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第四章・生涯で唯一一度もお相手願えなかった、気位の高い猫みたいな男と。
4-5・犬の躾
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「お、おい、さすがにそこまでは許してないぞ!」
思わず恥も外聞もなく声を上げる。当たり前だ。この世の全ての男も女も、俺の前では常に抱かれる側だ。雄を雌として抱いた経験こそあれど、俺自身が後ろを弄られたことなど一度もない。それをこんなところで易々と、猫塚などに許してたまるものか。
けれどこちつはまるでそれが当然の権利であるかのごとく、俺の後孔を指の腹で撫で上げる。
「まったく、ちょっと触られた程度で何をびくびくしているんだか。男の度量がどうとか言っていたのはどうしたい」
「ぐっ……だ、だが、どう考えてもおかしいだろう、俺が抱かれる側なんてっ」
「どうして? オレも男で、キミも男だ。オレはキミを抱きたいし、キミはオレの好きにさせると言った。何もおかしいことなんてないだろう」
「~~っ、と、とにかく、そんなところまで好きにさせるつもりはない! 謹んでお断り、……っ!?」
ソファから立ち上がろうとした瞬間、初めて違和感に気が付いた。立てない。足に力が入らない。この場から逃げ出すことはおろか、自ら姿勢を変えることすらできない。
愕然とする俺の表情から、起きている事態を把握したらしい。猫塚が目を吊り上げて、嫌味なくらい嬌艶に笑う。
「へえ、なるほどね。どうやら例の黒服様方は、野良犬への厳しい躾をご所望のようだ」
「なっ……!?」
「となればオレも、期待に応えないわけにはいかないね」
「や、やめっ、あっ!」
塞ぎたくとも塞げない口から、脊髄を通じた叫びが漏れる。猫塚の指先が、つぷりと穴の中に沈んだからだ。全身に怖気が走る。ほんの爪の先ばかりを挿れられただけなのに、圧迫感で息ができない。
「ぐ……うっ、……うぁっ……!」
「ふふ。辛いかい、ワン君」
「あ、たり前、だっ……!」
「おお、よしよし、かわいそうに。力を抜いて。男根の快感に集中してご覧」
穴を責める手は止めぬまま、猫塚は俺の男根を再び口に含んだ。太腿の皮膚がびくりと引き攣れる。内臓を直に触れられているせいか、粘膜の感覚がことごとく過敏になっている。
「あっ、……く、ぁっ……ふぅ……っ!」
「そう。上手だ……ん、わかるかい? 少しずつ……キミの奥まで、入っていくよ」
「うあっあっ、くぅっ……んんっ!」
「ああ、ここまで来たらもう大丈夫。ほうら、どんどん飲み込み始めただろう?」
「っあ、あぁっ……!」
顎をのけ反らせて天を仰いだ。あの細い人差し指が信じられないほどの存在感を持って、俺の腹の中を無遠慮に突き進んでくる。あり得ない。信じられない。男としての矜持も自負も、猫塚の指一本ごときにたやすく割られてしまう。
指の根元まで含ませたところで、猫塚はぴたりと動きを止めた。反射的に深い息を吐く。だがその一瞬の隙を、猫塚はここぞとばかりに突いてくる。
「ワン君。まだ終わりじゃないよ」
「は……? あっ、あぅっ!?」
細い指が中でくいと曲げられ、ある一点を引っ掻くように掠めた。瞬間、意志とは無関係に、括約筋がきゅうと指を締め付ける。猫塚が触れたそこは俺もよく知る、だが自分が責められる側になるとは思いもよらなかった部位。すなわち、前立腺だった。
思わず恥も外聞もなく声を上げる。当たり前だ。この世の全ての男も女も、俺の前では常に抱かれる側だ。雄を雌として抱いた経験こそあれど、俺自身が後ろを弄られたことなど一度もない。それをこんなところで易々と、猫塚などに許してたまるものか。
けれどこちつはまるでそれが当然の権利であるかのごとく、俺の後孔を指の腹で撫で上げる。
「まったく、ちょっと触られた程度で何をびくびくしているんだか。男の度量がどうとか言っていたのはどうしたい」
「ぐっ……だ、だが、どう考えてもおかしいだろう、俺が抱かれる側なんてっ」
「どうして? オレも男で、キミも男だ。オレはキミを抱きたいし、キミはオレの好きにさせると言った。何もおかしいことなんてないだろう」
「~~っ、と、とにかく、そんなところまで好きにさせるつもりはない! 謹んでお断り、……っ!?」
ソファから立ち上がろうとした瞬間、初めて違和感に気が付いた。立てない。足に力が入らない。この場から逃げ出すことはおろか、自ら姿勢を変えることすらできない。
愕然とする俺の表情から、起きている事態を把握したらしい。猫塚が目を吊り上げて、嫌味なくらい嬌艶に笑う。
「へえ、なるほどね。どうやら例の黒服様方は、野良犬への厳しい躾をご所望のようだ」
「なっ……!?」
「となればオレも、期待に応えないわけにはいかないね」
「や、やめっ、あっ!」
塞ぎたくとも塞げない口から、脊髄を通じた叫びが漏れる。猫塚の指先が、つぷりと穴の中に沈んだからだ。全身に怖気が走る。ほんの爪の先ばかりを挿れられただけなのに、圧迫感で息ができない。
「ぐ……うっ、……うぁっ……!」
「ふふ。辛いかい、ワン君」
「あ、たり前、だっ……!」
「おお、よしよし、かわいそうに。力を抜いて。男根の快感に集中してご覧」
穴を責める手は止めぬまま、猫塚は俺の男根を再び口に含んだ。太腿の皮膚がびくりと引き攣れる。内臓を直に触れられているせいか、粘膜の感覚がことごとく過敏になっている。
「あっ、……く、ぁっ……ふぅ……っ!」
「そう。上手だ……ん、わかるかい? 少しずつ……キミの奥まで、入っていくよ」
「うあっあっ、くぅっ……んんっ!」
「ああ、ここまで来たらもう大丈夫。ほうら、どんどん飲み込み始めただろう?」
「っあ、あぁっ……!」
顎をのけ反らせて天を仰いだ。あの細い人差し指が信じられないほどの存在感を持って、俺の腹の中を無遠慮に突き進んでくる。あり得ない。信じられない。男としての矜持も自負も、猫塚の指一本ごときにたやすく割られてしまう。
指の根元まで含ませたところで、猫塚はぴたりと動きを止めた。反射的に深い息を吐く。だがその一瞬の隙を、猫塚はここぞとばかりに突いてくる。
「ワン君。まだ終わりじゃないよ」
「は……? あっ、あぅっ!?」
細い指が中でくいと曲げられ、ある一点を引っ掻くように掠めた。瞬間、意志とは無関係に、括約筋がきゅうと指を締め付ける。猫塚が触れたそこは俺もよく知る、だが自分が責められる側になるとは思いもよらなかった部位。すなわち、前立腺だった。
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