死ぬ前に一度だけ、セックスしたい人はいますか?──自称ノンケな欲望担当天使のつがわせお仕事日記

スイセイ

文字の大きさ
上 下
41 / 115
第四章・生涯で唯一一度もお相手願えなかった、気位の高い猫みたいな男と。

4-4・お座り

しおりを挟む
 先刻まで猫塚が座っていた、葡萄酒色のボックスソファ。天鵞絨びろうど張りの滑らかな座面に、俺は大きく脚を開いて座っていた。大きくくつろげた股間から、天を指す魔羅を覗かせて。

「へえ。なかなか立派なものをお持ちでいらっしゃる」

 股の間に跪いた猫塚が、怖じ気もせずにくすりと笑う。鼻先に突きつけた亀頭を、そよ風のような吐息がくすぐった。

「お褒めの言葉、どうも。大きさを誇るのも無粋な話だが、羨望に足る逸品だとは自負しているよ」
「……まったく。閨の中でまでそんな具合なのか、キミは」
「事実だろう? 謙遜してみたところで仕方がない」
「ああ、そう」

 そこまで言って猫塚は、前触れも何もなくいきなりぱくりと先端に食いついた。零れそうになった声を、すんでのところで止める。

「……っは、……なるほど」

 猫塚はちらりと俺を見上げ、鼻先でふ、と笑う。強がりに気づかれたか。初手で不覚を取ってしまったが、それほどまでに猫塚の口淫は上手かった。竿を強めに握りながら、唾液を塗すように頭部をねぶる。尖らせた舌先でくぼみをほじくり、血の脈動に合わせて裏筋を舐め上げる。乱雑さと繊細さを組み合わせた動作の一つ一つが、男を悦ばせる術へと繋がっていた。

「上手いっ……じゃないか。っふ、どこで……覚えた、こんな……」
「っふ……さあね。キミとそう変わらない稽古のはずだよ……んっ」
「く、ぁ……っ!」

 滲み出した先走りを吸われた瞬間、迂闊なことに、声が漏れた。もちろん猫塚は耳聡く聞きつけている。

「ふうん。なかなか可愛らしい声を出すじゃないか」
「……っ……は、意趣返しの……つもりか?」
「まさか。こうなった以上はお互い楽しみたいだけさ」
「っは……っ!」

 しなやかな指が玉を転がし、やわやわと揉みつける。限界が急速に近づいてきていた。このまま一方的にしてやられるわけにはいかない。猫塚の肩に手を伸ばそうとしたとき、奴の瞳が俺を睨んだ。

「駄目」
「なんだって?」
「オレの好きにさせるって約束しただろう。動いていいとは一言も言っていないよ」
「っ、しかし」
「ワン君。……お座り」

 優しく、しかし酷薄な声で、猫塚は高飛車に言いつける。条件反射的に体が固まった。本当に、躾けられる犬になった気分だ。大人しく腕を下ろした俺を、猫塚が嫣然と笑う。

「いい子だ」
「くぁ……っ!」

 尿道に指をねじ込むようにして、猫塚が俺のものを責め苛む。逃げ場のない腰が無自覚に揺らいだ。その隙を狙いすまして、猫塚の手が尻の方へと滑り込む。

「っ、は、猫、塚……っ、……あ?」
「ふふ。そのままいい子にしていてごらん? 桃源郷の悦楽を教えてあげる」
「なっ、ま、待て、猫塚っ!」

 細く冷たい手が辿った道筋に、背筋がぞくりと寒くなる。奴の指先は明らかに、俺の後ろの穴を狙って忍び寄ってきていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

アルバイトで実験台

夏向りん
BL
給料いいバイトあるよ、と教えてもらったバイト先は大人用玩具実験台だった! ローター、オナホ、フェラ、玩具責め、放置、等々の要素有り

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

上司と俺のSM関係

雫@更新予定なし
BL
タイトルの通りです。

お客様と商品

あかまロケ
BL
馬鹿で、不細工で、性格最悪…なオレが、衣食住提供と引き換えに体を売る相手は高校時代一度も面識の無かったエリートモテモテイケメン御曹司で。オレは商品で、相手はお客様。そう思って毎日せっせとお客様に尽くす涙ぐましい努力のオレの物語。(*ムーンライトノベルズ・pixivにも投稿してます。)

【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます

夏ノ宮萄玄
BL
 オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。  ――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。  懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。  義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』 高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。 その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。 そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

処理中です...