すみたいに僕のなかで大きく膨れ上がっていた。加減を知らず絞めつける肉の孔が、無理に拡げられる痛みに悲鳴を上げる。ふっ、ふっと短い息を吐きながら、僕は先生の首に両腕ですがりつく。
「そうだ、私……私、は」
うわ言みたいな小さな声で、先生が囁いた。
「私は、貴方に……、……情欲、を……抱いていた」
「……うん」
「……貴方の肉体に、触れたい、と……貴方を、この腕に、……抱きたいと」
「うん。……ふふ、やっと認めてくれたね」
感極まった気分になりながら、広い背を両腕でかき抱く。けれど先生は責め苦を与えられる罪人の顔で、遠い天井をじっと見上げたままだ。
「許される、ことではない……、……貴方に、合わせる顔がない」
「まだそんな……、僕が、僕自身が、望んでるんだよ」
繋がった部分に力を込めて、焦れったく腰を揺する。僕がこれだけみっともない様を晒しているというのに、先生は目を逸らしたまま静かに首を振る。
「貴方に……、貴方には、素晴らしい物語だけを……見ていて欲しかった。……愛や、悲しみ、希望や……絶望……人間の精神を凝縮して、絞り出された……一雫だけを」
「え……」
「こんな……こんな、醜い、動物的な……性欲ではなく」
絞り出すようにそう呟いて、先生は目を閉じた。切れ長の目元が一瞬だけ光って見えたのは、恐らく光の加減による錯覚だろう。
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