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第六章・壊れてしまった物語を美しく終わらせるために、あの図書室で物語を分け合った先生と。
6-7・本物は、僕だ
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欲情を唆る手段なんて、具体的にどうこうと知っているわけではなかった。知識として頭には入っていても、僕自身が望んだことはなかったから。それでも同じ性を持つ人間である以上、多少の感覚は理解している。
股上を指で弄ってホックを外した。この中には先生の、肩越しの体温どころじゃない生々しいものが収められている。なるべくなんでもない風を装って、呼吸を整えながらジッパーを下ろしていく。指の内側に、生暖かい柔らかさが触れた。
「……っ、ねえ、先生。反応、してくれないの」
「……」
下から見上げた先生の瞳は、依然として虚ろなままだ。奥底にかろうじて揺れているのは、驚愕や狼狽ではなく諦観の色。それで僕は僕のこのよからぬ行為が、先生にとって初めてのことではないのだと気づく。つまりは先生が見た幻覚の中での僕も、恐らく似たような悪戯をしていた。
なんとなく、苛立ちにも似た感情を覚えた。今ここで僕が受け取るべき動揺や恥じらいは、先生の中にいる幻の僕が持って行ってしまったというわけだ。正直に言って、気に食わない。恋人を寝取られた男というのはこんな気持ちになるのだろうか。そのやり場のない憤懣が、僕の中に燻っていた躊躇や嫌悪感を一息に吹き飛ばしてしまった。
黒くぴったりした下着の中から、行儀よく収められていたものをずるりと掴み出す。目の当たりにしたその物体が、生物固有のグロテスクな外観を帯びていることは否定しえない事実だ。けれど少なくとも、僕の俗悪な想像を超えて奇怪な見た目をしていたり、あるいは先生に対するイメージが変わるほど平均から外れた外形を持っているわけではなかったので、その点についてはほっとした。
肉色の粘膜に指を絡めて、上向かせるように擦り上げる。脈打つ熱がいくらかそこに流れ込んできても、先生は息の一つも荒げない。
「本当、堅物なんだから。それとももうこんなのは飽きちゃいましたか、先生」
「……」
「なんだか悔しいな。ねえ、幻の僕はどんなふうに貴方を誘惑したのかな。ひょっとして本物の僕より上手かった? ああ……そうか。こういうのを嫉妬って言うのかな」
「……」
「……いいよ。技術で上回れなくとも、本物は、僕だ」
吐き捨てた途端、先生の太腿がわずかに跳ねた。同時に手の中のものがぐんと硬度を増す。一瞬驚いた後、自分の口角が上がるのを感じた。そうか。先生の弱いところは、ここか。
持ち上がったそれに片手を添えたまま、もう片手で自分のホックを外す。腰をくねらせて下のみを脱ぎ捨てる様には、我ながら一種の間抜けさを感じずにはいられない。けれどもう、形振り構ってはいられない。
「先生……」
耳元で囁きながら、先生の膝に腰を下ろす。吐息には我知らず、腹の奥に溜まった熱が含まれていた。
股上を指で弄ってホックを外した。この中には先生の、肩越しの体温どころじゃない生々しいものが収められている。なるべくなんでもない風を装って、呼吸を整えながらジッパーを下ろしていく。指の内側に、生暖かい柔らかさが触れた。
「……っ、ねえ、先生。反応、してくれないの」
「……」
下から見上げた先生の瞳は、依然として虚ろなままだ。奥底にかろうじて揺れているのは、驚愕や狼狽ではなく諦観の色。それで僕は僕のこのよからぬ行為が、先生にとって初めてのことではないのだと気づく。つまりは先生が見た幻覚の中での僕も、恐らく似たような悪戯をしていた。
なんとなく、苛立ちにも似た感情を覚えた。今ここで僕が受け取るべき動揺や恥じらいは、先生の中にいる幻の僕が持って行ってしまったというわけだ。正直に言って、気に食わない。恋人を寝取られた男というのはこんな気持ちになるのだろうか。そのやり場のない憤懣が、僕の中に燻っていた躊躇や嫌悪感を一息に吹き飛ばしてしまった。
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「本当、堅物なんだから。それとももうこんなのは飽きちゃいましたか、先生」
「……」
「なんだか悔しいな。ねえ、幻の僕はどんなふうに貴方を誘惑したのかな。ひょっとして本物の僕より上手かった? ああ……そうか。こういうのを嫉妬って言うのかな」
「……」
「……いいよ。技術で上回れなくとも、本物は、僕だ」
吐き捨てた途端、先生の太腿がわずかに跳ねた。同時に手の中のものがぐんと硬度を増す。一瞬驚いた後、自分の口角が上がるのを感じた。そうか。先生の弱いところは、ここか。
持ち上がったそれに片手を添えたまま、もう片手で自分のホックを外す。腰をくねらせて下のみを脱ぎ捨てる様には、我ながら一種の間抜けさを感じずにはいられない。けれどもう、形振り構ってはいられない。
「先生……」
耳元で囁きながら、先生の膝に腰を下ろす。吐息には我知らず、腹の奥に溜まった熱が含まれていた。
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