51 / 115
第五章・きっとこの手の中に戻ってきてくれるはずの、今はまだ遠いお前と。
5-0・カケラ
しおりを挟む
決定的な分岐点など、本当はなかったのかもしれない。
新しい扉を開ける勇気。今の関係を壊す覚悟。色々なものが少しずつ足りなかった。今俺が目の当たりにしている現実に至ったのは、考えてみれば当然の帰結だ。
なのにあのときの俺は、そんな自分を不甲斐ないとすら思っていなかった。あいつが俺とは別の道で幸せを見つけられるのなら、傍らに俺がいなくても構わない。達観したつもりのそんなセリフで、自分を騙し続けていた。
馬鹿な話だ。俺がいなくちゃあいつは幸せになれない。現に、なれなかった。ろくでもない奴らに付け入られて、地に落ちて、踏みつけられた。最悪だ。あまりに救いがたいバッドエンドだ。
ずっと、悔やみ続けてきた。偽善に心を囚われて、取り返しのつかない真似をした。俺がもう少しうまくやれば、あいつだってもしかしたら──いや、きっと、絶対に、俺と一緒に在ることを望んでくれたはずなのに!
ああ、だから。
今度は絶対に、間違わない。
あいつの幸福は全部、俺のこの手の中にある。
新しい扉を開ける勇気。今の関係を壊す覚悟。色々なものが少しずつ足りなかった。今俺が目の当たりにしている現実に至ったのは、考えてみれば当然の帰結だ。
なのにあのときの俺は、そんな自分を不甲斐ないとすら思っていなかった。あいつが俺とは別の道で幸せを見つけられるのなら、傍らに俺がいなくても構わない。達観したつもりのそんなセリフで、自分を騙し続けていた。
馬鹿な話だ。俺がいなくちゃあいつは幸せになれない。現に、なれなかった。ろくでもない奴らに付け入られて、地に落ちて、踏みつけられた。最悪だ。あまりに救いがたいバッドエンドだ。
ずっと、悔やみ続けてきた。偽善に心を囚われて、取り返しのつかない真似をした。俺がもう少しうまくやれば、あいつだってもしかしたら──いや、きっと、絶対に、俺と一緒に在ることを望んでくれたはずなのに!
ああ、だから。
今度は絶対に、間違わない。
あいつの幸福は全部、俺のこの手の中にある。
0
お気に入りに追加
43
あなたにおすすめの小説

【完結】国に売られた僕は変態皇帝に育てられ寵妃になった
cyan
BL
陛下が町娘に手を出して生まれたのが僕。後宮で虐げられて生活していた僕は、とうとう他国に売られることになった。
一途なシオンと、皇帝のお話。
※どんどん変態度が増すので苦手な方はお気を付けください。

お客様と商品
あかまロケ
BL
馬鹿で、不細工で、性格最悪…なオレが、衣食住提供と引き換えに体を売る相手は高校時代一度も面識の無かったエリートモテモテイケメン御曹司で。オレは商品で、相手はお客様。そう思って毎日せっせとお客様に尽くす涙ぐましい努力のオレの物語。(*ムーンライトノベルズ・pixivにも投稿してます。)

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

【完結】I adore you
ひつじのめい
BL
幼馴染みの蒼はルックスはモテる要素しかないのに、性格まで良くて羨ましく思いながらも夏樹は蒼の事を1番の友達だと思っていた。
そんな時、夏樹に彼女が出来た事が引き金となり2人の関係に変化が訪れる。
※小説家になろうさんでも公開しているものを修正しています。

淫愛家族
箕田 はる
BL
婿養子として篠山家で生活している睦紀は、結婚一年目にして妻との不仲を悩んでいた。
事あるごとに身の丈に合わない結婚かもしれないと考える睦紀だったが、以前から親交があった義父の俊政と義兄の春馬とは良好な関係を築いていた。
二人から向けられる優しさは心地よく、迷惑をかけたくないという思いから、睦紀は妻と向き合うことを決意する。
だが、同僚から渡された風俗店のカードを返し忘れてしまったことで、正しい三人の関係性が次第に壊れていく――

僕はお別れしたつもりでした
まと
BL
遠距離恋愛中だった恋人との関係が自然消滅した。どこか心にぽっかりと穴が空いたまま毎日を過ごしていた藍(あい)。大晦日の夜、寂しがり屋の親友と二人で年越しを楽しむことになり、ハメを外して酔いつぶれてしまう。目が覚めたら「ここどこ」状態!!
親友と仲良すぎな主人公と、別れたはずの恋人とのお話。
⚠️趣味で書いておりますので、誤字脱字のご報告や、世界観に対する批判コメントはご遠慮します。そういったコメントにはお返しできませんので宜しくお願いします。
大晦日あたりに出そうと思ったお話です。


ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる