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第二章・喪われし魂の救済を求めて、最期まで心を焦がしてやまなかった彼と。
2-6・「ごめん」
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脚を大きく広げ、後ろ手に掌をついて軽くのけ反った。下に敷かれた朝比奈に、僕と彼との結合部を見せつけるみたいに。生きた肉の生温かさが、腹筋の奥深くで脈打っている。朝比奈と僕が繋がっている事実が、避け得ぬ肉体の感触として証明されている。
「くっ、ははっ……ふは、ははははっ!」
肩で息をつきながら朝比奈の顔を見下ろした。朝比奈は打たれたように呆けた顔で僕を見上げている。腹の中の笑いが増幅して、奥にいる朝比奈の熱と混ざり合う。僅かに腰を浮かせてから落とすと、朝比奈の顔が苦しげに歪む。
「あははっ、ざまあみろ、朝比奈、朝比奈! はっ、どんな気分だ、僕なんかの卑しい肉穴に陽根を犯されて、穢されて! あはっ、あははははっ!」
「く、あっ、神母、坂っ、待て、って……うあぁっ!」
「っふ、そうかそうか、情緒はどうあれ欲望は正直だなあ! 誇りより保身より肉の快楽が勝るか、ええ!?」
「うあ、あ……、あ、はぁっ、……さ、かっ……!」
体の下から朝比奈の手が伸びてきて、僕の腰をぐっと捕らえた。抵抗するつもりか。指に力を込めてシーツを掴んだが、予想に反して朝比奈は僕の身を退かそうともしない。どころかその手の動きはむしろ、僕の律動に弱々しく同調するかのような。
歓喜が僕の胸いっぱいに満ちた。朝比奈を咥え込んだ穴がぎゅうっと締まり、彼の血管の形まで僕の内壁に刻み込む。自分の性器までもが悦びに脈打っているのが、拡げた脚の間にはっきりと見えた。
「はっ、あっ、ざまあみろ、ふふっ、ざまあみろ! いくらオマエだって、こんなの他の誰にも言えない、っ、僕と、朝比奈、だけのっ、……連累だ、共謀だ、同罪だ、……僕たち、だけのッ……!」
「……っ!!」
朝比奈の目が大きく見開かれる。一瞬、彼の全身が硬直したように感じた。僕が不審に思う前に、朝比奈は唐突に腹筋を使って起き上がる。下腹のあたりに乗っかっていた僕は自然、繋がった部分を支点に朝比奈の腿の上までずり落とされた。
「うあっ」
「神母坂、いげさかっ……ごめん、ごめん、俺っ……ごめん……!」
「……ッ!?」
今度は僕が硬直する番だった。涙声で囁かれた謝罪と共に、朝比奈の腕が僕の背を強くかき抱く。さながら愛するもののしかばねを、涙ながらに抱き寄せる悲劇の登場人物みたく。
彼が何に対して謝っているのか。心当たりはある。嘲笑のつもりで作った笑みの引き攣りは、僕を抱いたままの朝比奈にはどうやら見られずに済んだ。
「はっ……この期に及んで偽善に逃げるかよ。興が削がれる、やめろ」
「違う、そんなんじゃない! 今さらだけど……許してくれ、なんて言わないけど、けどオレずっとっ、謝り、たくてっ!」
「……ッ、やめろと言っている!!」
フラッシュバックする痛みの記憶に、反射的に朝比奈の上から飛びのこうとした。けれどさっきまでとは打って変わって、今度は朝比奈が僕を放してくれない。ずきずきと痛みが響くみたいに、彼の脈動が僕の中に響く。思い出したくもない傷の痛みが、僕の脳髄を支配し始めていた。
「くっ、ははっ……ふは、ははははっ!」
肩で息をつきながら朝比奈の顔を見下ろした。朝比奈は打たれたように呆けた顔で僕を見上げている。腹の中の笑いが増幅して、奥にいる朝比奈の熱と混ざり合う。僅かに腰を浮かせてから落とすと、朝比奈の顔が苦しげに歪む。
「あははっ、ざまあみろ、朝比奈、朝比奈! はっ、どんな気分だ、僕なんかの卑しい肉穴に陽根を犯されて、穢されて! あはっ、あははははっ!」
「く、あっ、神母、坂っ、待て、って……うあぁっ!」
「っふ、そうかそうか、情緒はどうあれ欲望は正直だなあ! 誇りより保身より肉の快楽が勝るか、ええ!?」
「うあ、あ……、あ、はぁっ、……さ、かっ……!」
体の下から朝比奈の手が伸びてきて、僕の腰をぐっと捕らえた。抵抗するつもりか。指に力を込めてシーツを掴んだが、予想に反して朝比奈は僕の身を退かそうともしない。どころかその手の動きはむしろ、僕の律動に弱々しく同調するかのような。
歓喜が僕の胸いっぱいに満ちた。朝比奈を咥え込んだ穴がぎゅうっと締まり、彼の血管の形まで僕の内壁に刻み込む。自分の性器までもが悦びに脈打っているのが、拡げた脚の間にはっきりと見えた。
「はっ、あっ、ざまあみろ、ふふっ、ざまあみろ! いくらオマエだって、こんなの他の誰にも言えない、っ、僕と、朝比奈、だけのっ、……連累だ、共謀だ、同罪だ、……僕たち、だけのッ……!」
「……っ!!」
朝比奈の目が大きく見開かれる。一瞬、彼の全身が硬直したように感じた。僕が不審に思う前に、朝比奈は唐突に腹筋を使って起き上がる。下腹のあたりに乗っかっていた僕は自然、繋がった部分を支点に朝比奈の腿の上までずり落とされた。
「うあっ」
「神母坂、いげさかっ……ごめん、ごめん、俺っ……ごめん……!」
「……ッ!?」
今度は僕が硬直する番だった。涙声で囁かれた謝罪と共に、朝比奈の腕が僕の背を強くかき抱く。さながら愛するもののしかばねを、涙ながらに抱き寄せる悲劇の登場人物みたく。
彼が何に対して謝っているのか。心当たりはある。嘲笑のつもりで作った笑みの引き攣りは、僕を抱いたままの朝比奈にはどうやら見られずに済んだ。
「はっ……この期に及んで偽善に逃げるかよ。興が削がれる、やめろ」
「違う、そんなんじゃない! 今さらだけど……許してくれ、なんて言わないけど、けどオレずっとっ、謝り、たくてっ!」
「……ッ、やめろと言っている!!」
フラッシュバックする痛みの記憶に、反射的に朝比奈の上から飛びのこうとした。けれどさっきまでとは打って変わって、今度は朝比奈が僕を放してくれない。ずきずきと痛みが響くみたいに、彼の脈動が僕の中に響く。思い出したくもない傷の痛みが、僕の脳髄を支配し始めていた。
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