死ぬ前に一度だけ、セックスしたい人はいますか?──自称ノンケな欲望担当天使のつがわせお仕事日記

スイセイ

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第一章・病に倒れたおれをいつも隣で励ましてくれた、幼なじみのあいつと。

1-6・だっておれ、昔からずっと

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 唇を離してからすぐに、光亮は俺をベッドに横たえた。背中がぶつからないように手を添えて、ゆっくりと優しく。そのくらいの気遣いはできるんだな、と、ちょっとだけおかしくなる。たぶんおれが病人だからってのもあるんだろうけど。
 両手を白いシーツについて、光亮がおれの上にのしかかる。体温まで伝わってくるくらい近くに、光亮の裸の胸が存在している。こんな距離で裸を見るのだって、なんなら初めてってわけじゃない。なのにいつもよりずっと胸が高鳴るのは、今の光亮がたった一人、おれだけをまっすぐに見つめていてくれるからだ。
 不意に、光亮の膝がおれの足を割った。触れた箇所に息を詰める。光亮はちらりと下を見て、それからくすっと小さく笑う。

「彬。勃ってる」
「う、うぅ……言うなよぉ」
「いいよ別に、隠さなくたって。それに俺だって、ほら」
「え? ……っ」

 敏感な場所に触れた感触に、もう一度息を飲んだ。光亮のそれもおれと同じように、大きく張りつめて上を向いているのがわかった。光亮がわずかに腰を動かす。張りつくようにくっついたおれと光亮のアレが、皮をたわませてゆるゆると擦れあう。なんてことない刺激のはずなのに、自分でするより何倍も気持ちよかった。光亮がおれで勃ってくれている。その事実を体で感じるだけで、今すぐにでも暴発してしまいそうだ。

「ふぁ、あっ、光亮……こーすけぇっ、やっ、変っ、おれ、へんっ」
「っ……」

 快感の逃げ場を求めて、目の前の首に腕を回してすがりつく。不意に光亮の動きがぴたりと止まった。滲んだ涙越しに見上げた彼は、なんだかやけに切羽詰まったような顔をしていた。

「彬……彬。どうしよう、俺」
「ん、ぁ……? 光亮、なに……?」
「俺、ごめん……俺。……お前の中に、入れたいかも」
「へあぁ……?」

 回らない頭とろれつのまま、おれは首をかしげた。なんでそんな申し訳なさそうな顔をしてるんだろう。ごめんも何もおれが望んだことなのに。ああ、でも、そういえばちゃんと言ってなかったっけ。そしたらこれが正真正銘最期のチャンスだ。

「いい、よ」
「いいのか、ほんとに」
「うん。ってかおれほんとは、いつか光亮がおれのこと、だ、抱いてくれたらな、って思ってた」
「……彬」
「ごめん。だって」

 回した腕をぎゅっと引き寄せて、光亮を抱きしめる。

「だっておれ、昔からずっと光亮のこと……好きだったんだ」

 本当なら、死ぬまで伝えるはずはなかった告白。光亮は少なくとも、気持ち悪いとは思わずにいてくれたみたいだ。だって触れ合ったあの部分が、萎えるどころかびくんと勢いを増している。こんなとこで気持ちを伝えるなんて、ロマンのかけらも身もふたもないけれど。でもきっとセックスってそういうもんなんだろう。わかんないけど、きっと。
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