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189・ぶりっ子ピンク is forever
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尽きることのない歓待と、喜びと感動の声が続く中。騎士サマたちの間を縫って、周りより頭一つ背の低いミマが近づいてきたことに俺はふと気がついた。
雰囲気で何かを察したのか、周囲の騎士サマたちも自然に引いていく。迷いなく、俺たちに向かって歩いてきた彼は、ジルコンに抱き上げられた俺を見上げる位置で足を止めた。思わず表情を引き締める。……いや、まあ、真顔になったところでこの状態で何をってところではあるんだけど。
「……ミマ」
「……」
俺とジルコンが見守る中、ミマは口を開いて何かを言いかけては、結局ためらうように黙りこむ。それを何回か繰り返した後。ふるふると首を振り、俺に向けてビシッと指を突き付けた。
「お前……お前がっ、ジルコン様とのエンディングを選んだならっ」
「お、おう」
「僕だって諦めないからな。他の騎士サマたちからの寵愛は、やっぱり僕だけのものになるんだからなっ!」
「えぇ!? や、それはちょっと!!」
思わず上げてしまった声に、ジルコンの腕がぴくりと反応する。あ、やべ。思わず見上げたジルコンは、口元に笑みを浮かべているのがかえって怖い。
「いやッ違う、恋愛的なアレコレとはまた別でね!? やっぱり顔のいいキラキラ人間たちにチヤホヤされたいのってのは、人類、いや全生物において共通の抗えない願望みたいなもんじゃん!?」
「ほう。お前、今自分の身が誰の腕に預けられているのか、自覚が足りないようだな」
「アーッ!! やめて!? お前仮にも王子サマならお姫様抱っこを物理的脅迫手段として使うなよ!!」
「……ふふっ♡」
醜い言い争いを始める俺たちに、花のような、しかし小悪魔めいた微笑みを向けて、コラルはふわりと身を翻した。首元の、真珠のネックレスがしゃらりと音を立てる。
「おいで、コラル。今日だけは特別、1000ジュエネルまでなら追加で食べさせてあげる」
「ほ、本当ですぅか!? アッ、そしたら最近新しく、お得な月額サービスコースが新設されてっ」
「今日だけっつっただろ!? あんまり調子に乗るなよこのぶりっ子ピンク!!」
「その言葉、ミマサマにも盛大にブーメラン……アッ何でもない、何でもないですぅ!」
ミマ、そして彼に耳を引かれたコラルは、一足先に闘技場の出口へと向かっていった。さっきまでの空気はどこ吹く風の、案外軽い足取りで。
そして。
周囲の目がミマの背を見送った、その一瞬を見計らうかのように。
「チュー太郎」
おもむろに名前を呼ばれて、ぴくりと顔を上げる。目が合った。銀色の、磨き抜かれた刃のような瞳は、今はまっすぐに、けれど限りなく優しい色で俺を見下ろしている。
俺の上体を、背に添えられた腕がぐいと起こした。
「わ、とっ」
バランスを崩しかけた俺をしっかりと支えてから、低くて涼やかな声が、俺の耳に吹き込むかのように囁く。
「今夜、部屋に行く」
「……ヘァっ!?」
「なんだその声は。ククッ、相変わらず面白い音の出る奴だ」
いつもの褒めてんだかけなしてんだかわかんない言葉にも、俺はろくな返しができなかった。ただ火を吹きそうな顔面を、みんなに見えないように隠すのが精一杯だったから。
雰囲気で何かを察したのか、周囲の騎士サマたちも自然に引いていく。迷いなく、俺たちに向かって歩いてきた彼は、ジルコンに抱き上げられた俺を見上げる位置で足を止めた。思わず表情を引き締める。……いや、まあ、真顔になったところでこの状態で何をってところではあるんだけど。
「……ミマ」
「……」
俺とジルコンが見守る中、ミマは口を開いて何かを言いかけては、結局ためらうように黙りこむ。それを何回か繰り返した後。ふるふると首を振り、俺に向けてビシッと指を突き付けた。
「お前……お前がっ、ジルコン様とのエンディングを選んだならっ」
「お、おう」
「僕だって諦めないからな。他の騎士サマたちからの寵愛は、やっぱり僕だけのものになるんだからなっ!」
「えぇ!? や、それはちょっと!!」
思わず上げてしまった声に、ジルコンの腕がぴくりと反応する。あ、やべ。思わず見上げたジルコンは、口元に笑みを浮かべているのがかえって怖い。
「いやッ違う、恋愛的なアレコレとはまた別でね!? やっぱり顔のいいキラキラ人間たちにチヤホヤされたいのってのは、人類、いや全生物において共通の抗えない願望みたいなもんじゃん!?」
「ほう。お前、今自分の身が誰の腕に預けられているのか、自覚が足りないようだな」
「アーッ!! やめて!? お前仮にも王子サマならお姫様抱っこを物理的脅迫手段として使うなよ!!」
「……ふふっ♡」
醜い言い争いを始める俺たちに、花のような、しかし小悪魔めいた微笑みを向けて、コラルはふわりと身を翻した。首元の、真珠のネックレスがしゃらりと音を立てる。
「おいで、コラル。今日だけは特別、1000ジュエネルまでなら追加で食べさせてあげる」
「ほ、本当ですぅか!? アッ、そしたら最近新しく、お得な月額サービスコースが新設されてっ」
「今日だけっつっただろ!? あんまり調子に乗るなよこのぶりっ子ピンク!!」
「その言葉、ミマサマにも盛大にブーメラン……アッ何でもない、何でもないですぅ!」
ミマ、そして彼に耳を引かれたコラルは、一足先に闘技場の出口へと向かっていった。さっきまでの空気はどこ吹く風の、案外軽い足取りで。
そして。
周囲の目がミマの背を見送った、その一瞬を見計らうかのように。
「チュー太郎」
おもむろに名前を呼ばれて、ぴくりと顔を上げる。目が合った。銀色の、磨き抜かれた刃のような瞳は、今はまっすぐに、けれど限りなく優しい色で俺を見下ろしている。
俺の上体を、背に添えられた腕がぐいと起こした。
「わ、とっ」
バランスを崩しかけた俺をしっかりと支えてから、低くて涼やかな声が、俺の耳に吹き込むかのように囁く。
「今夜、部屋に行く」
「……ヘァっ!?」
「なんだその声は。ククッ、相変わらず面白い音の出る奴だ」
いつもの褒めてんだかけなしてんだかわかんない言葉にも、俺はろくな返しができなかった。ただ火を吹きそうな顔面を、みんなに見えないように隠すのが精一杯だったから。
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