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第四章・生涯で唯一一度もお相手願えなかった、気位の高い猫みたいな男と。
4-8・ご主人様
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猫塚の手が、俺の顎を掴んで上向ける。細い体のどこに隠していたのか、問いただしたくなるほどの力強さで。
「そろそろ仕上げといこうじゃないか。さあ、ワン君」
「はっ、あ゛ッ、……あ……?」
「キミが自分で選ぶんだ。キミの主人は誰か。キミの肉体が、真に求めているものは何か。キミ自身で指し示してみせなさい」
「……!」
「本当は自分でももう、わかっているんだろう?」
顎から喉元、そして鎖骨を、猫塚の指がつうとなぞっていく。体の中心で猛る男性の部位よりも、彼自身を咥えさせられている部分が反応を示した。ひくひくと収縮するそこから、快楽が背骨を通って脳を直撃する。
(……あぁ……)
視界が揺らぐ。猫塚の背後に下がったシャンデリヤの光が、蠟燭の火のように頼りなく揺らめいている。唾のたまった口元から、ぴちゃりと下劣な音が聞こえた。餌欲しさに涎を垂らす犬の有様だ。どこか他人事のようにそう思う。
「直登」
俺の心臓の上に手を当てて、猫塚が初めてその名を呼んだ。口ぶりに躾の厳しさは微塵も感じられず、ただ俺の背を押す甘ったるい優しさだけが込められている。
限界だった。
「……っと」
「うん?」
「もっと……猫塚の、雄、で……俺の、ここを」
拡げた脚の中心、俺たちが繋がっている部分に目を落とす。身体感覚のままならない中で、どうにか臀部に力を込めた。動きを止めたままでも存在感のありすぎるものを、意志を込めてきゅっと締めつける。
「突いて……もっと、気持ちよくしてくれ……っ、猫塚の、男根でっ……お、俺の、尻穴をっ!」
「……はっ」
「は、早くっ……あぁ、もっと、もっと……っ!」
腰を揺らして強請る俺をまるで無視して、猫塚は俺の耳元で囁いた。服従を示す言葉だ。人としての尊厳も雄としての誇りも全て投げ捨てて、彼こそが俺の飼い主だと認める言葉だ。
その一言だけを残して猫塚は、穏やかな笑みで俺をじっと見つめている。つまりは今こそが選択のとき、ということだ。理解した瞬間、俺は一瞬の躊躇もなく、与えられた言葉を復唱していた。
「ご……ご主人、様っ……!!」
口にした瞬間、中の肉壁と、触れてもいない自分のものが、同時にびくんと跳ねた。
ああ、そうか。
俺は、これが欲しかったのか。
「よく、言えました」
猫塚の手が俺の頭を一撫でする。ほうっと息をつく暇もあらばこそ、その手が再び俺の内ももに添えられる。
「あ、ぁ……♡」
喉からこぼれ出たのはもはや制止ではなく、期待に満ちたため息だった。
「そろそろ仕上げといこうじゃないか。さあ、ワン君」
「はっ、あ゛ッ、……あ……?」
「キミが自分で選ぶんだ。キミの主人は誰か。キミの肉体が、真に求めているものは何か。キミ自身で指し示してみせなさい」
「……!」
「本当は自分でももう、わかっているんだろう?」
顎から喉元、そして鎖骨を、猫塚の指がつうとなぞっていく。体の中心で猛る男性の部位よりも、彼自身を咥えさせられている部分が反応を示した。ひくひくと収縮するそこから、快楽が背骨を通って脳を直撃する。
(……あぁ……)
視界が揺らぐ。猫塚の背後に下がったシャンデリヤの光が、蠟燭の火のように頼りなく揺らめいている。唾のたまった口元から、ぴちゃりと下劣な音が聞こえた。餌欲しさに涎を垂らす犬の有様だ。どこか他人事のようにそう思う。
「直登」
俺の心臓の上に手を当てて、猫塚が初めてその名を呼んだ。口ぶりに躾の厳しさは微塵も感じられず、ただ俺の背を押す甘ったるい優しさだけが込められている。
限界だった。
「……っと」
「うん?」
「もっと……猫塚の、雄、で……俺の、ここを」
拡げた脚の中心、俺たちが繋がっている部分に目を落とす。身体感覚のままならない中で、どうにか臀部に力を込めた。動きを止めたままでも存在感のありすぎるものを、意志を込めてきゅっと締めつける。
「突いて……もっと、気持ちよくしてくれ……っ、猫塚の、男根でっ……お、俺の、尻穴をっ!」
「……はっ」
「は、早くっ……あぁ、もっと、もっと……っ!」
腰を揺らして強請る俺をまるで無視して、猫塚は俺の耳元で囁いた。服従を示す言葉だ。人としての尊厳も雄としての誇りも全て投げ捨てて、彼こそが俺の飼い主だと認める言葉だ。
その一言だけを残して猫塚は、穏やかな笑みで俺をじっと見つめている。つまりは今こそが選択のとき、ということだ。理解した瞬間、俺は一瞬の躊躇もなく、与えられた言葉を復唱していた。
「ご……ご主人、様っ……!!」
口にした瞬間、中の肉壁と、触れてもいない自分のものが、同時にびくんと跳ねた。
ああ、そうか。
俺は、これが欲しかったのか。
「よく、言えました」
猫塚の手が俺の頭を一撫でする。ほうっと息をつく暇もあらばこそ、その手が再び俺の内ももに添えられる。
「あ、ぁ……♡」
喉からこぼれ出たのはもはや制止ではなく、期待に満ちたため息だった。
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