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181・初心者応援お得なパック
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地面に膝をつき、砂埃で汚れた麻袋を拾い上げる。光の源を指先で探ると、コインの奥に冷たい石の感触があった。
ずいぶん前に、ハフノンさんからもらったまま忘れていたものだ。より正確に言えば、ハフノンさんを介してジルコンから。ジルコンが育ったあの海辺で、彼の昔話を聞いたあとに。
色彩豊かな貴石たちとも、ダイヤモンドのプリズムともまた違う、鮮やかな虹色に染まった八面体の結晶。ちっぽけで、子供のおもちゃみたいなこの石は、だがこの世界にあるどんな宝石をも超える特別な価値を秘めている。
──<ruby><rb>課金石</rb><rt>ジュエネル</rt></ruby>。
「……ミマ」
手のひらに振り出して選り分ける。1、2、3、4……、全部で10個。1個がたしか10ジュエネルだから、つまり合計、100ジュエネル。
「宝石騎士のガチャってさ。一回いくらだったっけ」
「え、何? こんなときに」
「頼む。教えて」
怪訝そうに眉を寄せるミマに、視線を合わせて頭を下げる。ミマはちょっと戸惑った様子で、しかしさすがと言うべきか、よどみなくすらすらと答えてくれる。
「一回300ジュエネルだよ。十連はSR一枚確定で3000ジュエネル。毎日一回のみ100ジュエネルで引ける、いわゆるおはガチャもあるけど、これには有償石しか使えないからね」
「う……ゆ、有償か……」
手の中のジュエネルに目を落とす。この石はイベント報酬でもらった無償石。課金でなんとかなるもんなら、俺に出せる限りのことはいくらでもしてやるけど、この世界で外部から課金する術を俺は知らない。ていうか、ミマですら前世の資産でやりくりしてるところを見る限り、多分そんな術は、ない。
しおれかけた俺の耳に、ミマの言葉が続けて響く。
「ああ、でも。確か各一回限定で、初心者向け無償石可のガチャパックがいくつかあったかな」
「……!!」
思わずがばっと顔を上げ、片手でミマの肩を掴む。
「それ、いくら!?」
「わっ、なんだよもう、触るな! ええっと、確か……十連SR確定チケットに、パラアップドリンクがついたやつが3000ジュエネル。五連にドリンクがついて1500ジュエネルと……ああ、そうそう、単発チケット100ジュエネル、ってのもあったはずだよ」
「……ッ!!」
息を呑んだ。単発。つまり、チャンスは一回。さすがここの運営だけあって、初心者限定の割にはずいぶんケチ臭いラインナップだ。けれどそれでも、一回はある。
「なあ、もう一個、もう一個だけ聞かして!?」
「ったくもう、好きにしろよ。何?」
「ガチャって普通、どんなソシャゲでも、いつでもどこでも引けるもんだよな!?」
「は? 当たり前だろ。大事な課金要素に無意味な制限かけるわけがない。イベント中にガチャ引けないソシャゲとか、少なくとも僕は聞いたことない……って、お前、まさか!?」
ミマが驚いたように俺を凝視する。その視線に構う余裕もないまま、俺は手の中できらめくジュエネルを、ひたすらにじっと見つめ続けていた。
ずいぶん前に、ハフノンさんからもらったまま忘れていたものだ。より正確に言えば、ハフノンさんを介してジルコンから。ジルコンが育ったあの海辺で、彼の昔話を聞いたあとに。
色彩豊かな貴石たちとも、ダイヤモンドのプリズムともまた違う、鮮やかな虹色に染まった八面体の結晶。ちっぽけで、子供のおもちゃみたいなこの石は、だがこの世界にあるどんな宝石をも超える特別な価値を秘めている。
──<ruby><rb>課金石</rb><rt>ジュエネル</rt></ruby>。
「……ミマ」
手のひらに振り出して選り分ける。1、2、3、4……、全部で10個。1個がたしか10ジュエネルだから、つまり合計、100ジュエネル。
「宝石騎士のガチャってさ。一回いくらだったっけ」
「え、何? こんなときに」
「頼む。教えて」
怪訝そうに眉を寄せるミマに、視線を合わせて頭を下げる。ミマはちょっと戸惑った様子で、しかしさすがと言うべきか、よどみなくすらすらと答えてくれる。
「一回300ジュエネルだよ。十連はSR一枚確定で3000ジュエネル。毎日一回のみ100ジュエネルで引ける、いわゆるおはガチャもあるけど、これには有償石しか使えないからね」
「う……ゆ、有償か……」
手の中のジュエネルに目を落とす。この石はイベント報酬でもらった無償石。課金でなんとかなるもんなら、俺に出せる限りのことはいくらでもしてやるけど、この世界で外部から課金する術を俺は知らない。ていうか、ミマですら前世の資産でやりくりしてるところを見る限り、多分そんな術は、ない。
しおれかけた俺の耳に、ミマの言葉が続けて響く。
「ああ、でも。確か各一回限定で、初心者向け無償石可のガチャパックがいくつかあったかな」
「……!!」
思わずがばっと顔を上げ、片手でミマの肩を掴む。
「それ、いくら!?」
「わっ、なんだよもう、触るな! ええっと、確か……十連SR確定チケットに、パラアップドリンクがついたやつが3000ジュエネル。五連にドリンクがついて1500ジュエネルと……ああ、そうそう、単発チケット100ジュエネル、ってのもあったはずだよ」
「……ッ!!」
息を呑んだ。単発。つまり、チャンスは一回。さすがここの運営だけあって、初心者限定の割にはずいぶんケチ臭いラインナップだ。けれどそれでも、一回はある。
「なあ、もう一個、もう一個だけ聞かして!?」
「ったくもう、好きにしろよ。何?」
「ガチャって普通、どんなソシャゲでも、いつでもどこでも引けるもんだよな!?」
「は? 当たり前だろ。大事な課金要素に無意味な制限かけるわけがない。イベント中にガチャ引けないソシャゲとか、少なくとも僕は聞いたことない……って、お前、まさか!?」
ミマが驚いたように俺を凝視する。その視線に構う余裕もないまま、俺は手の中できらめくジュエネルを、ひたすらにじっと見つめ続けていた。
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